アメリカ企業の景気は3月にかなり上向いたようです。
既に、以下の記事でアメリカ製造業が感じている景気は37年ぶりの強さだったことを伝えました。
アメリカ製造業の景況感、37年ぶりの高水準に
この記事では、アメリカの製造業の景気を知るために、ISM製造業指数という数字を見ていきます。4月1日に発表された最近のアメリカ製造業の数字を確認すると、やはりインフレ率の上昇を予感させるような内容になっていました。
それから数日遅れて、米サービス業の3月の景況感も発表されましたが、こちらは統計開始以来の最高値を記録するほどが景気が強かったです。
2021年はアメリカで37年ぶりの好景気が予想されていますが、好景気は既に始まったのかも知れません。
この記事のポイント
- 3月の米国企業の景気はかなり強かった。ISMの集計では製造業の景況感は37年ぶりの高水準、サービス業の景況感は1997年開始以来の最高値を記録した。
- 2021年のアメリカは37年ぶりのGDP成長率が予想されているが、既に好景気が始まった兆しが出ている。
- 一方で、製造業もサービス業もほとんどの業界で仕入れ価格が上昇していると回答している。一時的な物価の上昇が、今後の懸念材料。
サービス業も強さを見せはじめたアメリカ
ISMは毎月上旬に、米国企業の購買担当者にアンケート調査と集計をして、企業が感じている景気をデータ化して発表しています。
50を上回っていれば景気が拡大していることをISM景況指数示すのですが、4月1日に発表された3月分のサービス業の総合景況指数は63.7と前月から大きく上昇しました。
3月のこの数字は1997年に統計が始まって以来、最高値だったようです。
>>米ISM非製造業景況指数、3月は過去最高-受注と業況が快調(ブルームバーグ)
サービス業好調の要因はコロナの制限解除
3月に米サービス業の景気が上昇した背景には、アメリカで新型コロナ感染対策のための制限のいくつかが解除され始めていることがあげられます。
アメリカでは1月上旬にピークをつけてから、新規感染者の拡大を抑えてきました。
そして、少しずつコロナの制限も解除されて経済も回復の軌道に入りつつあるようです。
企業の景気を調査したISMによれば、今回の米サービス業の強い景況感は、コロナで抑え込まれていた需要が回復しはじめたことが要因と説明しています。
今回調査した企業のコメントから、新型コロナウイルスのための制限が解除されはじめたことで、今まで抑え込まれていた多くのサービスへの需要が戻ってきたことがわかる。
サービス業でも仕入れ価格の上昇が見られた
アメリカの企業の景気が良いのは、米国株投資家にとって、とても良いことです。
しかし、ISMの製造業景況感の記事でも書きましたが、サービス業でも仕入れ価格が上昇していることが少し気になります。
仕入れ価格が上昇している原因は、サプライチェーン(仕入・生産・物流・販売までの流れ)の混乱と言われています。
具体的には、次のような要因で各企業の価格が上昇しています。
- 仕入;原材料の不足(仕入れ先企業の生産能力が落ちている)
- 生産:世界中のコロナ流行で、生産能力に制限。業界によっては、一度落とした生産を増やすには時間がかかる。
- 物流:コロナで物流需要が拡大して人材不足&人件費上昇、悪天候
仕入れ価格の上昇は世界でコロナが収束すれば改善されるはずですが、製造業がアメリカ国外に工場を持っていたり、サービス業がアメリカ国外から物資を仕入れている場合が多いことは注意しておいたほうが良いと思います。
つまり、アメリカでワクチン接種が進んで景気が回復したとしても、しばらくはアメリカ以外の国でコロナの感染が続くことが予想されるので、アメリカでの需要が強くても仕入先の海外の生産能力が低い状況がおこり、一時的でも価格が上昇しやすい時期が続きそうです。
まとめ
この記事では、アメリカの製造業だけでなくサービス業も3月から景気が回復してきたことを書きました。
幅広い業種で景気の改善を感じていること、コロナで抑えられていた需要の回復が見られていることから、2021年に予想されているアメリカの好景気が始まった可能性があります。
同時に心配されるのは、アメリカの一時的なインフレ率の上昇です。既に製造業もサービス業でも仕入れ価格が上がっていると回答している割合がかなり上昇しています。
アメリカでワクチンの接種が進んで需要が戻ってきても、コロナに苦しんで生産能力が伸び悩む国からの仕入れに頼っている場合は仕入れ価格がさらに一時的に上昇する可能性もあります。
私は、1970年代のように消費者物価が前年比5〜10%を記録するような高インフレがアメリカに起こるとは思っていません。インフレ率が上昇するとしても、一時的なもので済むとは思っています。
しかし、もしも5%を超えるようなインフレになると、企業はインフレを上回る利益成長をしたり、インフレ率以上の配当増加をすることが難しくなるので、株価は低迷する恐れがある点に注意したほうが良さそうです。
上のグラフのように株に優しいのは低インフレの環境です。アメリカの好景気は嬉しいですが、インフレ率の上昇には注意が必要です。