アメリカの景気は個人消費によって、大きく左右されます。
個人消費は毎月月末にならないとデータが発表されませんが、消費に関連の深いデータとして小売売上高がいち早く発表されたので見ていきます。
その結果は予想していたほどは悪くなかったです。しかし、6月の小売売上高の成長分は全てインフレによるもので、インフレの影響を除くと実質マイナス成長だったようです。
この記事のポイント
- アメリカの6月の小売売上高は前月から1.0%伸びたが、この伸びは全て物価の上昇によるものだった。
- 物価の伸びを差し引いた実質成長率は前月比マイナス0.3で、2ヶ月連続でマイナスが続いた。
- 4-6月期で実質GDPマイナス成長になればアメリカは景気後退に入った扱いになるが、その可能性は高まった。
物価の上昇だけで押し上げられた小売売上
さっそく6月のアメリカの小売売上高の結果を見ていきます。
- 結果:前月比+1.0%(予想:同+0.9%)
- 前回:マイナス0.3%からマイナス0.1%に上方修正
6月の小売売上の伸びは、予想よりも良かったです。前月比1.0%なら、年率に換算すれば13%成長にもなるので、6月はかなりのハイペースで消費が進んだように見えます。
問題があるとすれば、この消費は全てインフレによって上昇したものであるという点です。
既に発表があったとおり、6月の消費者物価は前月比+1.3%で伸びていたので、小売売上高の伸びより物価の上昇のほうが大きいです。
インフレの影響を除いた実質の小売の伸びを調べてみると、6月はマイナスだったことがわかります。
2四半期連続の実質GDPマイナス成長に近づく
さて、今回の発表で小売売上高は4月から6月までが出揃いました。
これで四半期ごとに前期比の成長率をグラフが作れるようになったので、早速この4-6月期でアメリカの小売が実質で(インフレの影響を除いて)どれだけ成長したのかを見ていきます。
アメリカの小売売上は4月は実質プラス成長でしたが、5月と6月で良い結果を残せなかったため、4-6月期を通して見るとマイナス0.9%に沈んでいます。
小売売上がマイナス成長なら、必ず個人消費もマイナス成長になるわけではないのですが、4-6月期の個人消費もあまり期待できなそうです。今回の小売売上の結果を受けて、アトランタ連銀はアメリカの4-6月期の実質GDP成長率をマイナス1.6%へとわずかに下方修正しました。
GDP成長率が発表になる7月28日まで既に2週間を切っている段階で、これから好材料が次々出てくる可能性もそれほど大きくないので、6割から7割くらいでアメリカは1-3月期に続いて2四半期連続のGDPマイナス成長になるのだと思います。
2四半期連続で実質GDPマイナスが続くと、一般的には(テクニカルな)景気後退と呼ばれます。
ただ、株式投資家はもちろんこの状況を知っていながら、あまり株を売る動きに出ていないようです。恐らくその背景には、順調に伸びると予想されている企業の利益(1年後の一株利益予想)があります。
もしも既に景気後退に入っているとしても、今のところは物価高を受けた値上げができて売上は高く維持されているので、あまり業績は悲観的には見られていません。
しかし、売上はしばらく維持できても、本当に利益が今後1年も順調に伸びるかはかなり怪しいところです。企業の利益予想が暗転したときには株価に下落圧力がかかるので注意が必要です。