この記事では中・長期投資家が「株をいつ売ればいいのか」について、私なりの考えを書いていきます。
ただし、私は株の売り買いをたくさん繰り返すタイプのトレーダーではないので、株価が底を打つベストなタイミングで買い、ピークをつけるタイミングで売るような判断は得意ではありません。
そのような短期的なトレーダーのための売買のタイミングは、この記事では扱っていません。
数年先を見越して投資している中期投資家や、5年-10年先をみて投資している長期投資家にとって、「株を売ったほうが良い」と考えられるタイミングについて考えていきます。
この記事のポイント
- 投資は「今後期待できるリターンがもっとも高くなるような資産の組み合わせを持つこと」を意味する。
- 今持っている銘柄よりも、もっとずっと大きなリターンが期待できる銘柄があるなら、中長期投資家でも保有している銘柄を売って、大きなリターンが期待できる銘柄に乗り換えても良い。
結論
基本に立ち返ると、投資は「今後期待できるリターンがもっとも高くなるような資産の組み合わせを持つこと」を意味するはずです。
その基本に従うなら、今持っている株よりも大きなリターンが期待できる銘柄があるなら、保有している株を売って、大きなリターンが期待できる銘柄に乗り換えて良いと思っています。これがこの記事の結論です。
ただし、これだけだとちゃんと意図していることが伝わりにくいので、もう少しだけ考えていることを詳しくお話したいと思います。
保有している株の上昇余地が少なくなる場合
まず、中期的な投資の例から考えていきます。
私の場合、新型コロナで業績が著しく悪化した米ホテル業界のマリオット(シンボル:MAR)を2020年8月から買い始めました。「何年かかけてコロナが収束すれば、コロナ前の株価にまで戻るはず」という考えで購入していました。
その後、11月にはワクチンの開発も順調に進んで、2021年にはコロナが収束に向かっていく希望が見えてきたことで、だいぶ株価が上昇しました。
もしもコロナ収束後の適正な株価を「コロナ収束前の153ドル」と見ているなら、もはや上昇余地は15%ほどしかない状況まで来ています。
15%も上昇余地があるうちはまだ売るには早いですが、上昇余地が10%、5%と少なくなるなら、中期投資家なら売却しても良いと個人的には思っています。
長期投資家の場合
長期投資家は、もっとシンプルに企業の長期的な成長を見るのが良いかもしれません。
単なる私の肌感覚ですが、10年間の一株利益成長率をみて頻繁に年率5%を下回っているようだと、S&P500のリターンを超えるのはかなり難しいです。
適当に思いつくままに、2010-2019年の一株利益成長率が年率5%を下回ったマクドナルド、3M、コカ・コーラの投資リターンを見てみましたが、S&P500を上回ったのはマクドナルドだけでした。
(マクドナルドは2010年代後半にフランチャイズ化を次々に進めて、フリーキャッシュフローが増えたので、株価が伸びています。)
復調のきっかけが見えているなら継続投資しても良いですが、そのような銘柄で低成長が続くようなら、ほとんど売買しない長期投資家でも一部売却したり、不調な銘柄への追加投資をやめるのも手だと思います。
今後期待できる投資リターンが大きい銘柄見つかった場合
保有している銘柄にまだいくらか上昇余地があった場合でも、他に有望な銘柄が見つかった場合なら、銘柄を乗り換えて良いと思っています。
具体的には、マリオットと同じようにコロナでダメージを受けたデルタ航空(シンボル:DAL)を見てみます。先ほどと同じように「コロナ収束後にはコロナ前の株価に戻る」と仮定するなら、デルタ航空の株価は32%の上昇余地があります。
マリオットの15%と比べると魅力はありそうです。
もちろん、デルタ航空の株の上昇がマリオットよりも遅れているのはちゃんとした理由があります。デルタ航空は国際線も多く飛ばしているので、アメリカだけがワクチンを打ってコロナを収束させても、渡航先のコロナ収束まで見えないと客足が戻らないなど、業績回復に時間がかかります。
ざっくりとマリオットが1年、デルタ航空が2年に株価がコロナ前に戻ると思うなら、次の1年リターンはどちらも15%程度で同じになるかも知れません。(それでもデルタ航空の場合は、2年目も15%で株価が伸びてくれる上昇余地はありますが)
またマリオットはコロナ後でも既に黒字化して、デルタはまだ大きな赤字が続くなど、デルタ航空のほうがリスクは高いです。
それでも、そのリスクに見合うだけのリターンがあると考える中期投資家なら、マリオット株を売ってデルタ航空株を買う選択肢もありだと思います。
長期投資家の場合
長期投資家が有望な企業を探す場合には、毎年のように売上・利益をきちんと成長させているか、フリーキャッシュフローが伸びているかをちゃんと確認するのが良いと思っています。
フリーキャッシュフローという言葉はあまり聞き慣れないかも知れませんが、以下の記事でも書いたように、私が銘柄を選ぶ時に割と重視している数字の一つです。
個別株の投資で重要なたった2つのこと
とってもシンプルに考えるなら、個別株に投資で重要なことはたった2つしかありません。【何を買うのか】と【いつ買うか】だけです。この記事では、長期で個別株で資産形成したいと考えている投資家に向けて、どんな銘柄をどのタイミングで買っていけば良いかを考えていきます。
その時に選ぶ銘柄は単に長期的に一株利益が年率一桁後半以上で成長しているだけではなく、他のライバル企業が競争してきても簡単に利益を落とさない強み(経済的な堀)がある企業のほうが望ましいです。
経済的な濠とは何か。【バフェットも注目する投資の原則を解説】
バフェットも注目している「経済的な濠」とは何でしょうか。このブログの記事でも「経済的な濠」という単語は度々登場しており既に知っている方多いと思いますが、ここで改めてご紹介します。
長期投資家で保有している銘柄が長年低成長に悩んでいて、有望な銘柄(売上・利益・フリーキャッシュフロー・経済的な堀がOKな銘柄)があるようなら、保有している株を一部売却して有望な株を買うのもありだと思っています。
もしくは不調な銘柄への追加投資をやめて、有望な銘柄を追加投資の資金で買うようにするのも良いと思います。