新しい月になったので、いつもどおり前月のアメリカの景気を確認していたいと思います。
既に発表されているいくつかの8月の経済指標が景気悪化を示している中、ISMから発表された8月のアメリカの製造業の景気指数は、前月から横ばいで弱いながらも景気拡大を示しています。
また、インフレ圧力が低下して、雇用の増加が見られました。
この記事のポイント
- 8月のISM製造業指数は前月と横ばいで、弱い景気拡大を示した。
- 仕入価格は急低下し、入荷遅延も改善た。インフレ圧力の低下が見られる。
- 雇用が前月よりも強まっているのは懸念点。高い賃金上昇が定着すると、近い将来再びインフレの種になる。
前月比横ばいで持ちこたえたアメリカ
8月のISM製造業指数(アメリカ製造業の購買担当者が感じている景気の強さ)を数字で確認していきます。
多くのエコノミストは前月よりも景気が悪くなることを想定していたのですが、予想よりも良く前月と横ばいの結果が発表されています。
- 予想;52.0
- 結果:52.8
全体の傾向としては、去年から景気強さは鈍化して、かなり弱い景気拡大になりつつあります。
しかし、ニューヨーク連銀の製造業指数など先行して発表されたいくつかの数字では8月の景気指数は大きく悪化していたのに、ISM製造業は崩れずに持ちこたえているように見えます。
ISM製造業やニューヨーク連銀製造業指数が悪化すると、一般的には企業利益が悪化する傾向が見られます。
企業の利益の悪化は株価の悪化の大きな原因になるので、注目度の高いISMだけでも持ちこたえたのは、株式投資家にとって安心できる材料になったかも知れません。
インフレ圧力の低下と雇用の強まり
ISM製造業の内訳を見ていくと、アメリカの今の姿がもう少しだけ見えてきます。
傾向としては、「インフレ圧力は低下」「雇用は強い」という2つの動きが見られます。
まず、2021年から上昇していた製造業の仕入れ価格はこの数ヶ月で急激に低下をしています。
また半導体などの入荷遅延も新型コロナウイルス流行前の水準にまで低下し、供給不足でモノが十分に作れないという状況は大きく改善されています。
雇用は強まっている
そして、少し興味深いのは8月は雇用が進んだことです。雇用指数は前月よりもやや大きめな改善を見せています。
今のFRBはインフレが長続きしないように強すぎる賃金上昇の伸びを抑えなければならないはずなのですが、前月よりも雇用は増加したようです。
雇用が強い状態は景気後退にはまだ陥っていないという意味で良いはニュースですが、賃金の伸びを抑えるために金融引き締めがまだまだ長く続きそうだという点では株価に良くないニュースになりそうです。
まとめると、8月のISMは弱いながら景気拡大が続き、インフレ圧力が弱まっていることが確認できたのは良かったと思います。
また、インフレ圧力が急低下したことと雇用の増加が見られるなど、アメリカの経済の質が少し変化が起こっているようにも感じました。
今のインフレの伸びは抑えられる兆候は出てきているので、近い将来にインフレがリバウンドしないよう賃金の伸び(強すぎる雇用)が定着しないようにすることが、今のアメリカの課題に見えます。
この課題を克服するためにFRBが打っている対策は利上げなどの金融引き締めで、雇用が強い間は高い政策金利が長く続いて株価に悪影響が出やすいのだろうと思います。