日本でもアメリカでも個人の消費はGDPの大半を占める重要なものです。
しかし、最近のアメリカでその個人消費が伸び悩んでいるように見えて気になっています。
この記事では21年12月のアメリカの個人消費のデータを見ていきますが、どうにも低迷しています。個人消費よりも早く発表された12月の小売売上高でも消費の低迷を伝えましたが、やはりと言った感じです。
この記事のポイント
- 2021年12月の個人消費はかなり減速した。実質個人消費は前月比年率マイナス11%だった。
- 12月は新型コロナウイルスの流行などの一時的な要因があったため、今後は少し消費は上向くかもしれない。
- しかし、2021年8月から個人所得はインフレの伸びに勝てていないので、買い物の余力が毎月失われているように見える。
低調だった2021年12月のアメリカの個人消費
2021年12月のアメリカ発表になりましたが、かなり低調でした。
上のグラフは最近数ヶ月のアメリカの個人消費(インフレ調整済み)の前月からの伸びを表したものです。
11月の個人消費が発表された時も低迷しているという記事を書きましたが、12月はそれ以上に大きく低迷してることがわかります。
年率マイナス11%の伸びという数字は、もしもこの状態が12ヶ月続くと個人消費がマイナス11%になるというペースです。
12月の消費の低迷は一時的との声も
ただ、この12月の消費の低迷を専門家は「一時的」と片付けている印象があります。
その理由を探ってみると、だいたいが次の2点のようです。
- 11月と12月は新型コロナウイルスの流行で、一時的に消費が鈍った。
- 所得は順調に伸びているので、2022年後半になるにつれて消費は回復するはず。
1点目のオミクロン株による新型コロナウイルスの影響で一時的に景気が低迷したのは確かに考えられます。
ただし、コロナの影響が本当に年率マイナス11%まで低迷させるほどインパクトの大きいものだったかは疑わしいです。
前回アメリカで新型コロナウイルスの流行が見られたは2021年8月でしたが、下図を見るとわかるようにこの時は消費は衰えませんでした。
所得は増えているように見えるだけ
アメリカでは個人の所得が伸びているから2022年後半になれば消費も景気も力強さを取り戻すとの見方もありますが、私はこれも少し怪しいと思っています。
たしかに、アメリカでは2021年10月から個人の所得は高い伸びで増えているように見えます。
しかし、高い伸びを見せているように見える所得も今のアメリカの高いインフレには勝てていないようです。
以下はインフレ分を差し引いた実質の個人所得の伸びをグラフにしたものですが、8月以降は毎月マイナス成長が続いています。
つまり、インフレのせいで所得が増えているように見えるだけで、実質の所得は毎月減っている状態だとわかります。
この状態では2022年後半になるにつれて消費が回復することを期待するのは難しいです。
さいごに
この記事では2021年12月のアメリカの消費が大きく落ち込んだ話をしました。
12月の消費の低迷の背景の一部には新型コロナウイルスの流行もあるので、感染拡大が抑えられれば消費も増えるかもしれません。
12月に消費を控えてアメリカの貯蓄も少し増えたので、1月や2月はその貯めた分を使うなどで消費が盛り返す可能性も十分あります。
なので、アメリカの消費を心配している私もこれから一直線に景気が悪化するとは思っていません。
しかし、所得がインフレに勝ててていない状況が5ヶ月も続く状況を見ると、「2022年に年が深まれば消費の力強さが回復する」と考えるのは、楽観的な気がしています。