アメリカの21年4月分の雇用統計が発表されましたが、多くの専門家が予想していたよりもずっと雇用の増加は小さかったです。
今回の雇用統計は単純に景気が弱かったと見るのは、少し違うかもしれません。
この記事では、4月分の雇用統計からわかることを書いていきます。
この記事のポイント
- 21年4月のアメリカでの雇用者数の増加は、予想を大幅に下回った。
- 景気を支えるための金融緩和はまだ継続するべきという論調が強まった。これは米国株にとってはプラスに働く。
- 雇用が伸び悩んだ原因の雇用のミスマッチは数ヶ月で解決されるはずだが、長引けば賃金上昇を通じてインフレ率の上昇を招きやすい点に注意。
予想外に小さかった4月のアメリカの雇用の増加
4月のアメリカの労働者の増加(非農業部門の雇用者増加)は、一部では100万人を超えるかもしれないと言われていました。
しかし、5月7日に発表された雇用統計はこの予想を大きく下回る26.5万人にとどまりました。
非農業部門の雇用者増加数
- 予想:97.8万人増
- 結果:26.5万人増(前月は77万人増)
専門家の予想がこれほど大きく外れるのも珍しいです。
4月の企業の景気は良かったので、雇用も順調に伸びていると思っている人も多かったですが、そうではなりませんでした。
4月も米国企業の景気は強かった。製造業・サービス業ともにインフレ圧力が強まっている様子。
4月もアメリカ企業の景気は良かったようです。先日アメリカ企業の製造業の景気は4月も好調だったという記事を書きましたが、製造業だけでなくサービス業も4月は好調だったようです。
たとえば自動車業界では半導体不足などの原材料や部品の調達がスムーズに行えていないなど、満足のいく生産やサービス提供ができていないので、期待されたほど雇用が伸びないかもしれないとはこのブログでも伝えていましたが、私もここまで伸び悩んでいるとは思いませんでした。
伸び悩んだ雇用で早期の金融緩和解除の予想は後退
しかし、雇用が伸びなかったことは、投資家にとって悪いことばかりではありません。
もしも予想通り雇用が急増していたなら、「このままだと景気は過熱してしまうから、金融緩和は早期に縮小されるはず」という予想が投資家から少なからず出ていたはずですが、その予想は後退しました。
不調な雇用統計の数字が発表されてから、6月16日のFOMC(アメリカの金融政策を決める会議)で政策金利を引き上げると予想する投資家はわずかですが減っています。
またアメリカの金融政策を決めるメンバーは、今の雇用の強さでは金融緩和の縮小を開始するには十分ではないという主旨のコメントもしています。
>>リッチモンド連銀総裁、雇用は「一段と顕著な進展」に近づいていない(ブルームバーグ)
アメリカの金融緩和がまだまだ続くという予想が少しでも強まることは、米国株投資家にとってはプラスです。
2020年から大規模な金融緩和で米国株は上昇していますが、その金融緩和がもう少しだけでも長く続きそうな気配に喜ぶ投資家は多いはずです。特に金融緩和の恩恵を受けてきたハイテク株の投資家は、胸をなでおろしていることだと思います。
雇用の伸び悩みの背景にあるミスマッチ
4月雇用が伸び悩んだ原因は憶測の域を出ませんが、企業は求人数を増やしているのに採用に苦労しているという声を色々なところで聞くので、雇用のミスマッチが起こっていた可能性があります。
ざっとニュースを眺めた感じでは、労働者には以下のような事情があるようです。
- ワクチン接種が進んでいるアメリカでも、働き手世代でまだワクチンを摂取を完了していない人がかなりいる。
- 夏までは失業給付の特例措置があるので、急いで仕事を探す必要はない。
- 子供の授業はオンラインで行われていて登校のメドが立っていないため、就業が困難など
上記を見ていると時間が経てば解決するものばかりなので、雇用のミスマッチはいずれ解決して失業率の改善につながると思います。
しかし、企業はすぐにでも人を欲しがっているのに働き手が見つからないとなると、賃金上昇を通じてインフレ率が高まりやしないかと少し心配になります。
4月の雇用統計をまとめると、(1)結果は予想よりも大幅に悪くても、早期の金融緩和解除の予想は交代したので投資家にとってはプラスだった。しかし、(2)雇用のミスマッチから賃金上昇が起きて、インフレ率が上昇しないかは要注意で観察する必要がありそうです。
今ハイテク株を保有している投資家なら、金融緩和が続けば、まだ少し株価の上昇を楽しめるかもしれません。
一方で、私のようにインフレに強い投資先にも手を広げている投資家にとっては、まだインフレの投資テーマは続けられそうだと確認できる雇用統計になりました。