以前のわたしはアメリカの景気後退は早くても2023年、早くても2022年末だと言ってきました
現時点ではまだ何とも判断がつきませんが、アメリカの景気後退はもっと近いのかも知れません。
最近の市場はすこぶる悪く、特に債権市場の動きを見ていると景気悪化か何かしたの危機を見越しているような動きがいくつか見られます。
この記事のポイント
- 10年国債利回りが低下を始めたように見える。一時的な動きだと思われるが、そうではない場合は景気後退が近いので注視する。
- ブレイク・イーブン・インフレが低下している。インフレを懸念しているなら高止まりしても良いはずだが、景気悪化を見越している恐れあり。
- 格付けの低い社債が売られる勢いが強まっている。これは何かしらの危機が近いことを意味している可能性がある。
これからいくつかの数字を見ていきますが、どれも短期間だけに見られた一時的な現象かも知れない点にご注意ください。
一時的ではないとなった場合には、景気後退か何かしらの危機が迫っていると市場が考えていることになるので、私は注意して眺めています。
低下している10年国債利回り
まず1つ目に気になっているのは、10年国債利回りが低下を始めたようにみえることです。
ふつう、景気拡大期も終盤になると利上げ時でも10年国債利回りが低下して、景気後退時の景気の底まで何ヶ月から何年もかけて利回りの低下が続く動きが見られます。
そして、最近の1週間は「景気後退前の利回り低下が始まったのかな」と頭をよぎらせるような利回りの低下が見られます。
下図は直近1ヶ月のアメリカの10年国債利回りのグラフですが、最新の1週間は低下が続きます。
ただし、これだけ見て「景気後退前の10年国債利回りの低下が始まった」というのはかなり時期尚早です。
私は今のアメリカのインフレの高さを考えると、もっと金利は高くなるはずだと思っているので、最近の利回り低下は一時的な可能性も十分あると思っています。
低下している10年国債のブレークイーブンインフレ率
次に気になる動きをしているのは、ブレークイーブンインフレ率と呼ばれる数字です。
ブレークイーブンインフレ率は、米10年国債を買っている投資家が想定している10年間のアメリカのインフレ率を表しています。
この数字は、景気後退前から低下をはじめて、景気が底を打つ少し前まで急降下をする傾向があります。
そして、残念ながら最近のブレークイーブンインフレ率は4月21日から勢いよく下がっています。
出典:FRED
アメリカは高いインフレ率を記録しているので、本当ならブレークイーブンインフレ率も高止まりしていてもおかしくないはずですが、そうなっていません。
>>【関連記事】アメリカ消費者物価、伸びは鈍化したものの予想を上回る。
もしもこの傾向が続くなら、残念ながら景気後退に向かっているという理解になります。
上昇する社債スプレッド
最後に見るのは、格付けの低い社債と国債の利回りの差(ハイイールド債のイールドスプレッド)です。
景気の悪化が予想されたり何かしらの危機が近づくと、格付けの低い社債は急激に売られてスプレッドが大きくなる傾向があります。
このスプレッドの拡大も最近見られる動きです。
出典:FRED
最近は2018年末のような水準に近づいています。
2018年末は今と同じように利上げと量的引き締め(FRBが債権を処分する動き)が行われて、S&P500が最高値から20%下落した時期なので、状況はかなり似ています。
それ以上に上昇を続けるようなら、さらなる危機が近づいていることになるので要警戒です。
さいごに
この記事では、最近の債権市場の動きから投資家たちが景気後退か何かしらの危機が近づいていることを警戒しているサインが見えるという話をしてきました。
この記事で見てきた3つの数字は、どれも私がコロナショック時に相場が底打ちしたことを確認するために使ったデータでもあります。
>>底打ちのシグナルが出始めた米国株。それでもさらなる下げの恐れ(2020年3月25日)
その3つの数字が悪い方向に動いているのが、最近はどうしても気になっています。
もちろん、一時的な市場の動きに私が惑わされているだけかも知れませんが、気をつけて動きを見ていきたいと思います。