つい先日、テスラ社がビットコインの保有を発表して、いろんなメディアでニュースになっていました。
>>ビットコイン4.8万ドル最高値更新-テスラ15億ドル投資、払いも可能に(ブルームバーグ)
2020年からいくつかの企業がビットコインを購入する動きが見られましたが、テスラもこの流れに乗った感じです。
多くの人が興味を引くニュースであることは分かるのですが、テスラが購入した15億ドルという金額を調べてみると、そのインパクトは小さいものだとわかります。
このニュースの事実の部分「テスラが15億ドル分のビットコインを買ったこと」自体は大した内容ではないのですが、「これは初めの一歩で、今後もますますビットコインへの投資を増やすのでは?」、「テスラ以外にもビットコインを買う企業が次々と出てくるのでは?」などの様々な憶測を呼んでいます。
この記事では、テスラが購入したビットコインの金額は実は大した規模ではないこと、さらに今後ビットコインに投資する企業が出てくると表面化する影響について考えていきます。
この記事のポイント
- テスラが購入した額はビットコインの時価総額の0.2%でとても小さい。
- テスラの資産のうち、ビットコインが占める割合も約6%で小さい。
- 個人的には、テスラに続いて企業がビットコインを買う動きが広がるかどうかを警戒している。私は2021年後半にもビットコインの価格下落が始まると予想しているので、企業によるビットコイン保有の動きが広がると、ビットコインの不安定な価格の悪影響が米国株に出てしまう。
テスラが買ったビットコインは全体のわずか0.2%
テスラはビットコインに15億ドルを投資しましたが、ビットコインの市場規模に比べるとテスラの購入額は大したことはありません。
2020年2月9日時点のビットコインの時価総額を調べてみると8638億ドルなので、テスラの購入額は全体のわずか0.2%分です。
「それでも、テスラの発表後にビットコインの価格が急上昇したじゃないか」という声もわかります。この日、たしかにビットコインは約20%近く価格が上昇していました。
テスラの発表はビットコインの価格上昇のきっかけになったかも知れませんが、それがなくてもビットコインの価格はいずれ上昇したと思います。
もともと私は2020年5月の時点で以下のようなビットコインの価格予想記事を書いていましたが、今はほとんど予想通りの価格の動きをしています。
(毎月末の価格もモデルに反映して予想値も多少修正をかけていますが、式は一度も変えていません)
詳細記事:ビットコインの価格が2021年に1000万円を超える仕組み
それでも、テスラのビットコイン保有発表でビットコインの価格が上昇したというのなら、それは「テスラが15億ドル買った事実」に反応したのではなく、「今後もビットコインを保有する企業が増えるかもしれない」という憶測や期待で上がっているものだと思います。
テスラの資産に占めるビットコインの割合も大きくない
またテスラが15億ドルビットコインを買っても、テスラの資産全体に占めるビットコインの規模はそれほど大きくありません。
2020年12月の決算書を見てみると、テスラの総資産は267億ドルなので、15億ドルのビットコインを買っても約6%ほどにしかなりません。
テスラ(資産は2020年末) | 単位B:10億ドル |
---|---|
資産総額 | $26.7B |
うちBTC資産 | $1.5B |
資産に占める比率 | 約6% |
これを見るかぎり現時点では、ビットコインの価格の変動がテスラに与える影響は大きくないです。もしもビットコインが無価値になっても、わずか6%のダメージで済みます。
私は2020年にはビットコインの価格は1000万円を超えると予想していますが、それが実現してもテスラの資産は約15億ドル増えるだけでインパクトは大きくありません。
投資家の中には「テスラがビットコインの価格上昇を取り込むようになる」、「テスラを保有すれば、間接的ににビットコインを保有したことになる」という声も上がっていますが、現時点ではテスラがビットコインの価格上昇を取り込む力は極めて弱いです。
このような声を上げる投資家は、テスラよりも前にビットコインに投資した会社のマイクロストラテジーの株価の動きが頭によぎっているのかも知れません。
この会社はビットコインを積極的に保有すると宣言してから、ビットコインの価格上昇ととも株価が急上昇しています。
ただし、マイクロストラテジーの場合は、2020年末時点で資産に占めるビットコインの割合は70%を超えていて、テスラと大きく違います。
マイクロストラテジー(2020年末) | 単位B:10億ドル |
---|---|
資産総額 | $1.47B |
うちBTC資産 | $1.05B |
資産に占める比率 | 72% |
2021年年明けに買い増ししたと発表しているので、現時点ではさらに資産に占めるビットコインの割合は上がっているはずです。
マイクロストラテジーとの比較で見たように、テスラのビットコイン保有比率はかなり小さいです。「テスラの株を保有すれば、間接的にビットコインを保有することになる」というのは、間違いではありませんが、その影響はかなり小さいです。
企業がビットコインを保有することの懸念点
今後もテスラに続いて、その他の企業でビットコインの保有を始める例が出てくるのかも知れません。
(可能性がまだかなり低いですが、)もしもこの流れが様々な米国企業に加速してしまった場合には、1点気になる点があります。
以下の記事で書いたように、私は2021年の後半にもビットコインはバブルが崩壊して価格の急落が始まるだろうと思っていますが、その時にはビットコインを保有して株価が上がっていたマイクロストラテジーのような企業も大きな影響を受けるはずです。
2021年ビットコインのバブルは崩壊するかも知れないが、今すぐではない。
この記事では過去のビットコインの価格から見えてくる2つのことを書いていきます。1つ目は「たしかにビットコインのバブル崩壊は2021年に起こる可能性が高い」ということ、2つ目は「ただし、バブル崩壊が起こるとしても、それは年初ではなく、2021年半ばから年末にかけて」だということです。
マイクロストラテジーやテスラだけでなく幅広い企業がビットコインを保有していたら、米国株市場全体にも多少なりとも悪影響が出てしまうかも知れません。
本来なら金融緩和が続いている2021年は米国株全体のバブル崩壊は始まらないと思っていますが、企業のビットコイン保有が進んでしまうと、ビットコインの不安定な価格の悪影響を受けて、足元をすくわれるかも知れません。
今は企業でビットコインを保有している例が極めて少ないのでこの心配はいらないですが、企業がビットコインを保有する流れがどこまで広がりを見せるかは注目しておきたいと思います。