2021年10月に入ってから、市場の投資家たちが急に考えを変えてきています。
「アメリカの政策金利の引上げは考えていたよりも、もっと早く始まるはずだ」と見る動きが広まっており、この動きはあまり米国株投資家にとってもよろしくない展開だなと感じてます。
政策金利の引上げ(利上げ)が始まればジワジワと景気も株価も冷やすので、数年かけて株が上がるのを待つタイプの投資家は、これからの米国株にそれほど積極的に追加投資しなくても良いかも知れません。
この記事のポイント
- 直近のわずか1ヶ月で、市場の投資家の利上げ予想が急速に前倒しされている。
- 先月まで市場は2022年12月の利上げを予想していたが、現時点では2022年7月の利上げを見込んでいる。さらに2022年6月利上げの可能性をうかがうような展開。
- まだ、米国株はまだ伸びるというスタンスを私は変えていないが、中長期投資家が米国株への追加投資をするような時期ではなくなってきたと感じる。
わずか1ヶ月で利上げ時期を5か月も前倒し
市場の投資家は急速に利上げ予想を前倒ししてきています。
ほんの1か月前まで、市場の大半は「22年12月に利上げがはじまる」と予想していたのに、たった1か月で利上げ時期の予想が7月にまで早まっています。
次の図は先月(灰色)と今月(紫色)で、いつから利上げが始まるのかの市場予想をグラフ化したものです。
データ出典:CME
先月(灰色)は2022年12月から利上げ予想が50%を超えていることから、「利上げは2022年12月から」と市場が考えていたことがわかりますが、今月はそれが2022年7月にまで前倒しされています。
それどころか、2022年6月の利上げ開始を考えている投資家も4割ほどいて、2022年6月の利上げの可能性も探っているような印象すらあります。
利上げ予想前倒しはインフレを警戒か
利上げ予想が前倒しされている理由はハッキリとはわかりませんが、予想以上に長引いているインフレを警戒している可能性はあります。
最近では、アメリカの中央銀行FRBの中にも、高いインフレが一時的ではない可能性があると警戒している人がいます。
>>セントルイス連銀総裁、米国の高インフレが続く確率は50%(ブルームバーグ)
インフレが高くなった場合には、利上げをして物価の上昇を抑えてきた歴史があるので、最近のアメリカの高いインフレ率から早期利上げの可能性を感じ取っている投資家が増えているのかもしれません。
投資家への影響
利上げが早まると何が問題になるかですが、いつか来ると言われている米国株の下落の時期が早まることを心配しています。
近年の米国株は低い金利を背景に高い株価がついていましたが、利上げされて低金利の時代が終われば、株価はどこかで下落をするはずです。
予想PERと呼ばれる割高度を見ていると、S&P500は過去10年平均から約3割ほど高い価格がついていても、低金利ならその高い株価が妥当だと言われてきました。
そう考えると、2022年から利上げが進んで株価が支えられれなくなると、2023年や2024年に30%程度の下落があっても不思議ではありません。
中長期投資なら追加購入は慎重に
「2023年や2024年に大きな株価の下落があっても不思議ではない」と言ったように、2022年に利上げがあっても直ぐに株価は下落しないと思っています。
過去のアメリカで利上げから不況(景気後退)まで何ヶ月かかっているかを以下の記事で調べたのですが、40か月以上もかかっていることが分かっています。
最初の利上げから景気後退までの期間は、思っているよりも長い。
政策金利の引き上げられ、最終的に景気後退につながれば米国株に大きな下落があるのではないかと心配しています。しかし、実際に調べてみると、政策金利を引き上げてから景気後退になるまでは、かなりの長い期間がかかっていることがわかります。
今回のFRBは2%超えのインフレを認めたり、利上げ開始のタイミングが過去よりも遅いことを考えても、まだしばらく株価が伸びる時間はあると思います。
なので、利上げ予想が前倒しされているからと言って、すぐに手持ちの米国株を売る必要はないとは思います。
ただ、今後数年のどこかで来るはずの株価の不調を考えると、数年保有することを考えている中長期の投資家にとっては、そろそろ追加投資は控えても良い時期が近づいているかも知れません。