ジョンソン&ジョンソンの2020年第2四半期(4-6月期)の決算発表がありました。
前年よりも利益・収益ともに落ち込みましたが、それでも事前に予想されたほどは落ち込まずにすみました。
予想以上の業績が発表されたこと、2020年通年の業績予想の引き上げの発表されたことを受けて投資家は買いで反応し、決算発表があった日は+0.67%高と小幅ながら株高になっています。
この記事のポイント
- 利益・収益は前年に比べて大幅に減少したが、それでも予想された減少幅ほど悪化しなかった。
- 業績が良かったのは医薬品で前年比プラス成長を維持、一方で悪かったのは医療機器販売が30%超えの減収だったが、予想ほど悪化しなかった。
- 2020年度の業績予想が上方修正された。新型コロナウイルスで業績が低迷されると予想された医療機器分野が、想定ほど落ち込まなかったことが背景にある。
2020年4-6月期結果
- 一株利益:1.67ドルで、予想を0.16ドル上回る(前年比マイナス35.3%)。
- 調整後一株利益:1.36ドルで、予想を0.18ドル上回る(前年比マイナス34.6%)。
- 収益:183.4億ドルで、予想を6.1億ドル上回る(前年比マイナス10.8%)。
前年と比べると利益は30%減少、収益は10%減少と決して良くないのですが、利益・収益ともにアナリスト予想を超えてきました。
過去3年間でアナリスト予想を1回しか下回っていないのは、さすがの安定感です。
今期の利益と収益の減少は既に株価に織り込み済みだったようです。
むしろ予想よりも良かったことに好感が持たれて、決算発表があった日のS&P500は下落していた中で、ジョンソン&ジョンソンの株価は+0.67%と小幅に上昇しています。
部門別売上
ジョンソン&ジョンソンの好不調の要因を見るために、部門別を売上を確認していきます。
ジョンソン&ジョンソンの部門
- 日用品:ドクターシーラボ(美容品)、ニュートロジーナ(ハンドクリーム)、タイレノール(解熱鎮痛剤)
- 医薬品:レミケード(関節リウマチ治薬)、ダラザレックス(多発性骨髄腫薬)、イブルチニブ(抗がん剤)
- 医療機器・備品:アキュビュー(コンタクトレンズ)、不整脈診断システム、外科手術用品、消毒洗浄用品
単位:10億ドル | 売上 | 構成比 | 前年比 |
---|---|---|---|
日用品 | $3.3B | 18% | -7.0% |
医薬品 | $10.8B | 59% | +2.1% |
医療機器 | $4.3B | 23% | -33.9% |
合計 | $18.3B | 100% | -10.8% |
部門ごとに売上を見えると、業績の6割を占める主力分野の医薬品の売上が前年比+2.1%で持ちこたえています。
一方で売上20%を占める医療機器分野では、残念ながら前年比マイナス30%超えで落ち込んでいます。ただし、この分野の落ち込みは当初予想されたよりも小さく済みました。
医療機器分野は4月時に発表した業績予想よりも良いペースで来ています。
この図は面白いので、少しだけ深堀りすると次の3つの点がわかります。
- (1)低迷が予想された医療機器販売は4月時点の予想ほど、悪化しなかった。
- (2)ただし、20年末の業績予想は引き下げた。当初想定よりも新型コロナウイルスの影響が長く続くと考えを改めた。
- (3)2020年度の通年では、4月時点の予想よりも予想を引き上げている。
つまり、4月時点で想定していたほど売上低迷の谷は深くなかったが、回復は長引き低迷期がやや長くなると予想を改めた模様です。
谷が浅かったことで2020年の予想は引き上げていますが、今後2021年に低迷の影響が残るかも知れません。
引き上げられた2020年の業績予想
医療機器販売の2020年の業績予想を引き上げたことで、ジョンソン&ジョンソン全社の2020年度業績予想も今回の決算で引き上げられています。
引き上げられた20年度業績予想
- 調整後利益:$7.75(前年比-10%)〜$7.95(前年比-7%)。4月時の予想は$7.50〜$7.90。
- 収益:$79.9B(前年比-3%)-$81.4B(前年比-1%)で前年比を想定。4月時の予想は$77.5B〜$80.5B。
業績予想の引き上げは、決算発表後の株価上昇につながる良いニュースでした。
新型コロナウイルスのワクチン開発の進捗について
最後に新型コロナウイルスのワクチンの開発情報をまとめておきます。
ワクチン開発の進捗
- 世界中で緊急事態となっているパンデミックに対処するため、新型コロナウイルスのワクチンは利益なしをベースに開発をすすめる。
- 3段階ある試験のうち、第2段階の試験を7月22日からベルギーで、7月20開始週からアメリカで行う。初期の第1相試験は日本でも実施する計画がある。
- 最終の第3相試験は当初21年初めを計画していたが、早ければ20年9月に前倒しする。
- 試験と並行して2021年末までに10億回分を超えるワクチンの提供を目指し、世界中で製造能力の拡大に取り組んでいる。
ジョンソン&ジョンソンの株主としては、ワクチンでどれだけ利益がでるのかをつい期待してしまうかも知れませんが、ジョンソン&ジョンソンはCEOの声明で”not-for-profit basis(非営利目的)”で開発をすすめると言っています。
売上や利益といった業績への影響は期待せず、新型コロナウイルスの収束がどれだけ近づいているかという視点でワクチンの開発を見たよほうが良さそうです。
さいごに
2020年4-6月期のジョンソン&ジョンソンの決算を見ていきました。
「予想されたほど業績が悪化しなかったこと」と「2020年度業績見通しを引き上げたこと」が交換されて株価が上昇しているように見えます。
世間が先行き不透明な中でも安定してアナリスト予想を超えてくるジョンソン&ジョンソンのような銘柄は、個人的にはかなり気に入っています。
ただし、予想よりは良かったと言っても前年比での利益の急減は痛手です。
当初想定よりも新型コロナウイルスの影響は長引くとジョンソン&ジョンソンも考えているようなので、ここまで安定してアナリストの業績予想を超えているこの会社であっても、コロナの収束と早期のワクチン開発が望まれます。