石油株や航空株を持っている人はこの数週間、なんだか株価が低調だなと感じていると思います。
恐らくですが、今回の下落は「予想ほどワクチン接種が進んでいなく、景気回復が順調に進まない国が多く出てくる」ことを投資家が想定しはじめた下落のような気がしています。
2020年11月からファイザーやモデルナなどが開発したワクチンのニュースを聞き、日常生活が戻ってくる期待が世界中で膨らみましたが、今のところワクチンを順調なペースで摂取できているのはイギリスやアメリカなどのごく一部の国だけです。
それ以外の多くの国はワクチン接種が進まず、これからのコロナ感染再拡大もありえる状況です。そうなればその国の景気は再び悪化するので、景気に左右される株は感染拡大の懸念が出るたびに短期的に苦しくなるかも知れません。
少し気になるのは、コロナからの景気回復を見越した投資とひとくくりにされるホテル株・航空株・石油株への投資でも、ワクチン接種のペースが国ごとに大きく違うので、業績回復のペースも違うのではないかということです。
この記事のポイント
- 新型コロナウイルスのワクチンは開発されて接種が進んでいるが、それでも世界のほとんどの国では感染拡大を止めるまでに至っていない。
- イスラエル、UAE、アメリカ、イギリスなどのワクチン接種が進んでいる一部の国を除いて、世界の多くの国には次の感染拡大の波がやってくる恐れがまだ十分にある。
- 国ごとにワクチンの接種ペースが多く違うので、コロナからの業績回復が見込まれるホテル・航空・石油の業績回復スピードにも違いが出てきそう。
国ごとに大きな違いがあるワクチン接種ペース
知っている人も多いと思いますが、国によってワクチン接種ペースは大きく異なります。
順調にワクチン接種が進んでいるのは3月24日現在でイスラエル(ブルームバーグが算出している接種率:54%)、UAE(45%)、イギリス(23%)、アメリカ(20%)くらいです。
このように書くとアメリカはワクチンの接種が進んでいないように見えますが、ブルームバーグの予測ではあと5ヶ月もすればアメリカは集団免疫(75%がワクチン接種完了)を達成すると言います。
そして当然ながら、これらのワクチン接種が進んでいる国は順調にコロナの新規感染者数を減らしています。
もっとも接種が進んでいるイスラエルの新規感染者数は勢いよく減少しているほか、アメリカでも減少傾向が続いています。
その他の国はワクチン接種が進まず、感染が増加傾向
しかし、ワクチン接種が上手く進んでいるのはほんの一部の国だけです。
たとえば、ドイツでは英アストラゼネカ社製のワクチンなど注文してはいるのですが、安全性を巡って輸入が進まずに接種率6%台と出遅れています。その影響もあったのか、23日には都市封鎖(ロックダウン)が延長されることが決まりました。
ドイツがロックダウン延長、「新たなパンデミック」(ロイター)
ドイツの新規感染者数を見ても、最近の数週間は増加傾向にあります。
ドイツだけではなく世界の感染者数を見ても、2月20日を堺に増加傾向に転じています。
業績回復のスピードはワクチン接種
私の予想では、恐らくイスラエル・UAE・イギリス・アメリカなどのワクチンが進んだ国以外は、まだこれからも新型コロナウイルスの感染第4波、第5波が起こりうると思っています。
冒頭でも触れたように最近は世界経済について楽観過ぎた予想を修正するかのように石油株・航空株などが下げていますが、こうした下落は感染拡大の波が来るたびに起こる可能性があります。
また、注意が必要だと思うのは、国によって新型コロナウイルスを抑え込むスピードがかなり違うので、コロナからの業績回復を見越した投資をするした場合でも、業界によって業績回復のスピードがだいぶ違うと思われることです。
たとえば、次のように業績回復のスピードは違ってくると思っています。
- アメリカやイギリスの百貨店・ホテル・国内線の業績回復:アメリカとイギリスのワクチン接種のペースによる。比較的に早い時期に回復。
- その他の国の百貨店・ホテル・国内線の業績回復:イギリスやアメリカ(上記)より遅れる。
- 航空会社の国際線の業績回復:ワクチン接種が完了した先進国同士の路線から回復。上記2つより遅れる。
- エネルギー需要の回復:世界のエネルギー需要の回復を待つ。上記3つよりも遅れて回復。
上のように書くと原油などのエネルギー需要の回復は遅く、悪い事のようにも見えますが、投資家目線で見れば必ずしも悪いことではありません。
世界で感染が拡大するたびに今後も原油価格が下落すれば、石油株を仕込むチャンスが長く続くことになります。
世界にワクチンが広まる数年先の世界を見越して投資できる人なら、エネルギー関連株への投資のチャンスはまだ十分残っているように見えます。