2021年のはじめの頃、アメリカはワクチン接種が進めば力強い景気回復が始まると思っていました。
そして実際に3月から4月にかけてアメリカで消費が急激に伸びて、力強い景気回復が始まりました。
ただし、当初は考えてもみなかったのですが、この景気回復はかなり短く終わり、急減速する恐れもあるんだという考えを最近になって持ち始めました。
この記事のポイント
- アメリカでは高いGDP成長率が続くが、GDPの多くを占めている個人消費は既に2021年3月から伸び悩んでいる。
- 消費はコロナ前を大きく超えている一方で、コロナで失われた雇用の大部分はまだ回復していない。つまり、今までの個人消費は現金給付頼みで本来の実力以上。
- 雇用の回復が鈍いままなら、今後は個人消費の伸び悩み、GDP成長率も急減速する恐れがある。
- まだ可能性はかなり低いが、経済成長率の低迷が明らかになれば、アメリカは再び現金給付に動くかもしれない。
経済成長の急減速もありうるアメリカ
2021年6月までアメリカの経済は、コロナの低迷を抜け出してV字回復をしているように見えます。
上の図を見る限りアメリカの景気はかなり順調なようです。
しかし、GDPの約7割を占める個人消費を見てみると、どうも怪しい影がちらつきます。以下はアメリカの毎月の個人消費をグラフ化したものですが、3月から成長が止まっているようです。
そもそもですが、今までトランプ政権とバイデン政権の現金給付で消費が支えられてコロナ前を超えるV字回復を実現できていただけで、本来の景気はもっと弱いのかもしれません。
次のグラフはコロナ前後の雇用者数の変化ですが、コロナで失われた雇用の大部分はまだ戻っていません。
今までアメリカは3回の現金給付の蓄えと、特別に上積みされた失業手当が消費を支えてきましたが、それらは一時的なお金なのでこれからは雇用が伸びないと個人消費を維持できません。
現金給付も失業手当も今後は期待できないので、これからは雇用の伸びが続かないと個人消費が維持できず、アメリカの経済成長は急減速するシナリオも将来像の1つとしてありえる気がしています。
近い将来に現金給付も
ここまでの記事で雇用が回復しないで現金給付の効果が落ちたら、アメリカの景気は予想に反して急減速する恐れもあることを書いてきました。
もちろん、これから雇用が順調に回復するなら特に問題は起きないと思います。
最近の雇用の伸びは、新型コロナウイルスの感染が拡大すると鈍化してしまう傾向が見られているので、今後の感染拡大をどこまで食い止められるかが鍵になりそうです。
また不幸にも雇用が伸び悩んでしまった場合でも、現金給付などの景気刺激策が打ち出されるなら再び景気は回復するとも思っています。
株価が下落する前にバイデン政権が迅速に景気刺激策に動くなら、経済成長が急減速しても大きな株価下落にはつながらないはずです。
まとめると、このような動きを想定しています。
- 今後雇用が回復するなら、経済成長の鈍化はなし。今年ほどではないものの、2021年も順調に経済成長。
- 雇用が長く伸び悩む場合でも、バイデン政権が先手を打って早めに刺激策を打ち出すなら景気は回復。
- 雇用が長引きバイデン政権も動きが遅い場合、投資家(市場)は株価を下げて刺激策や金融緩和を催促する。
まだだいぶ可能性は低い話ですが、雇用が伸びずに景気回復がかなり鈍化する場合には4度目の現金給付もある気がしています。
もしも現金給付の4度目が発動される噂が流れた場合、過去3回の動きを見ていると株価は上昇するはずですが、一方で、現金給付はインフレ率を大きく上昇させる負の効果もあることにも注意が必要です。