アメリカはそろそろ利上げのペースを鈍化しはじめる時期に来ていると言われます。
ただ、それには不安な点もあります。アメリカの求人件数を見ていると、まだまだあまりにも求人が多すぎるのです。
この強い雇用がインフレを高止まりさせ、政策金利の引き上げを長引かせてしまうと、株価に悪影響が出る恐れがまだあります。
この記事のポイント
- 9月のアメリカの求人件数は予想に反して前月よりも増加した。
- FRBはインフレ退治のために金融引き締めを通じて求人件数が減ることを期待してるが、まだ効果はハッキリとは出ていない。
- FRBや市場の想定以上に利上げが必要になれば、まだ株や国債が売られる展開もある。
高止まりが続く求人件数
9月のアメリカの求人件数が発表されたので、数字を確認していきます。
- 予想:985万件
- 結果:1072万件(前回1028万件から増加)
結果は予想していたよりも求人件数は多かったです。
通常なら、求人件数が増えていることは景気が強いことを意味して良い知らせに思えるのですが、今は違います。
今は強すぎる雇用がインフレを高止まりさせることを警戒する中央銀行FRBが、雇用を冷やすために金融引き締めをしているので、「9月はFRBの努力にも関わらず求人件数は増えてしまった」というべきかもしれません。
上の図で過去数年間のアメリカの求人件数をグラフにしてみましたが、コロナ前よりもかなり求人件数が多い状態が続いていることがわかります。
さすがに2022年の3月をピークに求人件数が低下傾向にあるのですが、それでも非常にゆっくりとしたペースでしか求人件数は減っていません。
現時点では求人率が失業率を大きく上回っているので、企業は人手不足で人件費が上がっても人を雇いたい状況が続いているように見えます。
この状態が続いているなら、インフレ率は2%には戻らないと思われます。
利上げの天井はまだ見えない
アメリカの金融引き締めの効果がないというつもりはありません。金融引き締めのおかげで原油先物価格を下落し、住宅ローン金利を上昇させて過熱していた住宅価格を引き下げることにも成功しています。
しかし、それでも最後の砦となっている強すぎる雇用を抑えることはまだ出来ていないようです。これは少し困ったことです。
市場の投資家もFRBもそろそろ利上げを止める時期が近づいていると考えているようですが、雇用の強さが続いているなら利上げのペースは落ちたとしても、政策金利の最終的な到達地点はまだズルズルと上がるかも知れません。
この記事を書いている時点で、投資家は利上げが2023年3月(5%〜5.25%)で止まると予想しています。
しかし、去年からFRBも市場もインフレと政策金利の予想を外し続けてきたように、今回も2023年3月で利上げが止まるという予想が外れても不思議ではありません。
政策金利がもっと上を目指すなら株も国債もまだ売られることなるので、まだ積極的に投資しないで保守的に構えていて良いと思っています。