20年6月のアメリカの景気はとても好調だったようです。
ISMが調査した米国企業が感じる景気を数値化したデータ(ISM景況指数6月分)は、新型コロナウイルス前の2020年2月に匹敵するほど強かったです。
都市封鎖を解除して、経済活動が順調に再開された様子が見えてきています。一気に活動を再開しすぎて、感染拡大を起こしているのがかなり心配ですが、ひとまず6月の景気がよかったことは朗報でした。
この記事のポイント
- 6月のアメリカの景気はかなり好調だった。4-6月期の企業決算も期待ができる内容だった。
- 景気刺激策で資金に余裕がある状態で、経済活動が再開できたことが6月の景気回復につながっている。
- ただし、米国企業が雇用拡大にかなり慎重になっている姿勢が見えるので、このままでは好調の持続は難しい。雇用の回復が十分にないうちは、政府の追加の景気刺激策が必要かも知れない。
- 経済拡大を急ぐあまり、新型コロナウイルスの感染拡大を招いている点にも注意が必要。
ただ、6月は順調に景気が回復していますが、以下の記事に書いたように個人的には今後は経済の回復が緩やかになるだろうと予想しています。
楽観的にも見える市場の景気回復予想
市場は2021年には新型コロナウイルス前の経済に戻ると予想しているようですが、これは少し楽観的な予想が楽観的にもみえます。ブラックストーンは市場よりも現実的な見方をしており、新型コロナウイルスの第2波による都市封鎖がなかったとしても、2022年まで景気の本格回復は難しいと言います。
7月の最新の経済状況を追いかけているFRBの中には、景気回復の勢いが失われていると見ている主要メンバーもいるようです。
米景気回復は停滞している可能性─アトランタ地区連銀総裁=FT(ブルームバーグ)
パンデミックの状況での投資は経験がないだけに先が読みにくいのですが、株が下がれば買い増して、株が上がれば一部を株以外の資産に振り分ける投資で、ほどほどなリターンを狙いたいと思っています。
好調だった6月の米国企業
ISMは毎月アメリカ企業に景気アンケートを実施してISM景況指数として発表しているのですが、6月の米国企業が感じている景気はとても強かったです。
製造業・非製造業ともに6月の景況感は急回復しました。
※注意:上の図はあくまでも企業が感じている景気の良さで、売上や利益が新型コロナウイルス前に戻ったわけではありません。
好調の鍵は景気刺激策
6月の米企業の景気急回復は、4月後半から進めてきたアメリカの経済活動再開の動きが6月にさらに広がったことが大きいです。
しかし、商売を再開しても企業や個人の手元にお金がなかったら、ここまでの景気回復はできなかったと思います。FRBが企業に資金を貸し出したり、米政府が個人に給付金を配った効果が6月に現れたのかなと考えています。
FRBと米政府の資金供給が景気回復を早めた仕組み
もしも都市封鎖をしている間に、(下図の店舗Aのように)手元にお金がなくなった企業や個人がいた場合には、経済活動が再開しても資金不足で買い物ができない人が出てきて、経済はすぐに回復できなかったはずです(下図ステップ3でGDPが$200に戻らず、$100にとどまる状態)。
今回のアメリカは都市封鎖をしていた4月に個人に給付金を配ったり、企業に資金を貸し出したりしたおかげで資金の枯渇が起こらなかったため、都市封鎖解除後に順調に経済が回復しつつあるようです。
このブログでは4月の時点で上の2つの図を使って、景気刺激策が十分でないと都市封鎖解除後の景気拡大は難しいと話ししてきましたが、6月は企業も個人も資金の枯渇をうまく防いで素早い回復を実現したようです。
都市封鎖を解除しても景気低迷が続く理由。
アメリカでは、新型コロナウイルスの対策で発令した外出制限を解除するための議論が進んでいるようです。しかし外出制限が解除されても、しばらく景気の低迷は続くと見る専門家も多いです。この記事では「なぜ経済活動を再開しても、景気の低迷が長期化する恐れがあるのか」について考えます。
懸念点は好調を維持するための雇用
ただし、企業が感じている景気は力強く回復しましたが、経済や企業利益は新型コロナウイルス前の水準には完全に戻っていません。
経済が自力で回復をするためには雇用を増やす必要がありますが、少し心配なのは米企業が雇用増加にかなり消極的な姿勢を見せている点です。
6月のISMによる景気アンケートでは、数ある項目の中で製造業も非製造業も雇用がもっとも冷え込んでいました。
これを見る限り、政府やFRBによる資金提供はおそらくまだまだ必要な気がします。
また雇用に加えて、経済活動の再開を急ぐあまり新型コロナウイルスの感染拡大が続いている点にも注意が必要で、6月に企業の景気が回復したと言っても、まだまだ油断できない状況が続いています。