このブログでもたびたび書いているように21年3月から、アメリカの本格的な景気回復がついに始まりました。
しかし、アメリカの金融政策を決めているのは中央銀行FRBは、不景気の間に打ち出した大規模な金融緩和の手を緩める素振りは全く有りません。
>>クラリダFRB副議長、テーパリング協議を始める時期ではない(ブルームバーグ)
>>米ダラス連銀総裁、最初の利上げは2022年の可能性と引き続き予想(ロイター)
少し違和感を覚えるのは、実際にアメリカで力強い景気回復が始まっているのにも関わらず、いつ金融緩和の手を緩めるか議論することすら許されない雰囲気があることです。
FRBのメンバーは「完全雇用」と「平均2%のインフレ率」の目標達成することを経済データで確認するまでは、金融緩和を続けると口を揃えて言いますが、目標に達成したことを確認してから緩和の手を緩めたのでは、景気の行き過ぎの状態を招きかねないと思っています。
- アメリカで景気の本格回復が見られたが、未だにいつ金利を引き上げるか議論にすることすら許されていない。
- 完全雇用と平均2%のインフレ目標を達成するまで金融緩和を続けた場合、目標を上回って景気が過熱する恐れがある。
- 景気が良いのに金融緩和が続いてカネまわりが良い状態が続く場合、市場に資金が流れれば資産バブルになり、経済に資金が流れればインフレを招く。
2021年3月から始まったアメリカの景気
アメリカの景気は、3月から始まったように思います。
クレジットカードでも有名なVisaのアメリカでの決済金額を見てみても、3月の伸びは明らかに大きかったです。
カードの決済金額だけでなく、その他の様々なデータが3月からの景気が良くなっていることを物語っています。
アメリカ企業が感じている景気は3月から上向いています。
>>アメリカの好景気が始まった兆し。米サービス業、3月の景況指数が過去最高を記録。
また景気が良くなったことで、消費者物価も3月から目標値の2%を上回るようになっています。
あらゆるデータはアメリカは力強く景気回復していることを示しているのですが、冒頭でお話したようにクラリダFRB副議長やダラス連銀総裁の発言を聞いていると、未だにいつ金融緩和の手を緩めるかを話し合う段階でもないというようです。
(※FRBのメンバーからは、唯一予想外に大きく不調だった4月の雇用を理由に、金融緩和は続けるべきという声を多く聞きます。)
以前とは異なるFRBのスタンス
この記事で、FRBの政策批判をしたいわけではありません。
FRBの経済の専門家集団なので、私よりも多くのことを知っていて判断力も優れていると思いますが、かつてのFRBと異なる動きをしているように見える点が気になっています。
私の知っている以前のFRBは、目標達成に近づいている段階で金融緩和のペースを減速させていました。そして、目標地点にピタッと止まれるように減速の加減をしていた記憶があります。
一方で、今のFRBは「目標を到達したことを確認してからスピードを落とす」と言っているように聞こえます。このスタンスでは、目標地点を通り越してオーバーランしてしまう可能性があると思います。
過剰な金融緩和が招くもの
私は、FRBがいつかどこかで過剰な金融緩和をしてしまうことを、頭の片隅で心配しています。
景気が良いのに金融緩和をしすぎた場合には、カネまわりが良くなり過ぎてしまいます。あふれる資金が金融資産に向かえばバブルを起こすかもしれません。もしくは、資金が経済や現物資産(不動産・商品など)に向かえば、想定以上のインフレを招く恐れもあると思っています。
今後のアメリカは、FRBが言うように「(1)2%前後のインフレ率で成長を続ける経済」になる可能性もありますが、一方で金融緩和が過剰になるなら「(2)バブル」か「(3)高インフレ」を招く恐れもあります。
以下の記事は21年の3月に書いたものですが、今後のアメリカ経済が上記の(1)から(3)のどれかになるだろうと考えているという内容を書いています。
2022年以降のアメリカ経済と市場が通るかも知れない3つのパターン
株に投資する時には、1年後や2年後の未来を見越して投資する必要があります。この記事では、2022年以降でいくつか起こりそうなパターンを書いて、それぞれのパターンで有利になる投資はどのようなものかを書いておきます。
この記事から2ヶ月がたち、5月現在ではインフレがかなり進んでいることが明らかになってきました。
今のところ、FRBはインフレは一時的で将来は「(1)2%前後のインフレ率に落ち着き、経済が拡大する」と見ているようですが、(3)高インフレの可能性もわずかに負いながら、今後の景気を見ていきたいと思います。