ようやく、市場はアメリカの景気回復を織り込み始めたように見えます。
市場が予想するアメリカのインフレ率(期待インフレ率)は、コロナ前の水準超えて1.9%台まで回復しました。
インフレという言葉を見ると「危険だ!」とすぐ反応したくなる人もいると思いますが、私は1.9%程度のインフレ率ならとても健全な範囲だと思います。
インフレ率はお風呂の温度と同じで、高すぎても低すぎてもダメで、だいたい2%前後が一番良いと言われています。
2020年の春以降にコロナで景気が急速に悪化してからは、「この景気低迷はかなり長く続く」と言わんばかりに予想インフレ率が低くしずんでいましたが、ようやく2%目前までに回復し、健全な景気予想に変わってきたように思えます。
この記事のポイント
- 市場が予想するインフレ率は1.9%台まで回復した。2020年の中では、コロナ前の水準を超えて最高値を更新している。
- 個人的には、この予想インフレ率の上昇は、市場はアメリカの景気回復を見据えはじめた結果と見ている。
- ただし、今後もインフレ率の上昇が止まらないようなら、インフレが景気に悪影響を与えかねないので上がりすぎには警戒。
市場が予想するインフレ率は上昇
11月に新型コロナウイルスのワクチンを巡る良いニュースが続いたことも影響したのか、市場が予想するインフレ率がスルスルと上昇しています。
先日の別の記事でも、インフレ率予想はコロナ前の水準を超えて2020年の最高値を更新したと書きましたが、2020年12月9日はついに1.9%台まで回復しています。
インフレ率は低すぎると景気は低迷し、高すぎてもモノの値段がドンドン上がって景気を悪化させますが、今の1.9%はアメリカの中央銀行FRBが目標としている2%超にかなり近づいてきていて良い感じです。
予想インフレ率は2019年5月以来の水準
この記事を書いている時点の1.9%の予想インフレ率は、2019年4月以来の高さだったようです。
2019年4月と言えば、米中が貿易協議が難航して追加関税をお互いにかけあう前で、アメリカの景気もまだ力強かった頃です。
この数年で最も景気が良かった2018年時点の予想インフレ率2.18%にはまだ及びませんが、2020年12月になって市場はようやく景気回復を信じ始めたように見えます。
予想インフレ率上昇の背景
「景気回復を期待して予想インフレ率が上がっているんじゃなくて、アメリカは2020年にドルをバラまいてるせいで、悪いインフレを予想しているのでは?」という考えも、もちろんあると思います。
ただ、予想インフレ率は11月から12月にかけて上がっています。この時期は与野党で意見が折り合わず、アメリカの国民にお金を配る景気支援策の話が進んでいなかったはずなので、さらなるバラマキを期待したインフレ率上昇ではない気がします。
それよりも有望なワクチンの登場で新型コロナウイルスが収束する期待が膨らんで、景気回復を見込んだ予想インフレ率の上昇が見られたと私は思っています。
さいごに
この記事では、市場が予想するインフレ率が上昇した件について触れていきました。
別の記事で2020年の最高値を超えたことは既にお伝えしていましたが、その後もスルスルと上昇してついに1.9%台まで回復しています。
もちろん多くの人が心配しているようにインフレ率の上がり過ぎは良くないです。
市場が予想するインフレ率が大きく上昇すれば、インフレに弱い資産である国債がまず売られてしまいます。あまりに国債が売られると金利は上昇してしまうので、今度は企業がお金を借りにくなったりと、最終的に株価にも悪影響がでてきます。
ただし、2%をわずかに上回る程度までの予想インフレ率の上昇なら、景気にはプラスに働くはずです。これは今年の春に「コロナによる不景気は長く長く続く」と言われていた頃に比べると、大きな進歩だと思います。
まだ温かい春はやってきませんが、市場には長い冬の終わりが見え始めたのかもしれません。