この記事を書いている2021年は米国株は長期投資家にとってかなり割高だと思います。
数ヶ月から1年程度でリターンを得るタイプの投資家は別として、今後10年米国株に寝かせっぱなしの投資をするようなら、警戒したほうが良いかも知れません。
この記事のポイント
- 超長期的には米国株は平均で約5%/年のペースで株価が上昇してきた。
- しかし、米国株が割高な年に投資した場合には、株価の上昇率は平均を下回る。そして2021年の米国株は歴史的かなり割高な状態。
- 2021年からの長期投資の対象先として米国株はあまり旨味がない。それでも米国に投資するなら、米国を含めた世界株を選択肢に入れるのが良いと思う。
過去150年に比べてかなり割高な米国株
2020年2月に米国株が大きく下落をはじめる直前に、以下のような記事を書きました。
2020年、これからの米国株への追加投資を控えるべき理由
2020年も米国株は強いです。2020年2月はS&P500は歴代最高値を更新しています。ただし、さすがに高くなってきた感じがします。S&P500のPERは25を超えて割高な水準です。そして、今この状態で投資しても今度10年間で高いリターンが期待できないと過去のデータが示しています。
米国株は長期的に平均5%で毎年株価が上昇するのですが、割高な年に株を買ってしまうとその後の10年間の投資リターンが下がる傾向が見られ、そして2020年2月時点で米国株は既にかなり割高だ、というのが上記の記事の趣旨です。
その記事から1年半が経過したので、今日(21年8月)時点で手に入るデータで更新をかけて、再び米国株の状況を確認していきたいと思います。
さらに期待できるリターンが低くなった2021年8月の米国株
次のグラフは「ある年の年初の米国株S&P500の割高度(PER)」と「その後の10年間のS&P500の株価上昇率(年率)」をグラフにしたものです。
※上記のPERは「S&P500の株価」を「過去12ヶ月のS&P500の一株利益」で割ったもので、こちらのサイトから必要なデータを取得しました。
このグラフからは、投資をした時の米国株が割高であればあるほど、その後の10年間のリターンは下がる傾向があることがわかります。
特にPERが25以上の割高な年に絞ると、長期平均の米国株の株価上昇率5%を下回ってマイナスになる年も多く見られます。
そして、2021年時点のPER(割高度)の状況も調べてみると32-34を前後していて、以前記事を書いた2021年2月時点のPER25よりもはるかに高くなっています。
日付 | S&P500のPER(割高度) |
---|---|
2021年8月 | 34.6 |
2021年7月 | 34.0 |
2021年6月 | 33.1 |
2021年5月 | 32.5 |
2021年4月 | 32.3 |
グラフに図示してみると、以下の灰色が現在の米国株S&P500の割高度です。
この状況で投資したとしても、10年後のリターンはあまり期待できなさそうです。
さいごに
この記事では、米国株の割高度と株価上昇率の関係から、21年8月時点で米国株に投資しても長期投資で株価が伸びない恐れがあるという話をしてきました。
以前、同じような記事を2020年2月に書いた時にはPER(割高度)は25だったのですが、今ではPER35手前まで上昇して状況は悪化しています。
たしかに、現時点ではまだアメリカは大規模な金融緩和で景気も株価も支えられている状態なので、今後1-2年程度は株価が高くても維持できると思われますが、10年以上を見越した長期投資家は既に警戒をしたほうが良いかも知れません。
今の状況で長期投資するなら、「投資できる資金のすべてを米国株に傾けることは今はしない」「米国以外にも同時に投資できるETFに長期投資する(例:VT)」などの工夫がいるかも知れません。