米国株ですが、これからの大まかな動きは「利上げ予想」と「一株利益予想」が鍵を握る気がしています。
利上げ予想が下方修正されれば、株価への悪影響が少なくなるので株価は上昇。ただし、業績が悪化して一株利益予想が下がるなら、株価下落という感じです。
この記事のポイント
- 2023年の一株利益予想はピークをつけて下落に転じたように見えるが、まだ3%しか下落していない。10月の次の決算期に要注意。
- この2ヶ月弱は利上げ予想が引き下げられて、株価が上昇した。しかし、10月以降は利上げ予想が引き下げ余地はかなり小さくなる予定。
- 9月からはFRBの量的引き締めの規模拡大も予定されているので、9月と10月は悪いほうに変わりやすいかも知れない。
一株利益予想について
いくつかの経済指標や市場のシグナルが示しているように、私はこれからのアメリカの景気は悪くなると思っています。
景気後退を示すデータ
- 逆イールド現象:長期国債の利回りが短期国債よりも低くなる現象が2022年に発生。景気後退前にほぼ確実に発生してきた。
- 景気先行指標:現時点で3ヶ月連続でマイナスを記録。3ヶ月連続でマイナスが続いた場合には半年以内に景気後退。
しかし、こうしたデータが景気の悪化のシグナルを出している一方で、アナリストや投資家は一株利益が大きく悪化するとは思っていないようです。
次のグラフはアナリストによるS&P500の一株利益予想ですが、7月以降に多くの投資家から景気後退懸念が出ていたのに2023年の予想はピークから3%程度しか下がっていません。
もしも景気後退が本格化すれば、一株利益が3%しか減少しないということはないはずです。
恐らくなのですが、投資家は景気悪化で一株利益が減ることをまだ株価に反映していない気がしています。
なので、もしも株式投資家が景気悪化による一株利益の減少を本格的に懸念し始めれば、株価は崩れる恐れがあります。
一株利益が減少するタイミングはまだ先か
上のグラフで見たように一株利益予想は既にピークを打って下落を始めたように思うので、「一株利益の下落が起こるかどうか」ではなく「いつ大きく下落するか」の問題に変化したと思っています。
しかし、一株利益の予想が減少し始めるタイミングはまだしばらく先かもしれません。
4-6月期の決算発表で、今後の業績見通しを引き下げた企業はいくつも見られましたが、下方修正の幅は悲惨な状態ではありませんでした。
もしも、次に大きく一株利益見通しが下がることがあるなら、7-9月期の決算発表がある10月後半か早めに利益警告(業績見通しの引き下げ)がある場合でも9月頃かなと思います。
政策金利予想について
一株利益予想の減少が今後の米国株のリスクであることは、既に上で話したとおりです。
しかし、一株利益だけ注目していると最近の米国株の上昇を説明できないので、株価の上昇要因についても触れて起きたいと思います。
6月中旬から最近の米国株は上昇していますが、この背景にあるのは政策金利予想の変化だと思います。
6月13日の時点では、市場は23年7月までの政策金利が4.00%〜4.25%にまで引き上げられると予想していましたが、今では3.25%〜3.50%にまで引き下げられています。
この利上げ予想の引き下げが見られた期間、S&P500はしっかりと株価が回復しています。
さて、「利上げ予想の引き下げ」が株価上昇につながるという流れがあるとして、これから「利上げ予想の引き下げ」の余地はあとどれくらい残されているでしょうか。
下の図に8月5日時点の投資家による政策金利予想をグラフにしましたが、これを見ると9月に0.75%引き上げられたら、残りは0.50%の利上げ予想しか残っていないと言えます。
というわけで一株利益を見ても、政策金利予想を見ても9月から10月は風向きが悪い方に変わりやすいかも知れないと思っています。
また、この時期にはFRBの量的引き締めの規模も拡大されるので、そろそろ量的引き締めについても注意を払うのも良いかも知れません。