3月のアメリカの消費者物価が発表されました。今回のデータはロシアとウクライナの戦争の影響を受けたものになっています。
結果は予想通りの深刻なインフレでした。ただ、一部のモノで価格の伸びに陰りが見えたのは、良かった点かも知れません。
この記事のポイント
- 2022年3月のアメリカの消費者物価は前年比で8.5%に上昇した。前月の2月よりも物価上昇は加速している。
- 今回のインフレ率を押し上げたのエネルギー価格の上昇。ウクライナ戦争で原油高になった影響を受けた。ただし、この影響は来月から弱まる見込み。
- また、2021年に半導体不足で価格が上昇した中古車には落ち着きが見られた。一部ではあるが既に物価のピークを超えたものも出てきた。
消費者物価はついに前年比8.5%に
毎月確認しているアメリカの物価ですが、今月は特に大きな伸びを見せました。
- 前年比:+8.5%(予想:8.4%)
- 前月比:+1.2%(予想:1.2%)
まず1年前からの物価の上昇率は+8.5%となりました。この数字は、1981年以来の高さになっています。
この1年間本当によく物価が上昇して、数年前のアメリカでは考えられなかったような光景が広がっています。少し前までは新興国でしか見なかったようなインフレ率です。
また、22年3月は単月(前月比)でも勢いよく物価が上昇しました。
3月の物価上昇の前月比+1.2%という数字は、年率(1年間同じ上昇率が続いた場合)約+16%にもなります。
以下では、最近のアメリカの物価の伸び(前月比)をグラフにしたものですが、この数ヶ月で勢いを増している点がやや心配です。
物価上昇の要因と光明
今月のインフレの要因は、エネルギー価格の上昇でした。エネルギー関連の物価は1ヶ月だけで+11%上昇しています。
実はエネルギー価格は物価上昇を計算する時の比率は、他の品目と比べてそれほど大きくありません。
しかし、3月はガソリン代などで他の品目に比べて、文字通り桁違いな物価上昇が起こったために、全体の物価を押し上げることになりました。
一部で物価下落の兆し
ただ、エネルギー価格による物価上昇は翌月以降は一旦弱まると思われます。3月の物価はウクライナ戦争の影響で原油価格が急騰していた影響を受けたもので、今はその影響はやや和らいでいるからです。
また、2021年に消費者物価が上がるきっかけを作った中古車など、一部のモノの価格が下落する様子が今月見られました。
2021年までは半導体不足で新車が作れずに中古車の需要が高まって物価の上昇が見られましたが、この動きは既にだいぶ落ちついてきたようです。
さいごに
この記事では、22年3月もアメリカで物価が急上昇した件について書きました。
ただし、今回の物価上昇の要因になっていたエネルギー価格はこれから落ち着くと見られること、中古車などの一部のモノで価格の伸びが止まったことから、来月以降は物価の伸びが弱まる希望が出てきました。
とは言え、多方面にインフレが広がっている今の状況を抑えるためには、中央銀行FRBはこれから金融政策を引き締めなければなりません。
物価の発表の後のFRBの主なメンバーの発言を見ても、引き締める気合十分な様子です。
>>ブレイナード理事、「整然とした」引き締めで政策を中立水準へ(ブルームバーグ)
こうした中では投資でリターンを出すのは、なかなかに難しいです。今年は株式投資家にとっては、なかなか苦しい展開が続きそうです。