あと1週間ほどすれば8月も終わり、8月のアメリカの経済の好調と不調を現すデータがたくさん発表されます。
しかし、ほんの一部の経済指標は既に8月分のデータが発表されているので、それを見ながら8月のアメリカの景気はどうったのか、簡単に振り返っておこうと思います。
この記事で見ていくのは、IHSマークイットが発表した総合PMI(製造業もサービス業も含む米国企業の景気の強さ)です。
8月は景気が拡大していることは確かなのですが、5月をピークに3か月連続で景気の強さは弱くなっていることが数字から読み取れました。
この記事のポイント
- IHSマークイットが発表した8月のアメリカ企業の景気指数が発表された。結果は予想よりも景気が弱かった。
- 景気の拡大は続いているものの、その勢いは3か月連続で弱まっていることが示された。
- このまま景気刺激策がなければ、恐らく2021年5月が景気拡大のピークだったことになる。
景気拡大のペース減速が鮮明になってきた米国
IHSマークイットが毎月まとめているアメリカの企業への景気アンケートの集計結果が、今月も発表されました。
この経済指標の良いところは、発表がかなり早いことです。
他の経済指標は9月になってからようやく8月分のデータが公開されるのですが、IHSマークイットの8月分のデータは8月末に発表されるので、いち早くアメリカの景気を知ることができます。
さて、その2021年8月の結果ですが、なにかの変調があったのか、景気拡大にブレーキでもかかっているのかと感じるような数字でした。
- 結果:55.4(前回:59.9)
- 予想:58.3
この結果の見方ですが、数字が50を超えていれば景気が拡大していることを意味しています。
今月は55.4だったので、アメリカの企業の景気は拡大していたことになります。
しかし、問題は景気拡大の勢いです。この数ヶ月間のマークイットの発表した数字をグラフにしてみると、数ヶ月前にあった景気の強さは既に感じなくなっています。
IHSマークイットのコメント
さて、この数ヶ月アメリカの企業の景気が優れていないようなのですが、今月は何がまずかったのでしょうか。
調査したIHSマークイットのコメントを追いかけてみると、以下の点が浮かび上がってきます。
- 8月のアメリカ企業の景気が急速に鈍化した背景には、新型コロナウイルスの変異株(デルタ株)の感染拡大が広がりがある。
- 消費者向けのサービスの伸びの鈍化が見られている他、幅広い企業でサプライチェーン(物資の調達)と雇用に不満を抱えている。
まず8月の景気拡大の減速の背景にあるのは、新型コロナウイルス(デルタ株と呼ばれる変異株)の感染拡大だといいます。
デルタ株の流行で消費者向けサービスの成長が鈍化してしまい、さらには世界中のコロナの感染拡大からサプライチェーン(物資の調達)の遅れで材料不足になり、生産を伸ばせてないことも景気拡大の減速につながっているようです。
(世界の工場では数名がコロナに感染したことがわかるとしばらく工場を止める国もあり、それらの輸入の遅れを通じて、アメリカの企業の材料不足や物資調達の遅れが起こっています)
また満足な雇用もできていないことから、十分なサービス提供にも支障が出ている模様です。
以下、IHSマークイットからのコメントを2つほど追加でひろってみましたが、物資調達の遅れは調査開始以来で最高を記録し、雇用の伸びは約1年ぶりの低水準になったようです。
- サプライチェーン遅延は調査以来で最高を記録。企業は必要な物資のスムーズな調達できていない。
- 21年8月の雇用の伸びは、2020年7月以来の低い水準を記録した。
物資の調達が遅れている場合には仕入れ価格が上がり、人材確保が難しい状況では人件費が上がりやすいので、製品やサービスのインフレが気になるところです。
新型コロナウイルスの感染拡大中は需要の鈍化のおかげである程度はインフレ上昇を抑えてくれるはずですが、8月のインフレがどのようになるのかは9月中旬の消費者物価と生産者物価の発表で確認したいと思います。
さいごに
この記事では、IHSマークイットによるアメリカ企業へのアンケートの集計結果(PMI)の結果を見ていきました。
2021年8月のデータを見てみると、まだまだアメリカの景気は拡大を続けているものの、3か月連続して景気拡大ペースは急速に鈍化している様子が見えてきました。
その景気拡大ペースの減速には、アメリカと世界で広がっているデルタ株が少なからず影響してるようです。
少しだけ気がかりなのが、8月の雇用が20年7月以来の弱い数字だったというIHSマークイットのコメントです。
9月上旬に発表される雇用統計(8月分)が弱ければ、FRBはアメリカの景気回復に慎重になり、議論が続けられている金融緩和の縮小に対しても慎重になってしまうかも知れません。