22年1月のアメリカの金融政策を決める会議(FOMC)が無事に終わりました。
今回は注目が集まっていた割には、ほとんど何も目新しい発表がありませんでした。
むしろ、FOMC後の市場の反応のほうが興味深かったので、市場の反応を中心に1月のFOMCを振り返ります。
この記事のポイント
- 1月のFOMCではサプライズはなかった。利上げは近い、バランスシート縮小は利上げ後という予想された内容だった。
- FOMC後に投資家は警戒感を強めたのか、株も国債も売られた。3月に0.50%の利上げをすると予想する投資家も一部だが増えた。
サプライズのなかった1月のFOMC
1月のFOMCはとても内容に乏しかったです。
政策金利の引き上げ(利上げ)についてもっと踏み込んだ発言もあるかと思われたのですが、ほとんど目新しいことはありませんでした。
今回のFOMCの主な内容を振り返ると、主要な項目は次の3点です。
- 1月の利上げはなし。資産購入(QE)は予定どおり3月初めに終わらせる。
- 利上げ開始は近く、FOMCは3月に引き上げることを意識しているとパウエル議長が発言。
- 利上げ後にバランスシートの圧縮(QT)を始める。購入した債権を売ることはせず、満期になった債権を再投資しないことで資産を減らず。
3月に利上げがあることは、既に市場の多くの投資家がもともと予想していたことでした。
バランスシートの圧縮(FRBが景気を支えるために買った国債などの債権を処分する件)も、前回のFOMCの議事録に書いてあったので、こちらもサプライズはなく「でしょうね」という感じです。
ただし、前回のFOMCのように翌月の議事録公開で「実はこんな話もしていた」と後出しの発表があるかもしれないので、来月の議事録公開も注意して見おきたいと思います。
少し大きく反応した市場
今回のFOMCでは特に何も大きな発表はなかったと私は思っています。このようにほとんど材料がない場合は、「さて、今回の結果をどう受け止めたらいいのだろう」と悩んでしまいます。
こういうときは、他の投資家はどう受け止めたかを見てみるのが良いかもしれません。
そう思ってS&P500の株価(下図)の動きを見てみると、FOMCのパウエル議長の会見後に大きく売られていることがわかります。
売られているのは株だけではありません。次のグラフは10年米国債の利回りのグラフで国債が売られるほど上昇するのですが、パウエル議長の会見後に利回りが急上昇した(つまり売られた)ことがわかります。
では、投資家は何を嫌がったのでしょうか。
これは推測なのですが、今回は注目を集めていたFOMCだったのに今後の投資の手がかりになる材料がハッキリ示されなかったことを嫌がったのかもしれません。投資家は不確実なことを嫌うので、それで国債も株も売られたのかもしれません。
3月に大幅な利上げを予想する投資家がわずかに増加
少し面白いのは、今回のFOMC後に「次の3月の利上げは0.25%ではなく、0.5%なのではないか」と警戒しだした投資家が一部いることです。
以下の図は、今回のFOMC前後で投資家による3月の利上げ予想がどう変化したのかをグラフにしたものです。これを見るとFOMCを終えて、0.50%の利上げがあると予想を引き上げた投資家が一定数いることがわかります。
FOMCの何に反応して0.50%の利上げ予想が増えたのかはよくわかりませんが、一部の投資家の警戒感は増してるようです。
一部の投資家が0.50%の利上げを意識し始めたことも、(メインではないですが)株や国債が売られた要因になっていると思います。
また、FOMC前は2022年の利上げは1.00%(4回分)だという予想が多かったのですが、FOMC後に再び1.25%(5回分)予想に引き上げられたことも売られた要因になっています。
個別の企業を見ていると昨日のマイクロソフトのようにまだ業績の良い決算を発表するなど良い兆候も見えているのですが、全体的に投資環境はまだ良い状態とは言えなそうです。
さいごに
この記事では22年1月のFOMCについて書きましたが、ほとんど何も新しい情報がFRBから提供されませんでした。
利上げやバランスシート縮小について先行きはまだ不透明なことが多く、3月での普段よりも大きいな0.5%の利上げもありえると考えた投資家が株や国債を動きも見れました。
最後に個人的な考えをちらっと書いておきます。
アメリカの高い物価上昇を考えれば物価の伸びを抑えるために利上げは必要なのはわかるし、むしろ2022年に予想されている5回の利上げでは足りないと思うのですが、実際には年内に5回(1.25%分)利上げをすることは無理だろうとも思っています。
アメリカの景気は既にピークを超えていて、それほど強くないからです。
こう考えているのは私だけではありません。
2022年1-3月はほとんどの期間をゼロ金利で過ごせることが決まったわけですが、ブルームバーグの調査によればこの時期ですらGDP成長率は2.85%まで下がると言います。
GDP estimates for 1Q2022 getting cut … per @Bloomberg consensus, estimate is now for 2.9% q/q annualized growth, down from nearly 4.5% in November pic.twitter.com/GJjtvPBxSu
— Liz Ann Sonders (@LizAnnSonders) January 19, 2022
上のツイートの図を見ると、しばらく前までは2022年1Qの成長率は約4.5%が見込まれていたのに、最近は予想が急降下しているようです。
コロナ前なら2.85%でも力強い景気ですが、2021年から比べると景気の鈍化は大きいです。
2022年が深まるにつれて景気の鈍化が明らかになって、5回も利上げができないという声が出始める気がしています。
市場の投資家は織り込んだ5回の利上げ予想を撤回するときに、一時的に米国株に上昇の余地が生まれるかもしれません。