FRB議長Facebookデジタル通貨を牽制
Facebookは2020年にもデジタル通貨のLibraの発行を予定していますが、米国の金融界で最も高い権威あるうちの1人から牽制が入っています。
2019年6月25日、ニューヨークで行われた外交問題評議会で、中央銀行FRBパウエル議長は、Libraを注意深く見守っており、消費者の保護の観点から、非常に高い規制が設定されることを期待していると発言しています。
Libra’s a new thing; we are looking at it very carefully.Given the possible scale of it, I think that our expectations — from a consumer protection standpoint, from a regulatory standpoint — are going to be very, very high.Authority for overseeing Libra is going to be in a number of places, but I think that the big picture is we are going to be looking really carefully at it.リブラは私たちが新たに注意深く見守っているものの1つです。その規模が大きくなる可能性を考えたら、消費者保護と、規制の観点の我々の期待は、非常に、非常に大きいものになると思います。Libraを監視する権限は数多くありますが、私たちはその監視の全体像を実に注意深く見ていくことになります。
規制の声が上がるデジタル通貨
FacebookがLibraの発表をしてからというもの、案の定さまざまな人たちが規制を求める声をあげています。今回のFRBパウエル議長の声は、その中でも特にインパクトの大きなものです。
確かに一部の批判の声が上がっているようにデジタル通貨は1種のお金なので、通常の通貨と同じような規制を求めるのは当然のことかもしれません。しかし、多少の規制はかけたとしても、Libraのようなデジタル通貨のリリースを大きく遅らせたり、リリースを妨げる規制はアメリカの国益を損なう恐れがあります。
現金と銀行が引き起こしてきた問題を解決すると同時に、近い将来に世界中で使われる新たな決済手段になりえるデジタル通貨がアメリカから出る可能性の芽を、アメリカ自身が摘む必要はないと思います。
デジタル通貨は現金が抱える多くの問題を解決する
よく論じられていますが、現金とそれを扱う銀行は多くの時間とコストがかかるものです。
通常、国際送金は3から5営業日かかるだけでなく、平均して送金金額の7%もの高い手数料がかかります。またATMからの現金引き出しや口座振込にかかる手数料は、ほとんどつかない利息に対して桁違いに高額です。
また、海外に行くときは高額の手数料を取られつつ、誰もがしぶしぶ通貨両替をしています。
つまり、現金は「使える国に制限がある上に、遅くて、高い」のです。にもかかわらず、未だに世界中の決済の85%で現金が使われています。この非効率が社会にもたらしている不経済は極めて大きいです。
Libraが目指しているのは、発展途上国も含めて世界中の誰もがどこからでも簡単に、手数料なしで、リアルタイムにアクセスできる通貨です。現金の非効率性に比べたら、こちらは極めて効率的です。
お金の効率性は、経済の活性化にも繋がります。マッキンゼーの試算ではデジタル通貨を使うことによって、発展途上国は3.7兆ドル(400兆円)を創出し、さらに9500万人の雇用を生み出すという試算もあります。
さらにいうと、このデジタル通貨をつかった決済プラットフォームの構築はFacebookやその他米国企業ががやらなければ、どこかの国の企業がやるだけです。それだけ、この分野には巨大なビジネス・チャンスが眠っているからです。
その企業が中国なのか、インドなのか、もしくはアフリカのものになるのかはわかりませんが、いずれデジタル通貨が世に広まるなら、アメリカは自分自身の手で、自分の国の企業が世界の決済基盤を握る可能性を排除する必要はないです。
それは米国経済にとっても、Facebook株主の私としても不利益です。
Libraとビットコインは別物
最近、当ブログはLibraやビットコインの記事が多くなっており「いつから仮想通貨ブログになったんだ」という声が聞こえそうですが、この2つは私は全く別物だと思っています。
- 【ビットコイン】:1つの金融商品。次の時代の決済手段にはならない。
- 【Libra】:新しい時代の決済手段。Facebookのチャンスと同時に、Visa、マスターカードなどの決済企業に大きな影響が出る。
以下記事で書いたようにビットコインも長期的に価値があがる仕組みを備えているので、投資対象として無しではありません。
しかし、私が本当に注目しているのは資産としての仮想通貨ではなく、新しい決済基盤としてデジタル通貨がどのタイミングで世に広まるかです。(「世に広まるか」ではありません。広まることは既に明らかなので、「どのタイミングで」世に広まるか、市民権を得るかが焦点です。)
新しい時代の決済をLibraが握るのか、まだこれから世の中に発表されるデジタル通貨になるのかはわかりませんが、現金が非効率である以上、デジタル通貨が現金に変わる未来はほぼ確定だと思います。
その新たな時代のチャンスをFacebookが握るのか、またFacebookはLibraの利用手数料で設けるビジネスはしないと発言しているので、Libraを使ったサービス・アプリがちゃんと収益を伸ばしてけるかに注目しています。
反対に、私はVisaやマスターカードの株保有者でもあるので、Libraのようなデジタル通貨がクレジットカードの利用額を減らしていく傾向がいつから始まるか、その局面でVisaやマスターカードがどんな手をうつのかが争点になりそうです。
関連記事:【VisaとMastercardを信じる投資家へ】クレジットカード決済を揺るがす脅威。
いずれにしろ、これからデジタル通貨が世の中に浸透していく流れはもはや止められないし、止めるべきではないと思います。
FacebookがLibraを発表した瞬間、パンドラの箱は開けられたのです。