昨日は8月のアメリカの景気についてFRBがまとめた報告書(ベージュブック)を取り上げました。
上の記事に書いたようにアメリカの物価の伸びは一時期よりも伸びが弱まっているものの、8月のアメリカの雇用は人手不足が続いて賃金の上昇でインフレが長引く恐れがまだ残っていました。
それなら、9月にはその雇用が強い状態が解消に向かっているのか気になるところですが、どうも最近は雇用が弱まるどころかジワジワと強まっているようにも見えます。
この記事のポイント
- 昨晩発表された新規失業保険の申請数は、予想を下回る少なさだった。
- 8月から失業者は低下している傾向が見られる。
- 雇用が強い状態は金融引き締めの長引かせる。株価にとっては、いくらか失業者が増えて金融引き締めの終わりが見えたほうが良い。
強いアメリカの雇用
8月28日から9月3日までの1週間で、アメリカで新規に失業保険を申請した件数が発表されました。
数字を確認してみると予想よりも失業者は多くなく、厳しい利上げや景気の鈍化にも関わらず、アメリカの雇用はまだ強いことがわかります。
- 結果:22.2万件(予想:23.4万件)
- 前週:23.2万件から22.8万件へ修正
普通なら失業者が少ないならアメリカの景気が良いことを意味するので株価にとってプラスですが、今は事情が少し違います。
2010年代のようなインフレ率2%の世界に戻るためには、賃金上昇率をコロナ前のような前年比2%〜3%に戻さないといけないですが、今の賃金は5%も上昇しています。
そこで、FRBは景気を冷やす金融政策を打ち出して強すぎる雇用を抑えようとしているのですが、(効果が出るまで時間がかかるのか)雇用に関してはまだうまく機能していないように見えます。
先週のように失業者が減っているデータが見られると、景気が景気を冷やす金融政策が長引いて、株価にはマイナスの影響が出てしまいます。
8月から失業者が減っているように見えるアメリカ
少し興味深いのは、どうも8月から失業者が減少傾向にあることです。
上のグラフは新規失業保険の申請数の4週間平均をグラフにしたものですが、8月6日から新規失業者の数が減っています。
アメリカの景気も鈍化してきたので労働者が自己都合で退職しなくなったためなのか、失業者が減っている理由はわかりませんが、とにかく雇用はまだ強そうです。
昨日の記事でも書きましたが、FRBは2022年からインフレを抑える金融政策を進めて「エネルギーや素材の価格の低下」「住宅価格の低下」には成功しつつあるように見えます。
ただ、雇用に強さが最後の砦になっているようで、賃金上昇を抑えるにはまだしばらく時間がかかるのもしれません。
株式投資家は高い政策金利の時期が早く終わって欲しいと言っているように見えますが、まだ先は長そうです。