この記事では先日発表されたマクドナルドの決算を見ていきます。
2021年4-6月期は前年までコロナの悪影響を受けていた企業が次々と好決算を発表していますが、マクドナルドも例に漏れず好調でした。
まだ感染拡大防止のために店内飲食ができなかったり、店舗の開店時間に制限が残っているにも関わらず、マクドナルドの業績は売上は急成長をとげてコロナ前の売上・利益を上回っています。
この記事のポイント
- 2021年4-6月期のマクドナルドの業績はかなり良かった。グローバルの既存店舗売上は前年比で+40%で成長した。
- 前年の業績が悪かったために、成長率が大きく見えているだけではない。4-6月期の売上はコロナ流行前の2019年のどの四半期よりも上回っている。
新型コロナの流行前の業績を超える好決算
21年4-6月期のマクドナルドは売上も一株利益も予想を上回る好決算でした。
- 売上:58.9億ドル(予想56億ドル)
- 一株利益:2.37ドル(予想2.11ドル)
以下で前年からの成長率を表にまとめてみましたが、売上は+57%、営業利益は2.8倍とすごい数字が並んでいます。
もちろん、前年の4-6月期がパンデミックで大きく業績が下がっていたので、その頃を基準にすると大きく成長しているという特殊事情があります。
単位B:10億 | 21Q2 | 前年比 |
---|---|---|
売上 | $5.9B | +57% |
営業収益 | $2.7B | +180% |
一株利益 | $2.95 | +347% |
しかし、「なんだ。前年のデータが悪かったから、高い成長率に見えているだけか」と片付けてしまうと、マクドナルドの力強さを見逃してしまう恐れがあります。
過去の数年間のマクドナルドの売上と営業利益を以下のグラフでまとめてみましたが、今期の売上も営業利益も調べた期間で最高を記録しています。
つまり、今期で既にパンデミック前の業績を超えたようなのですが、まだマクドナルドの店舗では店内飲食が禁止されていたり、営業できていない店舗もある中で、この業績を達成している点にマクドナルドの安定した強さがあります。
テイクアウトやデリバリーなどを強力に進めたほか、マクドナルドアプリの活用で購買頻度を上げ、音楽グループのBTSとコラボしたキャンペーンを打ち出すなどのマーケティングの努力もあって、業績の回復を図っているようです。
既存店舗も急上昇している
マクドナルドのような世界的に大規模に展開している企業では、既存店舗の売上が伸びるているかが調子のバロメーターになっているので、既存店舗売上も確認していきます。
今期の既存店舗売上は文句なしに好調でした。全世界(グローバル)の既存店舗は前年比+40.5%で、今まで投資してきた中でも見たことがないような好調な数字になっています。
前年が低迷していた影響を除くために、2019年と比べた2年間の売上成長率を見てみると、米国で+14.9%、グローバルで+6.9%伸びています。グローバルの2年間の成長率はやや物足りないですが、米国の数字はパンデミックなどなかったかのような好調です。
既存店前年比 | 21Q1 | 20Q1 |
---|---|---|
アメリカ | +25.9% | -8.7% |
アメリカ以外の欧米豪 | +75.1% | -41.4% |
その他地域 | +32.3% | -24.2% |
合計 | +40.5% | -23.9% |
決算発表での発言のポイント
マクドナルドの決算発表を聞いていて、気になった点をさらっと拾っていきます。
マクドナルドの決算発表での主な発言
- 現時点で100カ国にまたがる店舗の80%以上で、配達の注文に対応した。デリバリーの企業もうまく活用しながら進めている。
- 決算発表時点で、米国では70%の店舗が再開されている。新型コロナウイルスの再感染拡大がなければ、レイバーデイ(9月6日)はその数字は100%なるはず。
- 米国とヨーロッパでは人材確保が難しい店も見られるが、米国では改善の兆しがある。政府の特別な失業給付が打ち切られた州では改善の傾向があり、その動きが広がれば状況は良くなると見ている。
コロナが流行してから1年半が経過して、未だにマクドナルドの店舗では満足な店舗業務ができていませんが、世界的に配達を強化することで売上を確保しているようで配達に対応している店舗は世界で80%にもなったようです。
朗報は店舗での営業再開の動きが進んでいることで、米国では感染再拡大がなければ9月上旬にも全店舗で開店の状態にまで回復するようです。
営業再開時に問題になるのは人材確保ですが、マクドナルドの売上規模が大きい米国では改善の兆しが見られているというのも、マクドナルド株の投資家にとっては良い情報です。
ただし、心配なのは現時点で広がりを見せているアメリカでの新型コロナウイルスの再流行です。
都市封鎖(ロックダウン)につながるようだと、マクドナルドの業績回復シナリオが曇ってきてしまいます。
さいごに
この決算では、2021年マクドナルドの4-6月期の好調ぶりについて書いてきました。
まだ世界にはまだ営業できていない店舗や店内飲食が禁止されている店舗もあるのですが、デリバリーに力を入れるなどの工夫を続けて、パンデミック前を超える業績を出しているようです。
さて、このマクドナルドは割高な状態ではあるのですが、5年から10年は売らないような長期投資家なら株を買っても良いのだろうと思います。(反対に、それ以下の期間で投資をするようなら、手を出さないほうが良いかも知れません。数年以内に買うチャンスはどこかで訪れる可能性は十分にあります。)
コロナの困難も乗り越えたように、この企業は状況に素早く対応して利益を生み出す力があります。こうした企業は長期的に株主にリターンを生み出すと思います。
以下は、リーマンショック前の2007年からのマクドナルド株とS&P500のリターンを比較したものですが、マクドナルドはS&P500よりも大きくリターンを出しています。
リーマンショックの不況も新型コロナウイルスの不況も無事に迅速に乗り越えるマクドナルドのような安定した企業への長期投資に限り、それほどタイミングを考えずに買っても良いのだろうと思ってます。