株だけに投資している人でも、国債の利回りは注意して見たほうが良いと言われます。
一般的には、国債利回りが上昇すると今後株は下落しやすくなると言われているからです。
この記事を書いている2021年1月6日時点では、米国債利回りが上昇して久々に1%台まで回復したので、これが株にどう影響するのかを考えていきたいと思います。
国債についてあまり知識がない人には少し難しく感じるかも知れませんが、前提知識がなくてもじっくり読めば仕組みが分かるように丁寧に書きました。
今後数年間は、国債利回りが大きなテーマになるはずなので、何度も読み返して仕組みを理解しておくと、今後の投資に役立つはずです。
この記事のポイント
- 2021年1月6日にアメリカの10年国債利回りが2020年3月以来、はじめて1%台を超えるまで上昇した。
- 一般的には、国債利回りが上昇すると株が売られやすくなる。ただし、今のところ株への悪影響は限定的。理由はインフレ率まで考慮すると1%の国債には投資の魅力がなく、投資家が株を売ってまで国債を買う気にはならなかったため。
- 上院議員選挙でアメリカ民主党の勝利したため、国債利回りが今後上昇しやすくなっている点には注意。いずれ株価に悪影響を与える可能性が高い。
国債利回りが上昇すると、株が下落する仕組み
そもそも、なぜ国債利回りが上昇すると、株価が下落しやすくなるのでしょうか。
その理由は簡単で、投資家の資金の多くは株と国債で運用されているからです。
国債の利回りが上昇して投資する魅力が出てきたら、今まで株に投資していた投資家の中でも「株を売って国債に投資しようかな」と考える人が出てきます。
こういう人たちの影響もあって、国債の利回りが高くなったら、すでに割高だったり伸びしろが少ないと判断された株ほど売られやすくなります。
10年米国債が1%超えでも米国株が大きく下げなかった理由
一般的には、国債利回りが上昇すると株は売られやすくなるはずですが、コロナ流行後以降ではじめて1%超えまで上昇した1月6日の米国株はあまり大きく株価を下げませんでした。
下げたのはナスダックくらいで、ダウは上昇すらしています。
たった1日の株価の動きで評価するのは早計ですが、なぜ米国株が大きく下げなかったのか、理由を考えていきます。
米国債利回り1%超えでも、株価が大幅下落しなかった理由
株を売る動きにつながらなかった理由は、国債がまだ大して魅力的に見えないからだと思います。
私も2020年3月まで国債を大量に保有していたので、国債に投資している人の気持ちは少しだけ分かりますが、国債を買うときには将来のインフレ率まで考えて投資を判断します。
たとえば、10年国債利回りが1%あっても、10年間でインフレ率が2%進んでしまうと予想する場合には、インフレ調整後に得られるリターンは実質マイナス1%で、投資をすればするほど損をしてしまいます。
1月6日はまさにこの状態でした。この日のインフレ率を考慮した10年国債利回りはマイナス1%超で、積極的に株を売って国債を買いたいと思うレベルでは全くありませんでした。
上のグラフで見ても分かるように、今のインフレ調整後の国債利回りはむしろ過去1年間で最低の水準です。
最近はアメリカの景気回復を見越してインフレ率の予想が上昇していたので、表面上の利回りが1%超えまで回復しても投資家には利回りが魅力的に見えなかったようです。
今後国債利回りが上昇しやすくなった点には注意
結論としては1月6日時点の(インフレ調整後の)国債利回りなら、米国株全体には大した悪影響は出ていないようです。悪影響が出ているとしても、ステイホームで恩恵を受けた割高な銘柄くらいです。
ただし、今後、ますます米国債利回りが上昇しやすくなっている点には注意が必要だと思います。1月5日の上院議員選挙で民主党が勝利したことで、国債利回りが上がりやすくなったこと背景にあるからです。
米民主党が優位になると国債利回りが上昇しやすくなる仕組み
- 1.民主党は共和党よりも、大きな予算を組む傾向がある。
- 2.大きな予算を組むために、今後は国債を大量に新規発行する。
- 3.国債が市場に大量に出回って国債の売れ行きが悪くなると、国債の価格が下落する。
- 4.国債価格が下落すると、利回りが上昇する(株価が下がると、配当利回りが上昇する仕組みと同じ)
現時点では、まだ株に大きな悪影響が出ていませんが、今後は継続的に注意して、国債利回りの動向を見たほうがいいと思っています。
その時見るべき利回りは、表面利回りではなく、インフレ調整後の10年国債利回りのほうが良さそうです。