緊張がわずかに和らいだ1日
中国とメキシコに対して、関税を外交の武器にさまざまな要求を突きつけているトランプ政権ですが、6月6日は両国ともにわずかに協議が進展していると見られる知らせが入ってきています。
メキシコとは6月5日から行われている現在の交渉で「有意義な協議ができている」という進展のニュース、中国とは3000億ドルの追加関税の行使はG20で中国との会談を受けてから判断するというトランプ大統領の態度軟化のニュースです。
こうした報道を受けて、6月6日ダウ平均はジャンプアップしています。とてもわかりやすい動きですね。市場は貿易戦争が経済へのダメージになると考えていて、たとえわずかな進展や判断先延ばしでも喜ばしいニュースと受けるようです。
FRBパウエル議長の利下げへの前向きとも取れる発言もあり、今週は市場全体に安堵が広がっている印象があります。
参考記事:FRBパウエル議長「米中央銀行は経済拡大のために適切に対処する」
アメリカも中国も景気回復期の終盤に来ているので、いずれは景気後退期に入るのだと思いますが、各国との貿易協議が順調にいってくれれば、時計の針を遅らせることはできるかも知れません。
参考記事:【原因と結果】米中貿易戦争終結でも米国はリセッション入りするのか。
メキシコとの協議進展の報道
5月31日、アメリカが中国との貿易戦争だけでなく、メキシコに対しても移民問題に対応しないなら、関税を引き上げると発言して話題になりました。中国だけでなく、メキシコにも矛先を向けて、経済は新たな局面に突入した瞬間でした。
トランプ政権、メキシコに関税を発動。意外に大きい世界経済への影響。
しかし、6月5日から行われているアメリカとメキシコとの協議では、初日こそ協議は物別れに終わったものの、翌日6日の協議では進展が見られたとの報道があり、メキシコの米国大使Coqui氏は「交渉担当は非常に良い議論をしている」とCNBCの取材に対して語っています。
また、メキシコは中米から北上してくる移民流入阻止のために6000人の治安部隊をグアテマラとの国境に派遣する策をアメリカ政府に説明するなど、協議はかなり具体的な内容にまで踏み込んでいるようです。
この協議は7日(金)も継続すると発表されています。
中国への追加関税はG20後の米中協議で判断
また、トランプ大統領は以前、中国からの輸入品3250億ドル(約35兆円)相当に追加関税を課すと発言していましたが、大阪で行われるG20サミットの米中会談後にこの行使の有無を判断する考えを示しました。
また、以前はG20サミットで米中が貿易戦争を協議するかは未定とのことでしたが、どうやらトランプ氏はG20サミットで習近平国家主席と会談するとみられています。
トランプ大統領は「G20の後に決断する。習主席に会う。どうなるか様子を見ることになるが、決定は恐らくG20の後になるだろう」と話しています。
更新情報:
2019年6月10日に米国トランプ大統領はメキシコとの移民対策協議で合意に至ったことをツイッター上で発表しました。6月10日から予定されていたメキシコへの関税発動は無期限で停止されました。