10月に入ってから、「10月は季節的に下落しやすい」という話を聞くようになりました。
私はこうした「何月は上昇しやすい・下落しやすい」という話をあまり信じないタイプなのですが、あまりに短期間で複数の人がいうのを聞くので、本当かどうかを1927年から2020年までのS&P500データを使って調べてみました。
今回調べたかぎりでは、一般的には10月のS&P500の月間成績は他の月と比べても、大して下落していないことがわかりました。
しかし、その一方でアメリカの大統領選挙がある年で、なおかつ大統領が交代した年だけに絞って調べると、10月のS&P500の成績は低調になることがわかりました。11月1週目に予定されている大統領選の行方が見通せない場合に、リスク回避をする動きはあるのかも知れません。
この記事のポイント
- 1927年から2020年までのS&P500の月間成績を調べたが、一般的に10月だから下落しやすい傾向は見られなかった。
- 4年に1度のアメリカ大統領選がある年だけに絞ってS&P500の月間成績を調べても、10月の下落は特に目立った数字ではなかった。
- しかし、大統領が交代した年に絞ると、S&P500は10月に最も大きな下落を見せている。11月1週目に予定されている大統領選の行方が見通せない場合、前月の10月にリスク回避をする動きがある模様。
- また、1929年の大暴落やブラックマンデーなど10月は印象的な下落が多かったので、「10月は株が下がりやすい」と人々から言われている様子。
この記事では1927年1月から2020年9月までのS&P500の月間成績のデータを使って、検証しました。データはYahooファイナンスから取ってきています。
10月だから米国株が下落しやすいわけではない
「10月は季節的に下落しやすい」というデータを検証するために、S&P500の月別の成績を見てみましょう。
上のグラフは1927年から2020年9月までのS&P500の月間成績を月別に平均値を出して、まとめたものです。
これを見るとわかるように、実は10月よりも9月のほうが株価は低迷しています。つまり、季節的に下落しやすいのは10月ではなく、9月だったと言えます。
「あれ、じゃあ10月に米国株が下落しやすい」というのは、嘘だったのでしょうか。
せっかくデータを手元に集めてきたので、追加で調査をしてみました。次に見ていくのは、4年に1度の大統領選挙がある年の10月は下落しやすいかどうかです。
大統領選がある年だからといって10月に下落しやすいわけでもない
大統領が変われば、税制(法人税など)が変わって企業の利益が変化することがあります。なので、4年に1度おとずれる11月1週目の大統領選挙の前月の10月に、S&P500の成績が低迷するのかを見てみました。
上の図は大統領選挙があった年のS&P500の月間成績の平均をグラフ化したものです。
う〜ん。たしかに、10月の成績は平均に比べるとやや悪いですが、10月以上に低調な月はいくつもあります。
ついでに、大統領選挙がある年とない年の成績を月別に比べてみましたが、大統領選の有無で株価が大きく落ち込むのは10月ではなく、1月と4-5月でした。
10月に株価が低迷するという話はあまりに信ぴょう性のない都市伝説だったのでしょうか。ここまで調べて少し不安がよぎります。
大統領が変わる変化の年は10月に下落しやすい
選挙の結果、大統領が交代した年だけに絞って、S&P500の月別の成績を見てみました。
アメリカの大統領が変わった年はWikipediaで調べることができるので、それらの年だけを調査対象にします。
あまり期待をせずに調べ始めましたが、ようやくはっきりと10月の低迷が目に見える形になりました。
上のグラフは大統領が変わった年のS&P500の月別成績の平均値をグラフ化したものですが、明らかに10月に低迷している様子が見られます。
恐らく、翌月に控えた大統領選挙の行方が読めない中で、投資家がリスクを回避して株を売る動きがあるように思えます。
10月に米国株が下げる季節性も見られなく、大統領選がある年だからと言って10月に下げる傾向も強く見られませんでしたが、大統領選があり、なおかつ大統領が変わる年の10月は株価が下落しやすいことがデータから言えそうです。
10月は投資家の記録に残る印象的な下落が多い
最後に、10月の株価を調べている時に、興味深いデータも見つかったので紹介しておきます。
既に見てきたように1927年から2020年までの10月の株価は平均的な上昇率なのですが、実は大きな下落を何度か経験しています。
S&P500の10月だけの成績を見てみると、1929年、1987年、2008年と大きな下落(上図の赤丸のポイント)を経験しています。
歴史に詳しい人はこの3つの年だけでピンとくると思いますが、この3つの年の10月には歴史に名が刻まれている印象的な下落が起こっています。
記録的な10月の下落
- 1929年10月ウォール街の大暴落
- 1987年10月ブラックマンデー
- 2008年10月リーマン・ショック後の株価下落
こうした印象的な下落がいくつか起こっているので、10月は他の月に比べて特別株価が下がりやすいわけではないのに「10月は下落が起きやすい」という話をされるのかも知れません。
少し長くなったので、この記事の内容をまとめます。
この記事では、「10月に米国株が下がりやすい」という話は本当なのかどうかを、データを使って調べてみました。月別の成績を見る限りは、10月だからと言って米国株が低調なわけではないようです。
「10月に米国株が下がりやすい」と言われるのは、印象に残る歴史的な下落が10月に何度かあったことが原因かも知れません。
ただし、大統領が変わるような変革の年には大統領選の直前の10月は下落が起こりやすいので、トランプ大統領の再選が危ぶまれている2020年の10月は注意が必要そうです。