9月30日、第3四半期の最後の日になりました。四半期も終わりということで、この記事では今期のアメリカのGDP成長率について書いていきます。
エコノミストたちはアメリカの6-9月期でわずかなプラス成長を見込んでいるのですが、ひょっとすると3期連続の実質マイナス成長もありえるので、薄氷を踏む思いで結果を見ることになりそうです。
ただ、株式投資家の目線で見ると、6-9月期で企業の一株利益のマイナス成長はまだ始まっていないようで、業績悪化による本格的な株価下落まではまだわずかな時間がある気がしています。
この記事のポイント
- アトランタ連銀によるGDP予想モデルでは、アメリカのGDP実質成長率はわずか+0.3%にとどまる。
- もしも景気後退になれば、企業の利益が減少する。今までは金利上昇による株価低下だったが、新たな下落要因が加わることになる。
- ただ、CFOたちのアンケートを見てるかぎりは、6-9月期で既に企業利益がマイナス成長になっている可能性はまだ低い。
ほぼゼロ成長が予測される6-9月期のアメリカ
アトランタ連銀はすでに発表された経済指標のデータを使って、GDP成長率を予想してGDPNowというサイトで公開しています。
この記事を書いている時点でGDPNowを見てみると、アメリカの6-9月期のGDP実質成長率は+0.3%になっています。
当初の予想では+2.1%と2022年前半のGDPのマイナス成長分をかなり取り返せる予定だっだのですが、住宅投資の悪化と個人消費の低い伸びが足かせになって、+0.3%成長にまで下方修正されています。
0.3%程度なら簡単に前後するので、ひょっとするとアメリカは3四半期連続のマイナス成長もありえる展開になっています。
企業の一株利益と株価について
投資家の目線になって考えると、景気が悪化すると困るのは企業の利益が下がることです。株価は一株利益に比例するので、一株利益が下がると株価の下落につながります。
ただし、企業の利益がマイナス成長を始めるには、まだ少しだけ時間的に猶予はあるかもしれません。
上のグラフの濃い赤線は2022年10-12月期までのS&P500の一株利益(※22年6-9月期と10-12月期のみアナリストの予想値)を表示しているのですが、10-12月期まで一株利益はプラス成長を続けると見られています。
また、最近CNBCから企業のCFOへのアンケート結果が発表されたのですが、それによると、大多数のCFOは2022年の景気後退を予想していませんでした。
以下に景気後退に関するCFOの回答をまとめておきます。
CFOたちへのアンケート調査
- 19%のCEOは既に景気後退入していると回答
- 別の19%のCEOは10-12月に景気後退入する回答
- 約半数(48%)のCFOは2023年上半期に景気後退に入ると回答
会社の業績に目を光らせているCFOを信じるなら、2022年の6月-9月期のS&P500の一株利益はまだプラス成長、10-12月はかなりの低成長にとどまり、景気後退による業績悪化は2023年前半となりそうです。
このアンケートは6-9月期の終盤に実施しているはずなので、今の時期にこの結果が出るなら(既に景気後退に入っているという回答が19%に留まっているなら)、6-9月期の決算のまだ一株利益のプラス成長は維持できているはずです。
また、既にアメリカが景気後退に入っているか2022年内に景気後退に入ると言っていた38%(19+19=38%)のCFOのいる企業が大きく業績見通しを引き下げない限り、恐らく2022年10-12月期もS&P500の一株利益はぎりぎりでプラス成長が続くという予想は変わらなそうです。
何が言いたいかというと、10月中旬から始まる決算シーズンは6-9月期の業績も業績見通しも、今のところは低調ながら酷い内容にはなさずに済みそうだと思っています。(銀行は貸倒引当金を計上して、利益を減らすかもしれませんが)
まとめると、9月末時点で見えてきたアメリカは、実質GDP成長率こそほぼゼロ成長で危ういですが、企業の利益は恐らくまだプラス成長が続いていると思われます。
しばらく前まで10月の決算シーズンで、10-12月期の業績見通しが急速に悪化して株価が下落する心配もしていたのですが、それもまだメインシナリオではなさそうです。
業績悪化による本格的な株価下落までは、もう少しだけ時間がありそうな気がしています。