今年の投資はとても難しい局面になっていると思います。
数年前にこのブログでは、過去の多くの景気後退期でも安定してリターンを出せるオールシーズンズ・ポートフォリオを紹介しました。
しかし、今回の2022年の局面ではこのオールシーズンズ・ポートフォリオでも下落を防ぐのは簡単ではないようです。この記事では、2022年にオールシーズンズ戦略をとった場合のリターンを見ていきたいと思います。
この記事のポイント
- オールシーズンズ戦略は著名投資家のレイ・ダリオが個人投資家向けに考えた長期安定リターンが目指せるポートフォリオ。
- しかし、2022年はオールシーズンズ・ポートフォリオでも資産の減少はあまり防げていない。
- 原因はアメリカの高すぎるインフレ。この悪影響から資産を守るためには、インフレに強いゴールドやコモディティをいつもよりも多めに保有し、長期国債を控えめにするなどの配慮が必要。
オールシーズンズ・ポートフォリオとはなにか
オールシーズンズポートフォリオとは、レイ・ダリオがアンソニー・ロビンズの著書の中で個人投資家が安定して長期的に投資でリターンを残すために発案されたポートフォリオです。
仕組みはとても簡単で、米国株(30%)と超長期国債(40%)と長期国債(15%)、ゴールド(7.5%)、コモディティ商品(7.5%)を保有して、定期的にこのバランスになるように調整するだけです。
たとえば、新型コロナウイルスの流行初期の景気後退時でも、オールシーズンズ戦略の月別リターンはわずかマイナス3%で耐えることができています。
上のグラフで見たようにS&P500にリターンの大きさでは負けてしまいますが、株が下落する場面でも安定してリターンを残せるのがオールシーズンズ戦略だと言えます。
2022年はオールシーズンズでも下落
しかし、2022年はこのオールシーズンズ・ポートフォリオでもあまり下落を防げていないようです。
2022年1月から4月までのリターンはS&P500のマイナス13%よりは良いですが、オールシーズンズもマイナス9%と大きく下げています。
オールシーズンズ・ポートフォリオでも2022年に下落している原因は、アメリカで起こっている高すぎる物価の上昇にあると思います。
レイ・ダリオのオールシーズンズ・ポートフォリオを考案したのは2010年代でしたが、2010年代までの30年間はインフレ率も長期金利も緩やかに低下した時代でした。
2022年の高いインフレに見舞われてもオールシーズンズ・ポートフォリオはS&P500よりもいくらかは損失を抑えられていますが、それでもポートフォリオ全体半分以上がインフレに弱い米国債が占めているので、2022年はなかなか良い成績を残せないようです。
おまけに
最後は少しだけお遊びをしてみたいと思います。
レイ・ダリオがオールシーズンズ・ポートフォリオを設計する前に考えていたのは、「資産の減少をどのようにして防ぐか」ということのようです。
得られるリターンを大きくすることよりも大きな資産の減少にあわないように、資産を分散したポートフォリオを心がけたと言います。
であれば、高いインフレが始まった2021年から現時点で手に入る2022年4月まで月間リターンのデータを使って、オールシーズンズ・ポートフォリオの資産減少を最も抑えられる資産の割合を計算で出してみたいと思います。
手計算でやるのは大変なので、今回もPortfolioVisualizerというサイトを使いました。
そして2021年から2022年4月まででオールシーズンズ・ポートフォリオの資産減少をもっとも抑えるような保有割合を算出したところ、次のようになりました。
この割合を使った場合には、ちゃんと資産の減少が抑えられています。もともとのオールシーズンズは最高値から10%下落しているところを、3%の下落に抑えられています。
ただ、このオールシーズンズの新しい保有割合は信頼するにはバックテストをする期間が短すぎです。なので、お遊び程度に考える必要があります。
それでも、インフレを抑えるためにはゴールドやコモディティなどのインフレに強い資産をいつもより多め(2倍程度)持つこと、さらに国債を保有するにしてもインフレの影響を受けやすい期間の長い国債の保有を控えめにするなど参考になる知恵が確認できました。