ゴールドマン・サックスの2020年4-6月期の決算が発表されました。結果はかなり良かったです。
景気の悪化を見越して貸倒れ引当金(返済されないと予想される金額を予め損として計上するお金)を予想以上に増加しましたが、それでも収益・利益ともに予想を上回る結果になりました。
4-6月はたしかにアメリカの景気はかなり低迷したのですが、一方で市場は株も債権も絶好調でした。ゴールドマン・サックスは経済の影響よりも市場の好影響を強く受けて、4半期の収益としては歴代2番目に大きな数字記録しています。
この記事のポイント
- 一株利益・収益ともアナリストの予想を大幅に上回った。特に収益は前年比+41%で、4半期としては歴代2位を記録。
- 機関投資家向けに、株・債権・通貨・商品の販売仲介をするグローバルマーケット部門がかなり好調で前年比+93%で収益が増加した。また投資銀行部門でも株や債権の引受けが増え、部門として歴代最高収益を計上した。
しかし、ゴールドマン・サックスがここまで好決算だったのも久しぶりです。過去3回の決算ではいずれも利益が予想を下回っていて、利益・収益がそろって予想を超えるのは2019年4-6月期以来です。
そもそも2010年代はS&P500に大きくリターンで負け越していただけでなく、他の銀行のJPモルガン・チェースにも大きく出遅れていたのですが、今後は巻き返しがあるか気になるところです。
2020年4-6月結果
- 一株利益は6.26ドルで、予想を2.25ドル上回った。
- 収益は133億ドルで、予想を35.4億ドル上回った。(+40.6%)
- 貸倒れ引当金は15.9億ドルで、予想の10.9億ドルを上回った(前四半期は9.4億ドル)
今後の貸倒れを懸念して引当金は予想以上に積んでいますが、それでも好調な収益に助けられて利益も予想を超えています。同じ傾向はJPモルガンの決算でも見られました。
アメリカの消費の回復が垣間見えたJPモルガン決算【20年4-6月期】
アナリストたちは今期は悲観的な利益予想をしていましたが、予想ほど業績は落ち込まなかったようです。貸倒れ引当金は予想以上に計上されましたが、収益は予想以上に伸び、利益も予想を超えました。また、決算発表で提示されたJPMカード消費傾向からはアメリカが6月末にかけてかなり景気が回復している様子も見えました。
部門別売上
ゴールドマン・サックスの部門は名前から何をやっているのか分かりにくいものがあるので、部門名の補足をしておきます。
ゴールドマン・サックス部門名
- 投資銀行:企業向けに買収・事業売却などの助言を行う他、株や社債を使った企業の資金調達を支援。
- グルーバル・マーケット:機関投資家向けに、株・債権・通貨・商品の販売仲介をする。
- 資産管理:ゴールドマン・サックスの資産を運用・管理する部門。株投資や企業への資金の貸し出し・ローンなどを含む。
- 消費者&富裕層:クレジットカードなどの消費者向け業務の他、富裕層向けに金融商品の助言や資産管理や行う。
今期は売上規模が大きいグローバル・マーケットが好調でした。4-6月は株式市場はS&P500が+20%と好調で、債権市場も良かったため機関投資家向けの株・債権収入が伸びたようです。
投資銀行部門では株や社債の引受け収入が増えて、この部門の4半期の収益額は歴代最高値を記録しています。
部門(10億ドル) | 2Q20年 | 構成比率 | 前年比 |
---|---|---|---|
投資銀行業務 | 2.7 | 20% | +36% |
グローバルマーケット | 7.2 | 54% | +93% |
資産管理業務 | 2.1 | 16% | -18% |
消費者・富裕層向けサービス | 1.4 | 10% | +9% |
合計 | 13.3 | 100% | +41% |
今期のゴールドマン・サックスの好調な要因は実に多いですが、主要なものは以下4つです。
ゴールドマン・サックスの今期の好調の要因
- 前期で米国株が低迷した反動で、4-6月期の株式市場はかなり好調だった。(機関投資家への販売や自社運用で好成績につながる)
- FRBの社債購入プログラムのおかげで、4-6月の社債市場もかなり好調だった。(同上)
- 好調な株式市場を背景にIPOなど株式公開が増え、引受収入が増えた(投資銀行部門が好成績)
- 新型コロナウイルスによる経済活動停止をしのぐための社債発行が急増して、引受収入が増えた(同上)
逆に不調な部門は、ゴールドマン・サックスの資金で運用を行う資産管理部門くらいでした。非公開株での投資で損を出しているようですが、その損の一部も公開株への投資の運用で相殺できたといいます。
ゴールドマンサックス、久々の好決算
2020年4-6月期のゴールドマン・サックスの決算を見ていきましたが、久々の好決算となりました。
この銘柄は知名度は高いのですが、2010年代の10年間のリターンは年率わずか4.5%と大きく低迷していました。S&P500が年率13.4%、JPモルガン・チェースが15.6%に比べても、物足りなさを感じます。
ゴールドマン・サックスの巻き返しがあるか、今後も注目していきたいと思います。