この記事を書いている日本時間12月13日の夜に11月のアメリカの消費者物価の発表があります。
アメリカのインフレはまだまだ高いままなのか、それとも鈍化が進むのか投資家の注目が集まっています。
今晩の数字に関してはどんか結果が出るのかわかりませんが、来年2023年にはアメリカの消費者物価の数字が年後半にかけてかなり大きく鈍化すると思っているので、その根拠を書きます。
この記事のポイント
- 2022年の消費者物価を押し上げている「住居費」は来年後半から下がる。
- インフレを長引かせるリスクとなりうる賃金上昇は、2023年の景気後退で伸びが鈍化する。
消費者物価の鍵をにぎる住居費
2023年末までにアメリカの消費者物価は大きく低下すると思っている理由は、2022年にインフレが高止まりした理由と同じで「住居費」にあります。
ちょうど1年前にこのブログでは2022年のアメリカは「住居費」の伸びが止まらずに、消費者物価が高止まりするという話をしました。
>>2022年もアメリカの物価の高止まりが続く理由(2021年12月14日)
この予想があたった根拠がそのまま来年のアメリカの消費者物価の行方を握っているので、まずは1年前に紹介した根拠をおさらいします。
2022年のアメリカ消費者物価予想の根拠
1年前に2022年の消費者物価が高止まりすると予想した根拠は、アメリカの消費者物価の計算で大きな比重を占めている「住居費」が2022年に大きく伸びるからだというものでした。
この「住居費」は、住宅価格指数(たとえばケースシラー住宅価格指数)に1年ほど遅れて動くので、2021年末までに上昇が続いていた住宅価格を見れば2022年は「住居費」伸び続けることが予想でき、2022年の消費者物価は高止まりするという予想ができました。
一方で、2023年のアメリカの消費者物価はどうなるでしょうか。上のグラフを見てみると、グラフの右端でケースシラー住宅価格指数(青線)は既にピークをつけて急落していることがわかります。
なお、ケースシラー住宅価格(上のグラフ青線)がピークをつけたのは2022年6月でした。
この1年後は2023年6月なので、早ければ2023年後半からは消費者物価の計算で最大の30%を占める「住居費」が急落しはじめると思います。これによりアメリカの消費者物価は2023年に低下するはずです。
2023年にアメリカの賃金上昇率も鈍化へ
2022年にアメリカのインフレを押し上げている要因の一つに平均時給の上昇がありますが、これも2023年には収まるはずです。
2022年12月時点ではまだアメリカは人手不足ですが、2023年には景気が冷えて失業率が上がり、時給の伸びも大きく鈍化すると考えています。
利上げで企業の景気を冷やしている張本人のFRBが下の図のように「2023年は失業率が0.6%上がる」と言ってるので、雇用が冷え込むことはほぼ間違いありません。
1年で0.5%以上も失業率が上昇すれば、景気後退を引き起こしてきたという経験則(サームルール)もあります。
景気後退が起これば平均時給の伸びも収まるので、2023年の消費者物価は低下するだろうと思います。
2023年にインフレは投資のテーマの中心ではなくなるはずです。インフレの代わりに投資家の関心が集まるのは、恐らく景気後退と金融緩和です。アメリカのインフレは長期化するという意見もありますが、インフレの長期化が問題になるのは、2023年の景気後退で一旦インフレが和らいだ後の話だと思います。
メインシナリオではないかも知れませんが、景気を冷やしすぎたことによる2023年の一時的に大きな景気低迷や、一時的なデフレも頭の片隅においてもいいかも知れません。