日本時間の今朝、ウォルマートは利益が伸び悩んでいると警告を出しました。
来月に次の決算発表が予定されていたのですが、それを待たずに投資家に苦境を伝えてくれたようです。
不甲斐ない業績ならつい目を伏せたくなるところを、せっかくプレスリリースまでして事前に公開して誠意ある姿勢を見せているので、このウォルマートの発表を少し丁寧に見ていきたいと思います。
この記事のポイント
- ウォルマートは第2四半期と通年の利益の見通しを引き下げ、株価は10%近く急落した。
- 食品とエネルギーのインフレのせいで、その他の製品は値引きをしないと売れなくなっているため。
- 今会計年度でウォルマートの利益引き下げは2回目。インフレによる苦しい商売環境が続いているが、これはウォルマートだけの現象ではなさそう。
利益見通しの下方修正
ウォルマートは5月に続いて、2回目の利益見通しの下方修正を発表しました。
この発表で株価が10%近くも下がったことから、少し大きな変更だったことがわかります。
下方修正した項目はいくつもあるのですが、一株利益を例にあげると次のような変更がありました。
第2四半期の調整後一株利益見通しの変化
- 2月時点:「一桁半ばの成長率」
- 5月時点:「横ばい or わずかな成長率」に下方修正。
- 【NEW】7月時点:「マイナス8-9%」に下方修正
上にあげたのは8月に発表される23年会計度の第2四半期の一株利益についてですが、23年度通年についても利益の下方修正が発表されています。
通年の調整後一株利益見通しの変化
- 2月時点:「一桁半ばの成長率」
- 5月時点:「マイナス1%成長」に下方修正。
- 【NEW】7月時点:「マイナス11-13%成長」に下方修正
わずか2ヶ月で2回も下方修正が入っていること、さらに修正幅が大きくなっていることが、問題の大きさを物語っている気がします。
利益減少の背景
一体何が原因で、ウォルマートは利益の見通しを引き下げなければならなくなったのでしょうか。
ウォルマートの発表資料は短くて読みやすく、簡単に目を通せてしまうのですが、ざっくりいうと「食品と燃料以外のモノが売れなくて、値下げして在庫を処分しないといけないから」ということのようです。
- インフレで食品と燃料の価格が価格が二桁%も上昇している。
- 消費者は食品や燃料以外のモノを買う余力が減っている。
- (特に、アパレル・衣類で)在庫を処分するために値下げをせざるを得ない状況。
- この消費者の行動の変化は、年後半に強まると予想される。
ウォルマート以外の企業にも波及
さて、ウォルマートが直面している問題が何となくつかめてきたところで、最後にもう少しだけ深ぼっておこうと思います。
ここで書いた話はウォルマート固有の問題なのか、他の企業でも起こる問題なのかです。
私の理解では、程度の差はあれどウォルマートにとどまらず広い小売企業で見られる問題だと思います。
その証拠に、6月のアメリカ小売売上(名目)の前年比を比べてみると、ウォルマートだけでなく全米でも食品やガソリンが好調な一方で、家電などのその他の消費が低迷していることがわかります。
また、このブログでは5月のアメリカの小売売上が発表された後の記事で、次のように書きました。
今回の小売の低迷は何でしょうか。
調べて見ると、どうも物価が高騰していて、人々が消費に回せるお金が少なくなっているようにも見えます。
5月の小売の内訳を見てみるとガソリンスタンドの売上が急激に伸びている一方で、車・家電・家具などの数年に一度の買い物(耐久財)をかなり控えていることが分かります。
つまり、ウォルマートが今回悩んでいる問題は、毎月の小売売上をチラっとでも確認していれば、どこかで聞いたことのある話だったと思います。
だから、今回のウォルマートのプレスリリースが発表された後に、同業者のターゲットからネットショッピングで競争するアマゾンまで幅広い株で時間外で売られたようです。