イギリスがずいぶんとバタバタとしています。
9月に大きく売られたイギリスの長期国債を見て、中央銀行のイングランド銀行が一時的に買い取る動きに出ているのですが、それが14日に終了する見込みです。
このまま予定通り14日で終了するのかそれとも延長するのかの情報が錯綜していますが、どちらにしてもインフレ退治のために金融引き締めを続けるのも簡単ではないようです。
この記事のポイント
- イングランド銀行による一時的な国債買い入れは14日に期限を迎えるが、イギリス国債の価格下落は止まっていない。
- 予定通り14日に国債買い入れが終了するのか、延期されるのかで情報が錯綜している。
- 機関投資家の中には国債の価格下落の損失補填で保有してる資産を売るという、売りが売りを呼ぶ動きがあると言われている点は心配。
14日で期限を迎えるイングランド銀行の国債買い入れ
冒頭でも書いたように、イングランド銀行の一時的なイギリス国債買い入れが予定通り14日で終わるのかどうかで揺れているようです。
日本時間の12日時点に書かれた以下の記事を読んでいる限りでは、予定通り14日で終了するのかと思われました。
>>英中銀総裁「残された時間は3日」と警告-国債介入を週末に停止(ブルームバーグ)
しかし、その後しばらくして次の記事ではイングランド銀行による国債購入の延長も視野に入れているような発言も飛び出しています。
>>英中銀「債券買い入れ延長もあり得る」と銀行関係者に示唆-報道(ブルームバーグ)
国債の利回り上昇(国債の売却)が止まらないイギリス
14日で終わることの判断を難しくしているのは、イギリス国債の売りです。
もともとイングランド銀行は、市場の機能不全(dysfunction)と表現した最近のイギリスの国債価格の急落に対処するために、一時的に国債を買い支えていました。
国債買い入れを発表してからしばらくは国債が買われて利回りは低下していたのですが、今では再び売りが再燃して国債買い入れ発表前の利回りに戻りつつあります。
この状況では国債の価格下落の混乱が収まったようには見えていません。そこで、このままイングランド銀行が買い入れが予定通り終了するのか、延長や別の緩和措置があるのか様々な情報が飛び交っています。
国債大量売却の背景
当初はイギリスの新政府が大規模な経済対策を発表したことで、イギリスの国債と通貨が売られたのかと思っていましたが、どうも売りが売りを読んでいる動きもあるようです。
私が調べたわけではないのですが、一部の報道では今年の低調な相場でイギリスの年金などの機関投資家が損失を出しているようで、損失を補填するために一部の資産を売却して必要な現金を確保している場合もあるようです。(マージンコールで現金が必要になり、売れる資産を売却してさらに売りが加速している)
この状況が本当なら、少し困ったことになります。
年金のような大規模な機関投資家は米国債も保有しているはずなので、イギリス国債下落が止まらなければ、(程度は違えど)米国債にも売り圧力が飛び火する可能性もあります。
アメリカへの影響
今後もしもアメリカで同じような国債の急落が起こった場合、中央銀行のFRBは「金融引き締めの継続」か「国債購入」のどちらの判断をするのでしょうか。
FRBは今はインフレ退治を掲げて金融緩和継続の道を歩いていますが、イギリスと同じ状況になればインフレ退治を断念して金融緩和に踏み切る可能性は小さくないと思います。
その場合には、以下の記事でも書いたように株などの資産価格の下落は比較的早く止まるかわりに、インフレは長期化して今後10年ほどより大きなインフレに苦しむことになります。
もしも長期的にインフレがアメリカに居座ることになれば、恐らく1970年代と近い状態になります。1970年代は実質のリターンで株価はマイナスとなっていて、長期投資家にとってかなり厄介な時代になっていました。
現時点ではFRBは景気減速の痛みが伴ってもインフレを退治するという姿勢を出していますが、イギリスと同じような国債の急落が起っても金融引き締めを続けられるかは疑問です。
もしも、アメリカで同じような動きが見られた場合には、米国株が下がることに賭ける取引は早期に手仕舞って現金を多めに用意し、ゴールド、シルバー、商品(コモディティ)の底打ちを待つ次の投資の段階に入ると思います。