あと1週間ほどで2022年の上半期が終わります。
この半年は米国株が低調でした。年初から20%を超える下落をして弱気相場に入っている状況です。
この記事では、米国株が下げた要因について書いていきたいと思います。
この記事のポイント
- 2022年前半の米国株は金利の上昇の悪影響を株価が下がり続けた。
- しかし、アナリストは米国企業の利益には強気で2022年と2023年の一株利益予想を引き上げ続けた。
- これからもしも景気後退になるなら、一株利益予想の低下を通じてまだまだ株価が下がりうる。
長期金利の上昇で株価を下げた米国株
もったいぶらずに結論を先に言うと、みなさん知っての通り、アメリカの長期金利の上昇のせいで2022年前半の米国株は株価を下げたようです。
思い返すと2021年末の長期金利(米10年国債利回り)はまだ1.51%でした。それが今では3%を超えて、わずか半年で2倍以上になっています。
長期金利は上昇してしまうと割高な株や成長株を中心に下落する力が働くので、この長期金利の急上昇はとくに成長株が多いナスダック総合指数を大きく引き下げることになりました。
企業の利益予想は無傷だった
ここまで「アメリカの急な長期金利の上昇で株価が下がった」という話をしました。ここまでの内容なら、ほとんどの人が知っている内容だと思います。
この話だけで終わってしまうと今後の株価の考察につながらないので、補足説明をしたいと思います。
2022年上半期で米国株が下がった要因で一点注意したいのは、株の下落はあくまでも長期金利によるもので、企業の利益(予想利益)が悪化したから株価が下がったのはないという点だと思います。
株が下がる2つの要因
少し順を追って説明します。株価は次のように「一株利益」と「PER(株価収益率)」と呼ばれる2つのかけ算に分解できます。
- (株価) = (一株利益) × (PER)
なので、株価が下がる要因は(1)今後予想される一株利益が減少するか、(2)長期金利が上がるなどでPERが下がるかの2つのタイプに分けられます。
2022年の場合は、上に書いたように長期金利が上昇したことでPERが下がり、株価下落につながりました。
上昇し続けた2022年と2023年の一株利益予想
一方で、一株利益は株価の下落にどう影響したのかを調べてみると、意外にも下落に全く関わっていないどころか上昇要因になっていました。
次のグラフは過去1年間で2022年と2023年のS&P500に含まれる企業の一株利益(予想)の変化をグラフにしたものですが、おおむね右肩上がりになっていることがわかります。
2022年に株価が大きく下落していた間も、アナリストたちは2022年と2023年の一株利益予想を上昇修正し続けていたようです。
もしも、長期金利の上昇がなければ、一株利益予想の上昇修正を受けて米国株は上がっていた可能性すらあります。
さいごに
最後に、これからの株価について考えていきたいと思います。
「米国株は2022年前半に大きく下がったので既に割安になった」「これから上昇するはず」という意見を聞きます。
この意見はある短い期間は正しいかも知れません。たしかに、株価を下げる要因になっていた長期金利の上昇はそろそろ止まる頃に来ているようにも見えます。
>>米長期金利はピークを超えたかなと思っています(2022年5月30日記事)
ただ、私には本当にこのような株の上昇が起こるかは分かりません。
長期金利の上昇が止まりそうな背景にはアメリカの景気後退の懸念があるので、景気後退が不可避なほどに濃厚になれば株価の上昇はあっても短期間で終わるかも知れません。
それよりも今後1年以内に起こりそうな景気後退に備えるほうが重要かなと、今の私は考えています。
過去数十年見なかったほど急なペースで利上げを進めているアメリカは2022年や2023年のどこかで景気後退になる確率は高く、そのときには一株利益の予想が大きく引き下げられるはずです。
まだ現時点で一株利益に景気後退が反映されていないことは確かなので、いざ景気後退が来たら一株利益の減少を通じて株価は一段と大きく下落しうると思います。