アップルの2020年7-9月期(Q4)決算は、予想を上回る結果でした。
ただ、売上規模が一番大きいiPhone売上が予想よりも下回ったこともあって、決算発表後に株価は4%ほど下落しています。
今回の決算で、市場の投資家たちは少し厳しい採点をした気がします。
iPhone売上は不調でしたが、例年9月に発売している新型iPhoneを今年は10月に延期した影響を大きく受けているためです。また、決算発表の中で10-12月は前年よりも大きなiPhoneの売上を見込んでいるとの発言があっても、株価の上昇は見られませんでした。
アップルは次の四半期のガイダンス(売上見通し)を発表しなかったので、投資家としては「ガイダンスを出さないほど見通しが不確実なのに、来期の業績が好調だと言われても安心できない」という思いはあると思います。
この記事のポイント
- アップルの7-9月の業績は収益・一株利益ともに事前の予想を上回った。
- iPhone以外の製品は全て売上成長率が加速した。
- ただし、iPhoneは例年よりも発売時期を遅らせたことが原因で売上が前年よりも21%落ち込んだ。9月中旬までは前年比で好調を維持していたが、例年iPhoneを販売していた9月後半に大きく失速した。
- アップルは10-12月はiPhone売上が前年を超える見通しだとアピールしたが、一方で(コロナなど)不安定な世の中を理由にガイダンスを提示できていないので、投資家は警戒心を持っている。
アップルは、売上は前年から伸びていないのに1年間で株価は90%上昇してきたので、期待が高すぎるのかも知れません。
2019年からはサービス事業がiPhoneに変わる成長分野として期待を集めて株価は上昇していましたが、いまだにその成長率は大きくなく、iPad・Mac・ウェアラブル製品のほうが好調なので、「そもそもアップルの株価はなんで上昇しているんだっけ」と、最近ふと疑問に思うことがあります。
アップルは魅力的な企業ですが、私はまだ買わずに待機したいと思います。
iPhone以外は好調だった2020年4-6月期
アップルの7-9月期の業績は、全体的には良かったです。収益も利益も予想を上回る良い内容でした。
ただし、難点があったのはiPhoneです。例年よりも新型iPhoneの発売時期が遅くなったことで、売上は大きく下がることが予想されていましたが、前年比マイナス20%で予想以上の落ち込みになりました。
- 一株利益:0.73ドルで、予想を0.03ドル上回る(前年比-4%)。
- 収益:646.9億ドルで、予想を13.6億ドル上回る(前年比+1%)。
- iPhone売上:264.4億ドルで、予想を13億ドル下回る(前年比マイナス21%)
単位B:10億ドル | 20Q4 | 前年比 |
---|---|---|
収益 | $64.7B | +1% |
営業利益 | $14.8B | -5% |
純利益 | $12.7B | -7% |
一株利益 | $0.73 | -4% |
部門別売上
今期はiPhoneの売上は不調でしたが、その他の製品・サービスの業績はかなり好調だったので、その様子を見ておきたいと思います。
アップルの売上でわかりにくいのは、「ウェアラブル&アクセサリ」と「サービス」です。それぞれの以下の製品・サービスが含まれます。
- ウェアラブル&アクセサリ:AppleWatch(時計)、AirPods(ワイヤレスイヤホン)、HomePod(スピーカー)など
- サービス:iCould(クラウドストレージ)、AppleMusic(音楽)、AppleNews(雑誌)、AppleArcade(ゲーム)、AppleTV+(動画)、ApplePay(電子決済)、AppleCare(製品保証)など
単位B:10億ドル | 20Q4 | 構成比 | 前期比 |
---|---|---|---|
iPhone | $26.4B | 41% | -21% |
Mac | $9.0B | 14% | +29% |
iPad | $6.8B | 11% | +46% |
ウェアラブル | $7.9B | 12% | +21% |
サービス | $14.5B | 22% | +16% |
合計 | $64.6B | 100% | +1% |
上のグラフを見るとすぐに分かるのですが、iPhone以外の製品は全て売上成長が加速しています。
要因はいくつかあると思うのですが、(1)9月に発表したiPad Pro, Apple Watch SEの売上が好調だったこと、(2)コロナが流行してからリモート会議、オンライン授業の増加でPCとタブレット需要が高まっていることが背景にあるようです。
アメリカでは10年ぶりにPCの出荷台数が10%超えの成長を見せていて、その中でもアップルは検討しているようです。
>>米PC出荷、7ー9月は10年ぶり大幅増-リモートワーク需要で(ブルームバーグ)
iPhone以外の売上成長率は加速
冒頭からお伝えしているように、今回の決算発表で鍵を握っていたのは、アップルの売上規模で4割を占めるiPhoneの不振です。
ただ、アップルによれば、iPhoneの売上が落ち込んだのは販売時期が例年よりも遅くなって、買い控えが起こっているだけだと言います。
決算発表でティム・クックCEOらの発言を以下にまとめておきます。
決算発表での主なiPhoneに関するコメント
- 例年9月中旬にリリースしていたiPhoneの販売時期を今年は遅らせていた。
- 9月中旬までは前年モデルのiPhone11が好調で、iPhoneの売上は予想を超えて二桁成長するなど強い需要が見られた。
- しかし、例年なら新製品を販売していた最後の2週間でiPhoneの売上は前年比マイナス成長に落ち込んでしまった。
- 10月と11月に新型iPhoneを投入するので、10-12月期は新型iPhoneを投入していない期間が数週間すでに発生しているが、それでも前年のiPhone売上は超える見通し。
ティム・クックCEOの発言どおりなら、iPhoneの売上低迷はそれほど心配しなくて良さそうです。
しかし、アップルは(恐らく今後のコロナの展開が読みにくいためか)10-12月期の売上見通しを示さなかったので、投資家は安心できていないないようです。
個人的には今好調なPCやタブレット需要がいつまで続くのか、今期iPhoneの低迷で前年比マイナス29%に沈んだ中国の売上がちゃんと復活するのかが気になっています。
そもそもアップルは2018年をピークに中国での売上が年々下がっているので、これに歯止めをかけたいはずです。
中国は2020年で唯一成長している地域なので、この売上をしっかりと取っておきたいところです。