今から1ヶ月ほど前、11月のアメリカの小売売上高があまり良くなかったと聞いて「既にアメリカの景気はピークを超えたのではないか」という記事を書きました。
>>低迷した11月のアメリカの小売売上、今景気サイクルのピークは過ぎたか(2021年12月17日)
今回の記事はその続報になります。
昨日、12月のアメリカの小売売上高が発表になりましたが、11月以上に良くない結果になりました。
小売売上の結果はモノの消費に偏っていると言われているので、アメリカの消費を確認するなら月末の個人消費の発表を待たないといけませんが、今回も低迷した小売売上高は嫌な兆候の1つとなりそうです。
この記事のポイント
- アメリカの12月の小売売上高は、前月比マイナス1.9%(前月比年率マイナス20%)で大きく落ち込んだ。
- 小売売上だけから判断すると、アメリカの景気拡大はピークを超えた可能性が高まった。
低迷した12月のアメリカの小売売上
10月までは力強かったはずのアメリカの景気ですが、それ以降はどうも雲行きが怪しいです。
12月の小売売上はかなり悪い結果となりました。
- 予想:前月比-0.1%
- 結果:前月比-1.9%(前回+0.2%)
「前月比でマイナス1.9%」というとピンとこないかもしれませんが、1年間このペースが続いたとすると(年率では)マイナス20%となるような数字でした。
また、売上高の中にはインフレで上昇した分の値段が含まれているので、消費がどれだけ力強くなっているかを知るためにはインフレが上昇した分を売上から差し引かなければなりません。
インフレも考慮した場合、(実質の)小売売上は以下の図のようになります。
12月の小売売上高の(実質)成長率は前月比年率でマイナス20%とかなり悪い結果になってしまっています。
アメリカの景気はピークを超えた模様
ここまで悪い結果が出ていれば、アメリカの景気拡大は既にピークを超えたといって良さそうです。
今回の小売売上高の結果を受けて、2021年10-12月期の予想GDP(GDPNow)も急落して、5.0%にまで落ち込んでいます。
普通なら前期比で5.0%の成長率はかなり高いのですが、少し前までこのGDP成長率予想は9.7%だったので、大きく下方修正されたことになります。
GDP成長率がこの予想通りの数字に落ち着くと、アメリカの景気は21年4-6月期まで好調で、その後は景気拡大が鈍化しているということができると思います。
さいごに
この記事では21年12月のアメリカの小売売上が低迷したことについて書いてきました。
かなりの大きな低迷だったので、既にアメリカは景気のピークを超えたことを印象づける内容になりました。
景気のピークを超えているなら、それは投資家にとって何を意味するでしょうか。私がパッと思いつくことは、次の3つです。
- まだ米国株に投資できる時期だが、いつでも売れるように心の準備をして市場を観察する必要がある。
- どの企業も2022年は成長率が鈍化しやすくなる中で、きちんと利益成長ができる株を探す必要がある。
- アメリカの景気が急減速すれば、もしかすると2022年のアメリカの利上げはほとんどできないかもしれない。
特に2つ目の利益成長については、イメージ先行で投資するのではなく、今後の業績予想をみておいたほうがいいかもしれません。
例えばGoogleの親会社のアルファベットは成長株のイメージですが、2022年は好調だった前年の反動で一株利益は一桁に留まると見られています。一方で、コロナが収束すれば景気回復が見込める旅行関連銘柄がこれから大きい成長を迎えるなど、企業のイメージと業績がずれやすくなっています。
投資のチャンスは、こうした「ズレ」のおかげで2022年に予想以上に利益成長ができる企業にあると思っています。