最近ではアメリカのIT企業で人員削減や求人数を減らす動きを良く耳にします。
私はこれから半年から1年程度でアメリカに景気後退が来ると思っているのですが、求人数の現象はどの景気後退前でも当然見られた動きです。
少しデータを見比べてみると、求人数が減りだしてからだいたい9ヶ月後〜15ヶ月後にアメリカは景気後退に陥っていることがわかります。
この記事のポイント
- 景気後退前には、アメリカ全体で求人数が減少する動きが見られる。
- 過去の景気後退の様子を振り返ると、およそ景気後退の9〜15ヶ月前に求人数が減少する動きが見られる。
- 既にアメリカのIT業界では求人や採用を絞る動きが見られる。まもなく求人数はピークをつけるとこまで来ている。
採用を絞るアメリカ企業たち
最近ではIT業界を中心にアメリカの企業がリストラをしたり、求人を縮小する動きが見られます。
次のツイートは今朝のブルームバーグの記事でPaypalのリストラを伝えていますが、他にもUberやツイッターやネットフリックスなどが既にリストラや採用縮小を計画していると言います。
PayPal began laying off staffers who worked in risk management and operations this week. This is part of a larger trend of hiring freezes/job cuts across tech, including:
– Uber
– Peloton
– Klarna
– Carvana
– Robinhood
– NetflixMore: https://t.co/M1Alu6iavw
— Bloomberg (@business) May 26, 2022
「ああ、なるほど。こないだの決算で良くなかったところが多いな」と思っていたら、業績の良かったマイクロソフトも今後の採用には慎重になっていると言います。
>>Microsoft exec tells employees in Windows and Office groups to be more cautious in hiring(CNBC)
企業が採用を絞る動きは景気後退前に見られる典型的な動きであることは有名ですが、求人が減ってからおよそ何ヶ月で景気後退が来ているのか気になったので少し調べてみました。
求人が減ってから景気後退になるまで
アメリカの(非農業部門)の求人数のデータはFREDというサイトから取ってくることができます。
グレーで塗りつぶした期間が景気後退期なのですが、求人数のピークから景気後退までの期間を調べてみると前回の景気サイクルで15ヶ月、前々回の景気サイクルでは9ヶ月でした。
思っていたほど景気後退まで時間があるなと思ったのですが、これにはわけがあります。
察しの良い人は気づいているかもしれませんが、以前までは求人数がピークをつけるような時期にはFRBは政策金利の引き上げを終えて、景気を支える利下げを行っていました。
例えば2019年のアメリカは景気拡大がゆっくりとしたペースに減速しましたが、FRBが利下げを行って株価も景気も持ち直したことを覚えてる人も多いと思います。
FRBが利上げから利下げに転換すれば、企業が利益を確保するために求人を減らしてもしばらく景気は持ちこたえるようです。
今後の動きは
さて、最近のIT業界の動きを見るとアメリカはそろそろ求人数の増加がピークをつけて、減少し始める頃だと思います。
そうなると本来であればFRBは政策金利の引き上げを止めて、利下げも視野に入れたいはずです。
ただし、今回の場合は抑え込まなければならないインフレがあり、簡単には利上げを止められません。だから、あと数ヶ月もして雇用環境が悪化しはじめた場合には、FRBはとても大事な選択を迫られることになります。
雇用と景気の悪化を心配し、早めに利上げを止めれば株価と景気は一時的に回復するかも知れませんが、その代償として今後10年インフレが根付いてアメリカの景気を停滞させるかも知れません。
一方で、利上げを続ければもしかするとインフレは抑え込めるかも知れませんが、その場合は9〜15ヶ月も待たずに、2022年末か2023年前半にも景気後退と大きな株価下落がやってくる恐れがあります。
私は年始から予想している通り、今年末から来年にかけて景気後退が起こると思っています。