米国株の価格を釣り上げてきた金融緩和の縮小が来月にも始まろうとしています。
市場の動きを見ている限り、国債と住宅ローン債権の購入縮小(テーパリング)は今年11月開始、政策金利の引上げ(利上げ)は来年6月開始が有力候補になりそうです。
この予想が外れる場合は、1か月遅れで「テーパリングが今年12月開始、利上げは来年7月開始」になるはずです。
この予定でFRBが金融緩和の縮小を始めるなら、既に市場は織り込んでいるように見えるので大きな混乱はなさそうです。
この記事のポイント
- 市場の利上げ予想は22年6月にまで前倒しされた。ただし、22年7月利上げを予想する声も根強い。
- テーパリングは21年11月か12月から始まり、8ヶ月間かけて規模縮小が終わる予定。それと同時に利上げが始まると市場は見てる模様。
- このペースでテーパリングと利上げが起こるなら、織り込み済みに見えるので、2021年と2022年の米国株はそれほど大きく下落しないはず。
「テーパリング11月開始、利上げ来年6月」と考える理由
私は恐らく「テーパリング11月開始、利上げ来年6月」が始まると思っています。
正確には私が予想したことではなく、市場がそのように考えています。
市場の考えは次の3つのことをパズルのピースのようにつなぎあわせると、「テーパリング11月開始、利上げ来年6月」が見えてきます。
- 市場の投資家は(この記事を書いている時点で)2022年6月を予想している。
- 利上げが始まるのは、テーパリングが終わってからという見方が広まっている。
- 金融政策を決める会議(FOMC)の議事録では、テーパリングは開始から8か月かける案が有力。
まず、金利先物市場の動きをCME FedWatchツールというページを使って見てみると、市場の投資家の大半は2022年6月に利上げが起こると予想していることがわかります。
また、テーパリングが終わってから利上げがされるという考えが広まっていますが、テーパリングは9月のFOMCの議事録を見ると以下のような8ヶ月で完了するペースで行われるようです。
もしも利上げが来年6月に起こり、それまでにテーパリングが完了していることが望ましいなら、テーパリングは2021年11月には始まっていなければなりません。
これらを考えると、(少なくとも私がこの記事を書いている時点で)市場は「テーパリング11月開始。利上げ開始はテーパリング終了直後の来年6月」を考えているようです。
変動があるとすれば12月テーパリング開始の来年7月利上げ
もしも予想が外れるとすれば、次にありえるのは「テーパリング12月開始、利上げ翌7月開始」です。
どうもFRBの発言を聞いていると、テーパリングの開始を11月にするか12月にするか、まだ決めかねているようです。
>>テーパリング開始、11月か12月かは未解決-米リッチモンド連銀総裁(ブルームバーグ)
テーパリングの開始時期が11月から12月に遅れれば、利上げタイミングも遅れると思われます。
ただし、この変動は市場の投資家も考慮に入れているようなので、1ヶ月遅れても米国株などの価格にはあまり影響がないと思います。
大きな影響があるとしたら、利上げ予想が6月よりも早まったり、テーパリングのペースが早くなる場合です。
この動きはまだ市場の投資家も織り込んでいないように見えるので、その場合は株や国債は売られる動きが見られると思います。
万が一、賃金上昇率や消費者物価が大きく上昇してしまうと、利上げ予想の前倒しやテーパリングのペース加速につながる恐れがあるので、テーパリングが始まっても雇用統計や消費者物価には引き続き注意が必要です。