先日の記事では、個別株の割高度を測るPERという数字の調べ方と見ているポイントを紹介しました。
割高な株を判断するPERの調べ方と見ているポイントについて【個別株編】
このブログではよく株が割高かどうかを調べるために、PERという数字を使っています。このPERは投資をはじめて数ヶ月の人でも知っている基本的な数字ですが、なかなか面白いテーマです。
しかし、実は個別株だけではなく、たとえばS&P500などのインデックスでもPERを計算することができます。
S&P500がどれくらい割高なのかを知ることはインデックス投資家だけでなく、個別株を選んで投資している投資家にもとても有益です。
個別株を検討する前に、そもそも米国株全体が割高であまり投資すべきではない時期だと知れば、手元に現金を多めに持っておくなどの資産配分ができるようになるからです。
この記事では、米国株全体の割高度をどうやって調べるのかを書いていきます。
この記事のポイント
- 米国株S&P500の予想PERの調べ方を紹介する。
- 長期金利の影響も考慮した割高・割安を調べる方法として超過CAPE利回りとその調べ方を紹介する。
米国株S&P500のPERの調べ方
S&P500の予想PER(株価を今後1年間の予想利益で割った数字)は自分で計算するのは面倒なので、ここでは調べ方を紹介します。
一番簡単に知る方法は、ウォールストリート・ジャーナルのこちらのページを参照することです。
ダウ平均やナスダック総合指数などの予想PERも同じページに掲載されているので、あわせて見ることができます。
過去のS&P500の予想PERを調べる方法
ただし、上のウォールストリート・ジャーナルのページだけ見ていると、予想PERの数字しか見ることが出来ません。
「S&P500の予想PERが22.42でした。…だから、何なの?」という疑問が湧いてしまいます。
そこで過去のS&P500の予想PERと比較して、どれだけ今が割高なのかを知りたいという考えが自然と湧いてきます。
そういうときにはFactsetが毎週提供しているレポートを見れば、過去10年分のS&P500の予想PERの様子をグラフで確認できます。
上の図を見れば、今のS&P500の予想PERは過去10年の中ではかなり高く、株は割高であることがわかります。
上のグラフが掲載されているFactsetのレポートの取得方法は(1)まずFactsetのInsightページにアクセスして、(2)毎週金曜日に更新されている記事をクリックし、(3)記事の下部に添付されている以下のような画像をクリックするの3ステップです。
これで無事にS&P500のPERの調べ方がわかりました。ただし、PERだけでは割高か割安かの判定が出来ない場合もあります。そこで、最後に少しだけ難しい内容になりますが、金利も考慮して株が割高かどうかを知る方法について触れていきます。
金利も考慮したS&P500の割高度合いを知るには
FactsetのPERのグラフだけ見ると、2020年4月から米国株はかなり割高なことがわかります。
でも、ここで疑問が生じます。
「2020年4月から割高なのに、どうして1年以上S&P500は上昇を続けているの?この株価の上昇がアメリカの低金利のおかげなら、本当は予想PERだけではなくて金利も見て、割安かどうか判断しないといけないのでは?」
というわけで、米国株が割安かどうかは「S&P500のPER」と「長期金利」の2つを見ないとわからないという結論に達するわけですが、これら見るべき2つの数字を1つにまとめてくれた人(ロバート・シラー教授)がいるので、そのデータをありがたく使うことにします。
その数字は「超過CAPE利回り(Excess CAPE Yield,略してECY)」と言います。なお、超過CAPE利回りの計算方法は一応下のようになっていますが、これを覚える必要はありません。
- 超過CAPE利回り = 1 ÷ (インフレ調整後の価格と10年間の一株利益平均で算出したS&P500のPER) – (インフレ調整後の米10年国債利回り)
超過CAPE利回りは、米国株が米10年国債に比べて期待リターンが何%分大きいかを意味して、この数字が大きいほど株が割安、小さいほど株が割高だと覚えておけばOKです。
超過CAPE利回りの調べ方
超過CAPE利回りはこちらのサイトでグラフを見ることができます。
上のグラフで超過CAPE利回りが大きいほど株が割安、小さいほど割高と読みますが、2021年3月時点では特に割安でも割高でもないように思えます。
株が大幅に下落した2020年3月のコロナショック時と比べるとだいぶ割安ではなくなりましたが、金利上昇に耐えられなくなって米国株が下落した2018年ほど割高ではありません。
また、上のサイトでは1999年以降のデータしかグラフ化していませんが、ロバート・シラー教授のサイトに行くと1881年からの超過CAPE利回り(Excess CAPE Yield)のデータが入ったファイルをダウンロードできます。
自分で株の研究をもっとしたい人は、ロバート・シラー教授のサイトからデータをとって色々と調べてみてください。