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アメリカは1年以内に失業率4%を超えれば景気後退

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アメリカはすでに実質GDPが2四半期連続でマイナスで、テクニカル・リセッションと呼ばれる状態に入っています。

>>米経済、2期連続の実質マイナス成長でリセッション入り(22年7月29日記事)

それでもまだ雇用が強いなどの理由で「アメリカはテクニカル・リセッションになっても、今は景気後退ではない」という声をよく聞きます。

では、このような意見を持つ人達もアメリカは景気後退に入ったと認めるのは、どういう状態になったときでしょうか。

サーム・ルールという基準を使うと、アメリカがこれから1年以内に安定して失業率4%を超えると景気後退に入ったと考えて良さそうです。

先週発表された7月の失業率は前月の3.5%から3.7%に上がったので、このペースが続くと年内にも景気後退になる可能性があります。

この記事のポイント

  • アメリカの失業率は7月の3.5%で底を打った可能性が高い。
  • サームルールによる景気後退の判断基準は、過去12ヶ月の最低失業率から0.5%上昇すること。
  • 2023年6月までにアメリカの失業率が4.0%を超えると、サームルールの基準を満たして景気後退になる。

失業率は今後上昇へ


まず、現時点のアメリカの失業率の傾向について触れておきたいと思います。

2022年のアメリカの失業率は歴史的にかなりの低水準ですが、この記事を書いている時点でわかっている最新の8月の失業率は前月の3.5%から3.7%へと上昇しました。

私は次の2つの理由から、アメリカの失業率は既に底を打ったのではないかと思っています。

  • (1)失業者はすでに増加に転じている(新規失業保険申請件数は底を打った)
  • (2)人々が労働市場に戻ってきている(労働参加率も上昇に転じている)

一つ目の理由は特にイメージしやすいかも知れません。

過去1年の新規失業保険の申請数の変化を見ていると、失業者はすでに4月に減少から上昇に転じています。この流れが続くなら失業率はこれから上昇するはずです。

というわけで、今回の失業率は3.5%が最低値になるのだろうと思っています。

サーム・ルールのおさらい


景気後退が近づくと失業率が上昇しますが、どの程度上昇すると景気後退になっているかについて元FRBエコノミストのクローディア・サームさんは次のような結論を出しています。

サーム・ルールによる景気後退期の判定

  • 過去3ヶ月間の失業率の平均値が、過去12ヶ月間の失業率の最低値よりも0.5%上昇していたら、景気後退期と判断する。

このルールは過去の景気後退ではとても良く当てはまっています。3ヶ月間の失業率平均が、過去12ヶ月間の失業率の最低値よりも0.5%ほど上昇したところで、たいていの場合で景気後退が訪れています。

>>【サーム・ルール】景気後退に入ったかどうかの見分け方

2023年6月までに安定した失業率4%超えでアメリカは景気後退


2022年6月の失業率3.5%が今回の失業率の最低値になりそうなこと、そして失業率の最低値から0.5%上昇すると景気後退になる(サーム氏が発見したルール)ことを見ていきました。

つまり、今回の景気はこれから1年間で失業率が安定して4%超えになったら、景気後退になると言えそうです。

「じゃあ失業率が4%を超えたら、景気悪化を心配したFRBが金融緩和に転じて、株価は底を打つのか?」という株式投資家の楽観的な考えが聞こえてきそうですが、今回はそんなに話が簡単ではなさそうです。

パウエル議長は、家計や企業が傷んでもインフレ率2%に戻すための金融引き締めを続けると言っているからです。

そして、サマーズ元財務長官の推測ではインフレ率2%に戻るためには失業率は6%にまで上昇する必要があるらしいので、この推測が正しいなら失業率が4%に上がって景気後退に入ってもインフレが収まらず、金融緩和をはじめられない恐れがあります。

>>サマーズ氏、労働参加率上昇受けた楽観論に否定的見解-雇用統計受け(ブルームバーグ)

リーマンショック(2008年)や新型コロナウイルスの流行時(2020年)では、FRBの大規模な金融緩和で株価が力強く回復しましたが、今回はインフレ退治を理由に景気後退になっても金融緩和がすぐ期待できません。

私は10年後などの長期的な米国株への見通しではかなり強気ですが、この1年の米国株はまだ厳しい下落がありそうだと思っています。


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