ファーウェイへの取引禁止措置の解除を要求
トランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談も2日前に迫り、動きが慌ただしくなってきています。
中国の習近平国家主席は、貿易戦争を休戦させるためのある条件をトランプ米大統領に提示するようです。27日のウォールストリート・ジャーナルの報道によると、米政府が米国の企業に対して課しているファーウェイを始めとする中国企業との取引禁止措置の解除がその条件になるようです。
また、取引禁止撤廃に加えて、中国製品に対する制裁関税の全面撤廃なども要求すると見られています。
China to Insist U.S. Lifts Huawei Ban as Part of Trade Truce(WSJ)
透けて見える中国側の焦り
このニュースの読み方は、人によって解釈が分かれる気がしますが、私が一番最初に気になったのはウォールストリート・ジャーナルが”Trade Truce”という単語を使っていることです。英語が得意でないので間違っていたら恐縮なのですが、Truceは「合意」というよりは、一時的に争いがなくなる「停戦・休戦」の意味だったと思います。
前日のトランプ大統領とムニューシン財務長官の発言は「『合意』への道が残されている」が、合意できない場合には状況により10%か25%の追加関税を課すというものでした。
【新展開】動き出した米中貿易協議、G20での合意発表はあるか。
つまり、アメリカ側は貿易協議の合意による解決は望んでいても、その場しのぎの休戦で戦火が収まることは望んでいないようです。別の言い方をすれば、アメリカは解決を急いでいない状態です。
一方、中国側のスタンスは制裁を解除した状態で休戦したいと言っているように聞こえます。これまた言い換えると、制裁解除を急いでいるような発言です。
前日、トランプ大統領は「中国政府のほうが解決を急いでいる」との認識を示していましたが、ウォールストリート・ジャーナルの伝え方からも、中国の焦りが滲んでいるように見えました。
アメリカ政府の禁輸措置によるファーウェイの損失は3兆円
それも米政府の制裁が効果を発揮している証です。先日ファーウェイCEOの発表によると、アメリカの禁輸措置によって売上が3兆円ほど減るとされており、この損失は決して小さくないように見えます。
ファーウェイの創業者でCEOの任正非氏は6月17日、アメリカのトランプ政権による禁輸措置の影響について、「2019年と2020年は、スマートフォン減産などにより、売上高が2019年の当初計画より約300億ドル(約3兆3000億円)減少し、1000億ドル(約10兆900億円)前後にとどまる」との見通しを示した。
ファーウェイCEO「2019、2020年は売上高300億ドル減少」。アメリカ規制の影響初言及(Business Insider Japan)
今後のアメリカの交渉カード
中国側の焦りが本物であれば、アメリカの対応としてはかなりシンプルになったと思います。
もしも私がトランプ大統領なら、とるパターンは2つです。(1)中国が途中で覆した協議内容を元に戻すなら、G20後に合意。(2)そうでなければ、10%の関税引き上げを発動すれば良いだけです。
25%の関税も選択肢としてあるにはありますが、米経済への影響も大きくなるので、10%が妥当な気がします。
トランプ大統領としても2020年の大統領選を前にこれ以上強い制裁を課してアメリカ経済を減速させたくないものの、「中国が最後まで折れなかった。致し方なかった」と相手国に責任をなすりつけて世論の反論をかわしつつ、10%関税引き上げをするのでしょう。
また、10%の関税でアメリカ経済の減速を招いてしまったとしても、政策金利引き下げに慎重なFRBに対して利下げを促すこともできます。利下げしなかった場合には、「FRBが判断を誤ったため、救えたはずのアメリカ経済が減速した」と主張して、世論の怒りの矛先をFRBに向かわせるのでしょう。
残り2日でどのような結末を迎えるのでしょうか。この結果が、7月のFOMCでの政策金利判断にも影響するため、大変興味深いです。