日本人に根付く投資への恐怖心
最近、テレビはどのニュース番組もワイドショーでも年金の話をしています。年金では不足する生活費を補うために、現役世代の投資や老後の計画的な資金の取り崩しを提言した金融庁の報告書が炎上しているようです。
報告書はよくまとまっているように思いますが、それを取り巻く人々に突っ込みどころが満載で全て拾うと論点がブレそうなので、一番気になったことに焦点を絞って書きたいと思います。
普段から投資をしている身として一番気になったのは、今回の件で明らかになった一般の人が抱いている極端なほどの安定志向です。
人の発言は、注意深く聞くとその人の信じていることが透けて見えるものですが、テレビの取材にコメントを求められた一般人、番組の司会者発言だけでなく、経済の専門家を名乗るコメンテーターですらも「投資は危険」という考えが、見え隠れしています。
いくら金融庁がデータを使って論理的に説得しても、投資ブロガーが「投資をしない人は負け組になる」と感情的に煽ったとしても、こういう人たちは投資への恐怖心を持っている限り、投資はやらないんだろうと思います。
人間、というか生物は危険だと直感的に感じているものに、自ら飛び込んでいくようにはできていないからです。危険を回避しない種は、とっくの昔にその生物は絶滅していたはずですから、恐怖心を取り除かないことにはどうにもなりません。
投資と自転車の共通点
一般の人にとって、投資を1回事故ったら即死につながる高速道路での運転のようなものだと思っているかもしれません。
ただ、実際に投資をやってみて実感するのは「まともな投資」というものは、1回の事故で死につながる自動車の運転よりも、自転車を乗るような感覚に近いです。自転車を乗れるようになることと、投資でうまくいくようになることは、思いの外、共通点が多いです。
- うまく乗れるようになるために、練習で何度も失敗をする
- うまく乗れれば、歩くよりも断然早く目的地につく(貯金よりも早く資産を築ける)
- 無理にスピートを出しすぎると、転んで怪我をする(儲けようとリスクの高い投資に無理に手を出すと、失敗をする)
投資をやったことがない人が抱く恐怖は、自転車にまだ一度も乗ったことがない子供が抱く恐怖と同じです。はじめは「怪我をするんじゃないか」と思って、恐る恐る乗り、そして案の定失敗をします。
でも、そこで止めたら自転車も乗れなかったはずです。投資も自転車と同じで、できるまで取り組むかどうかです。
あきらめたら、そこで試合終了です。
自転車が乗れるようになるまで人通りの少ない道で練習するのと同じように、投資も何回失敗しても良いように生活費以外の余剰資金で少額でずつ練習する点も同じです。
それとどうしても自転車が乗れない場合は時間をかけて歩けばいいように、投資をやってみてどうしても自分ではうまくいかないとわかった場合は、投資を諦めて、収入を増やす方向に努力しても良いのです。留学、転職、副業、起業、フリーランスなど、年齢関係なく他に手はたくさんあります。
投資を怖がる日本人の根本の問題
ところで、自転車を乗れるようになった記憶は不思議と大人になっても覚えているものです。
誰もが何度も何度も転んで試行錯誤を繰り返していくうちに、ようやく乗れるようになった達成感もあるんでしょうが、自転車に乗れるようになって不思議だなあと気がついた事があります。
なんてことないです。みんながみんな気づいていることです。
今から、その何でもないことを、あえて声を大にして言います。いいですか、行きますよ。
「自転車はスピードを出したほうが転ばないのです。」
はい、みんな知っていることですね。学生時代の帰り道に、歩いている友達の歩調に合わせてゆっくり自転車をこごうとしても、ふらついてうまく運転できなかった経験をした人は多いと思います。
ただ、これはとても不思議な体験です。特に考えずに生きていると、何もしないことこそ安全の秘策ように錯覚しますが、自転車はそうではありません。何もしないと不安定になり転びます。動いたほうが安定するのです。。
じっとするよりも、動くことで安定が取れるものは自転車以外にも結構多いです。石器時代には、狩りに出ずに洞窟でじっとしていれば飢え死ぬだけで、リスクを背負ってでも食料を確保しに外に出ることで命をつないでいました。もともと世の中は、何もしないリスクで溢れているのでしょう。
ちなみに冒頭で、年金問題で私が気になったのは「一般の人が抱いている極端なほどの安定志向」だと言いましたが、日本人の根本にある問題は、この何もしないリスクに気づいていないことだと思っています。
これまで私がどれだけ、投資が怖くないものだと力説しても、実際に投資をやってみないことには何も始まりません。無いもしないことが安全だと思っているうちは、危険じゃないとわかっていても、まだ投資には手を出さないでしょう。
たしかユニクロを手がけるファーストリテーリングの柳井氏だったか、「この世の中は坂道だ。何もしなければ下っていく」という旨の発言をしていたのを覚えています。ステージに登壇する姿しか見たことはありませんが、きっと主体的に生きる人なので、どこかのタイミングで気づいたのでしょう。
学校で教育を受け、企業に就職し、定年まで60歳まで労働者として勤め、残りは古い年金制度に頼って生きる人生設計は、少し時代遅れかも知れないときっと多くの人は気づいています。
それを知りながら、投資が怖いから年金制度や政府を批判するよりも、今からでも投資の練習をすればいいと思います。大丈夫です、私も数え切れないくらい失敗しましたが、死にはしませんでした。割と元気に生きています。
大切なことは全て自転車から教えてもらった
最後に、もう一つ自転車と投資の共通点を忘れていました。一度身につけたら、一生忘れずに役立つスキルだということです。
こう見ると大切なことは全部、自転車から教わってますね。もっとちゃんとしたストーリーで書けば、「大切なことは、全て自転車から教えてもらった」というタイトルの立派な安っぽいビジネス本ができそうです。
少なくとも私は売れる気配を感じませんが、興味がある一風変わった編集者の方がいらっしゃれば、twitterでも何でもご連絡下さい。お待ちしています。
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