新しい月になり、前月の経済データが始まったので、この記事ではアメリカの製造業の景気を確認していきたいと思います。
ISMから製造業の景気指数が発表されました。
景気指数は前月に比べると下がりましたが、それ以上に気になったのは「(原材料などの支払いの)価格指数」と「入荷遅延指数」の2つの項目が大きく減少していることです、
2021年にアメリカの物価が急激に上昇しているときには、製造業は原材料の高騰や入荷の遅れに悩まされてこれらの指数が大きな値になっていたのですが、2021年12月に大きな減少が見られました。
まだ製造業だけに見られた現象かもしれませんが、インフレ圧力は2021年12月に大きく弱まったように見えます。
この記事のポイント
- ISMのアメリカの製造業への景気アンケートでは、原材料の高騰と入荷遅延が解消されている様子が見られた。
- これらの2つは2021年のアメリカの物価上昇につながっていた要因の1つ。アメリカのインフレ圧力の一部は弱まっているように見える。
インフレ圧力が弱まった2021年12月の製造業
2021年12月のISM製造業指数(製造業が感じた景気を数値化したもの)ですが、予想以上に前月より数値が下がっていることがわかりました。
- 予想:60
- 結果:58.7(前回61.1)
この数字は50を超えていれば景気は拡大していると見るので、12月も力強く製造業は景気拡大しているようですが、勢いは弱まっているようです。
ただ、この数値が下がったからといって必ずしも景気は悪いと悲観することはなさそうです。
詳しく内訳を見てみると、数字を下げている原因は冒頭でも触れた「入荷遅延」と「価格」の2つの指数が全体を押し下げているからです。
この2つの大きな低下で、アメリカのインフレ圧力はいくらか弱まるはずです。
ただし、これでアメリカのインフレの問題がすぐに解決することはないとも思います。理由は以下の記事でも書きましたが、家賃など1年以上遅れて物価上昇が起こるものもあるためです。
2022年は原材料などの価格の伸びが緩やかになるものの一部の根強く残る物価上昇のために、2021年ほどではなくても4-5%程度の高い物価上昇率が続く気がしています。
景気はまだ心配ない
以前、私は2021年にアメリカの景気がピークをつけたら坂を転がるように景気が鈍化するかと思っていたのですが、今では景気鈍化はゆっくり起こる可能性も探っています。
新型コロナウイルスからの回復の時期の違いで、今のアメリカの景気は中国から数ヶ月遅れているのですが、先行する中国の景気はギリギリ持ちこたえていてこの数ヶ月はわずかに復調しているようにすら見えます。
以下のグラフは少し作り方を工夫して、中国の製造業の景気を4ヶ月分だけ右にずらしてアメリカのISM製造業指数と重ねたものですが、この2つはピタリと一致します。
(つまり、中国の景気はアメリカに4ヶ月先行しているようです)
先行する中国の景気は粘り強く復調しているので、2022年のアメリカも景気拡大ペースは落ちても簡単には景気が縮小するようなことにはならないだろうと思います。
さいごに
この記事では2021年12月のアメリカの製造業の景気指数を見ていきました。
今回のデータからわかったことは、原材料の高騰と仕入遅延が予想以上に解消されてインフレ圧力が弱まっていることです。
2022年は家賃の高騰などの物価上昇要因は残るのでインフレの問題は完全には解決されませんが、素材価格の上昇が緩やかになって供給遅延も解消され始めているので、2021年よりは物価の上昇は緩やかになるはずです。
また、これらのデータを見るまでは素材株もまだ2022年に投資できると思っていたのですが、投資の伸びしろはかなり小さくなってきたのかもしれません。
2022年の有望な投資先(個別株を除く)
- 米景気拡大ペース鈍化前:コモディティ、石油株、
素材株、米国株指数(S&P500など) - 米景気拡大ペース鈍化後:生活必需品株、ヘルスケア株、ゴールド、少額の現金
ちなみに、原油やエネルギー価格の比重が大きいコモディティETFならまだ投資はできると私は思っています。
アメリカよりも景気回復が遅れている多くの他の国では景気回復の途中でエネルギー需要はまだ強い上に、新型コロナウイルスの流行が収まれば交通量・輸送量も増えてエネルギー消費量も増えると思うからです。