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UberとLyftどちらを買うのか問題。論点は自動運転にどう向き合うか。

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なぜ、配車アプリ2社に注目するか

2019年はUberとLyftというアメリカのタクシー配車アプリ業界を代表する2社が上場しました。

私はこの2社に注目しています。より正確に言うと、この2社に限らず移動サービス業界にかなり注目しています。この業界には「ネットワーク効果」と呼ばれる現象が起こること、そしてこれから大きな「変化」が待っているからです。

注目理由1: UberとLyftの複占を可能にするネットワーク効果

「ネットワーク効果」とは、多くのユーザやパートナーを獲得すればするほど、その企業の価値が高まる現象のことです。

例えば、みんながLineを使えば使うほど、他のメッセージングアプリではなくLineを使うようになるので、メッセージングアプリ業界もネットワーク効果があると言えます。そして重要なのは、このネットワーク効果がある業界は他の企業が参入しにくいので、安定して稼げる企業になる可能性が高いということです。

なお、他の企業が参入しにくいことを「経済的な濠を持つ」と言います。ネットワーク効果以外にも様々なものがあります。

ネットワーク効果以外の経済的な濠についてはこちらの記事を参照:
【初心者向け】バフェットも注目する経済的な濠とは何か。

多くの人がUberやLyftを使えば使うほど、この2社以外のタクシー配車アプリを使う可能性が少なくなるので、タクシー配車アプリもネットワーク効果ある言えます。他の企業が参入しにくい特長があるので、今後も安定してこの2社がアメリカのタクシー配車アプリを牽引していくものと思われます。

注目理由2: コスト構造の大きな変化

タクシー配車アプリが他の企業に参入されにくい安定した業界構造があることはわかったのですが、それでも多くの個人投資が株の購入に踏み出しにくい大きな事情がこの2社にはあります。

UberもLyftも2社とも赤字だという点です。

賢明な個人投資家なら、赤字企業に投資するのは基本的にNGです。なので「LyftもUberも赤字なのになぜ投資対象になるか」という疑問は、的を得た質問になります。

UberもLyftも赤字にもかかわらず注目を集めているのは、今後起こる大きな「変化」が迫ってきているからです。その変化は自動運転車の実用化が引き起こすコストの大幅削減です。

UberもLyftもアプリでユーザからタクシー代金を受け取ったあと、運転手に運賃を支払っています。しかし今後は、自動運転車を使うことで運転手に支払う運賃を大幅に削減することができます。

UberとLyftの将来の鍵をにぎる自動運転

注目理由の1つ目のネットワーク効果は既に現在発生している現象です、一方で注目理由の2つ目の自動運転車の配車はこれから本格化する話です。

結論を端的に言いますと、今後のUberとLyftのビジネスの成功は、自動運転の取り組み方にかかっています。個人投資家の視点にたてば、いつどのタイミングから自動運転車の配車を本格化させるかを把握し、その変化が起こるまでに投資する人は投資をしておきたいところです。

そして、いつから自動運転タクシーの配車が本格化するかですが。遠い将来の話ではありません。

既にLyftはラスベガスで行われる最新技術の展示市CESでは、近年毎年のようにLyftが自動運転Aptivの車(しかもBMW!)を呼べるサービスを実施し、乗車回数は既に5万回を超えています。

LyftとAptiv、ラスベガスの自動運転タクシーが乗車5万回を突破(CNET)

「なんだ、展示とかの期間限定の実証実験なら、日本でも自動運転バスに乗ったことあるよ」という人はいると思います。そんな事情に詳しい読者の方も、「日常的に配車アプリから自動運転車を呼べるようになった」と言ったら驚いてくれますでしょうか。

はい、では驚いて下さい。その「まさか」が既に起こっています。

地域限定ながら、日常的にユーザが自動運転タクシーを呼べるサービスが2019年6月から始まりました。

Lyftで自動運転タクシー配車はじまる

2019年6月に、Alphabet(Google)の小会社で自動運転を開発するWaymoの車が、いよいよLyftの配車アプリから呼べるようになりました。

WaymoとLyftの提携は既にこの1ヶ月に発表しており、地域限定で10台のWaymoの自動運転車をLyftに提供することが発表されていました。

WaymoとLyftの提携関連記事:自動運転Waymoとタクシー配車Lyft、ロボタクシーで提携(NEWSCARAVAN, 2019年5月8日記事)

Waymoの自動運転タクシーを呼べるのはアリゾナのフェニックス郊外で台数も数台に限られますが、一般ユーザでも日常的にサービスを呼ぶことが可能になりました。

Lyftは着実に自動運転車の配車に動き出しています。

UberとLyftの自動運転の取り組み方の違い

さて、さきほどからLyftの話ばかり続きますが、Uberはどうなっているのかと気になりませんでしょうか。実は、LyftとUberは自動運転に対する取り組み方に違いがあります。

  • Lyft:自動運転技術をLyft開発しつつも、自動運転技術の高い他社と次々提携を結ぶ。世界トップの自動運転開発企業と提携して、早期に自動運転タクシー配車実現を目指す。
  • Uber:自動運転技術をUberで開発。自動運転タクシーは自社で開発して、ユーザから徴収したタクシー代は全てUberが総取りするビジネスモデルを目指す。

この取り組み方は、どちらも一長一短があります。

Lyftは業界トップの自動運転企業と提携することで、自動運転タクシーを早期に実現できます。しかし、実現した後もタクシー運転手に支払っていた運賃をLyftで総取りできるわけではなく、提携する自動運転開発企業にその一部を渡さなければならないでしょう。自動運転タクシーを早期に実現できる一方、コスト削減幅は限定的です。

一方、Uberは自動運転技術を自社開発しており、実現に時間はかかるものの、実現できた時のコスト削減効果は大きいです。ユーザからの集めた代金の全てをUberのものにできます。

LyftとUberどちらを買うのか問題

では、LyftとUberはどちらを買えば良いのでしょう。私の個人的な見解ですが、自動運転を見越した買い方で言えば、Lyftを先に買っておいたほうがいいと思われます。Uberの自動運転開発は時間がかかると思っているからです。

Uberの自動運転技術の問題は、他の自動運転開発のライバル企業に比べて大きく遅れをとっていることです。ナビガント・リサーチ社の自動運転開発企業ランキング2018では、Uberは残念ながらトップ10入りしていません。

ランキング詳細はこちら:自動運転ランキング1位Waymo、2位GMクルーズ。トヨタは9位に(NEWS CARAVAN)

2018年3月にUberはアリゾナ州で歩行者への人身事故を起こした後、同年12月まで9ヶ月の間、自動運転の実証実験を中止するなど順風満帆とは程遠いのが現状です。

一方、Lyftは同ランキング1位のWaymo(Google)や4位Aptivと提携を進めています。自動運転の取り組みの差は、自動運転タクシーの提供時期の差になって現れるので、LyftとUberのどちらを買うかと言われれば、まずはLyftだと思います。

なお、Uberの自動運転開発は自社開発で進むのか、提携に切り替えるのかこの数年で決断を迫られると思います。また、Uberも空飛ぶタクシーUber Airの取り組みでは、機体や運転技術を自社で開発していなったと記憶しており、地上のタクシーもこれに習ってスパッと提携に切り替えるかも知れません。


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