8月のアメリカの消費者物価(インフレ率)の発表がありました。
最近このブログでは「短期的には物価は下がりやすくなっているので、インフレに強い資産はまだ持たなくていいはず」と言ってきましたが、予想通りで一安心しました。
インフレの上昇圧力が弱まっていることは、消費者が高いものを買わなくなってると見れば経済にはマイナスなのかもしれませんが、投資家にとってはそれほど悪くありません。
米国株はアメリカの低金利を背景に高値がついていますが、インフレ圧力が弱いなら低金利の期間もまだ伸びて、また少し投資できる時期も伸びたように感じます。
一方で、弱まったとは言え長期的にインフレ圧力が上昇する恐れはまだあるので、これからも消費者物価の動きには注意していこうと思います。
この記事のポイント
- 8月のインフレ圧力は弱まっている様子が見られた。短期的に上昇が続いていた中古車や航空券の価格は下落に転じていることが原因。
- 短期的だとしてもインフレ率の上昇が和らいでいることは米国株の投資家にとってプラス。
- 一方で、一度上昇すると下がりにくい家賃はまだほとんど上昇していない。アメリカの住宅価格は既にかなり高騰しているので、家賃が上がればインフレ率が再上昇する恐れがある。
物価の伸びが和らいだアメリカの消費者物価
8月のアメリカの消費者物価は予想よりも伸びは小さかったです。
- 前月比:0.3%(予想0.4%、前回0.5%)
- 前年比:5.3%(予想5.3%、前回5.4%)
前月比でも前年比でも前月の数字よりも低下しています。
特に、前年比は2021年になってから毎月上昇を続けてきましたが、はじめて前月を下回ってインフレ圧力が緩やかになっていることがはっきりと見えてきました。
少し面白いのは生産者物価(卸売価格)と消費者物価の違いです。
普通の景気なら卸売価格が上がれば、企業は値上げをして遅れて消費者物価も上昇するはずなのですが、今回は先に消費者物価が下がってきています。
今回の景気では何か特別な事情があるようです。
2021年に物価を押し上げていた短期的な要因が薄れた
2021年の前半までの物価上昇を思い出してみると、新興国ではウイルスの感染拡大で半導体の生産が満足にできずにアメリカの中古車の価格が上がる一方で、アメリカではワクチン接種が進んで人々が外出を初めてホテルや航空券の価格が上昇していたという背景がありました。
しかし、8月の物価ではそれらの物価上昇要因に変化が見られたようです。
詳しい内訳を見てみると、この1年間で32%も価格が上昇していた「中古車」が、前月比でマイナス1.5%(年率でマイナス17%)と大きく下落しています。
その他、航空券も前月比でマイナス9.1%(年率マイナス68%)と大きく物価を下げています。
アメリカの中央銀行FRBをはじめ、2021年の物価は一時的だという主張を繰り返していた人々の言う通りの動きが始まったようです。
インフレ圧力が弱まったことで投資への影響
短期的だとしても、インフレ率の上昇が和らいでいることは米国株の投資家にとっては良いことだと思います。
冒頭でも話した通り、インフレ率が弱まるなら投資家に優しい低金利の時代が少しでも長続きするからです。
問題は、インフレが本当にピークをつけて下落を続けていけるかです。
インフレには賃金や家賃などのように、一度上昇すると景気後退以外ではほとんど下落しない「長期的なインフレ要因」があります。
以下は、アメリカの住宅価格の伸びを示したものですが、前年比+18%とかなり強い上昇を今もなお続けています。
それでも、8月の消費者物価指数の内訳では家賃の上昇は前年比2.1%しか伸びていません。
時間をかけて家賃などの長期的なインフレ要因が伸びてくれば、再びアメリカの消費者物価が上昇する可能性があると私は思っています。
今はインフレ率は低下する傾向にありますが、どこかでインフレに強い投資をしかけるチャンスは巡ってくるだろうと思っています。