2022年半ばからFRBは持っていた国債や住宅ローン担保証券などを減らすタイプの金融引き締め(量的引き締め:QT)をはじめました。
既にほとんど誰も話題にしていないので「なんだ、QTなんて大したことないじゃないか。」と思っている投資家も多いですが、2022年の株価をかなり押し下げた大きな要因の1つだと私は思っています。
もしもQTがなければ、S&P500は今よりも350ポイント高い値がついていたはずです。年初来の株価の下落もマイナス20%ではなく、マイナス12%に抑えられたことになります。
この記事のポイント
- 2022年の株価はFRBの資産額に左右されていた。FRBの資産が10億ドル減るとS&P500が1ポイント減少するペースで下落している。
- 量的引き締めによりFRB資産は3500億ドル減少した。つまりS&P500は350ポイント(2022年始の株価の8%分)引き下げられた。
QTの株価への影響
QTはどれだけ株価に影響を与えているのかが見えにくいので、多くの投資家があまり気にしなくなっている政策に見えます。
そこで、この記事ではQTが株価に与える悪影響を数値化していこうと思います。
やり方は簡単です。下記のブログで2022年のS&P500はFRB資産に連動して下落していることを説明したので、それを使うだけです。
次のグラフは2022年のFRB資産額(から政府預金口座とリバースレポを除いたもの)とS&P500を比べたものですが、すごく大雑把にいうとFRB資産が10億ドル減るとS&P500が1ポイント下がることがわかります。
(もう少し正確な数字が知りたいなら回帰分析を使うことで、FRB資産10億ドル減るとS&P500は0.86ポイント下がることがわかります。)
一方で、FRBは6月からQTを開始して12月までに約3500億ドル分の債券を処分しました。
先ほどのFRB資産とS&P500の関係を使うと、3500億ドルのQTはS&P500を350ポイント下げる効果があります。
現在の株価は年始からマイナス20%まで下がっていますが、もしもQTがなかったら350ポイント分(8%分)今よりも高い株価をつけて年初来マイナス12%前後で推移していたはずです。
2023年も続くQT
ほとんど誰も話題にしなくなったQTですが、9月には国債が毎月最大600億・住宅ローン担保証券が同300億に拡大して今も続いています。
毎月最大で合計950億ドルの債券が処分されるということは、毎月95ポイント(今の株価の2.5%分)ずつS&P500は下げる力が働いているようです。
年があけて2023年になってもQTは続きますが、毎月2%超えで株価を引き下げる「足かせ」をつけながらS&P500の大きな上昇を願うのは少し難しそうです。