とどまる気配のない米中貿易戦争
米中の貿易戦争、止む気配はありませんね。現時点で最も注目を集めているのは、中国の通信機器大手ファーウェイです。
ファーウェイ製の通信機器には「バックドア(裏口)」と呼ばれる仕掛けがあることがわかっており、利用者のデータを不正に集められる仕組みがあったとして、中国のスパイ活動を助長した疑いがあるとトランプ政権は疑っています。
そして、トランプ政権は米国企業に対してファーウェイとの取引を禁止する措置を発令し、今週は毎日のように米国企業のファーウェイ取引中止のニュースが飛び交っています。
ざっと、わかる範囲だけでも以下の企業が、部分的ながらもファーウェイとの取引中止を発表しています。(本気でファーウェイとの取引を中止にすると、自身のビジネスが本気で苦しくなる場合もあるようで、各社はトランプ政権に従いながらも加減してる場合もあるようです)
私が経済史に疎いだけかもしれませんが、たった1社に対して、ここまで多くの企業と国が対抗措置をとる状況を今までに見たことがありません。もはや、世界を股にかけた大人のいじめにすら見えます。
状況が混沌としていますが、今の段階で各社が発したファーウェイとの取引中止の動きを以下にまとめたいと思います。
以下のニュースをまとめていて随所に記述が出てくるのが、ファーウェイの取引中止によって、禁止している米企業も大きな損害を被っているということです。相手を切りにかかっているように見えても、自分の方にも鋭い刃が向いている「諸刃の剣」であることがわかります。
いち早い解決を望んでいますが、その可能性はまだまだ見えてきていないようです。私はそろそろ、一部の株の売却を進めます。
5月19日、アルファベット(Googleの親会社)
5月19日、Googleはファーウェイに対して、ハードウエア、ソフトウエア、技術的サービスの提供を停止したと発表しました。ファーウェイはGoogleが中心になって開発されたアンドロイドOSを用いたスマホ端末を世界中販売しており、一時はファーウェイのスマホユーザへの影響が多大だとして、騒然としました。
Googleは90日の措置猶予期間を儲けたこと、更にはアンドロイドOSはGoogleがライセンスの権利を放棄していオープンソースであることから、すぐさまファーウェイもファーウェイ・ユーザもすぐに大打撃を受けることは回避された模様です。
しかし、依然としてファーウェイ・ユーザはGoogle Play、Google MAP、Gmail、YouTubeなどの有名なサービスがファーウェイ端末から使えなくなる懸念が残っています。
5月20日、ルメンタム・ホールディングス
5月20日、光通信事業や商用レーザーを扱うルメンタム社は、ファーウェイへの出荷をすべて停止して、トランプ政権方針に完全に順守すると発表しました。ルメンタムの最新の四半期の売上高を見ると売上高に占めるファーウェイの比率は18%と決して小さくないですが、早々に発表して大きな注目を集めました。
5月20日、インテル、クアルコム、ザイリンクス、ブロードコム
5月20日のブルームバーグの記事によると、インテル、クアルコム、ザイリンクス、ブロードコムの米半導体最大手4社は、各従業員に対して部品やソフトウエアのファーウェイへの提供を一時的に停止するように、通達を出したと報じられています。
Top U.S. Tech Companies Begin to Cut Off Vital Huawei Supplies(ブルームバーグ)
5月21日、コルボ
また、上記4社の発表の翌日5月21日、半導体コルボもファーウェイへの出荷停止を発表しています。コルボの2019年1-3月期を見ると、ファーウェイ1社で15%を占めているのですが、今回の出荷停止により四半期で5,000万ドルの減収が生じる見通しも発表しています。
5月22日、アナログ・デバイシズ、インファイ、アーム
半導体のアナログ・デバイシズの最高経営責任者はしばらくの間、ファーウェイに対してどんな製品も出荷しないと発言。また、2018年には14%をファーウェイから売り上げていた通信用半導体を手がけるインファイは、2019年第2四半期の売上見通しの引き下げを発表しています。
また、日本ではソフトバンクが買収したことで知名度があるスマホ用のチップ設計大手のアームも5月22日、ファーウェイとの取引中止を発表しました。
アームの取引中止のニュースは、Googleの取引中止よりもインパクトがある可能性があります。アームは半導体の中でも、CPUと呼ばれる人間でいうと頭脳にあたる部品の設計で業界をリードしています。省電力で高性能なチップを実現するアームは、少しデータは古いですが2016年時にスマホの9割に入っていると言われているほど、スマホ部品の要となっています。
Google MAP、Gmail、YouTubeが使えないことはまだしも、9割割のシェアをもつコンピュータの頭脳を使えないとなるとファーウェイにとって大きな痛手です。
そろそろ疲れてきましたが、次が最後です。
5月23日、ネオフォトニックス、シノプシス
光学部品メーカーのネオフォトニックスも5月23日、ファーウェイへの製品の出荷を停止しトランプ政権の規制に完全に遵守すると発言。同日、電子製品メーカーのシノプシスもファーウェイとお取引中止を発表。
日本企業の動向も
長々と紹介してきましたが、今週後半にはソフトバンク、au、ドコモが相次いでファーウェイのスマホ新製品の予約を停止するなど、日本企業もどうようの対応を打ち出しています。
また、5月24日には、日本のAmazonのショッピングサイトで、ファーウェイ製品が相次いで「在庫切れ」の表示に変わる現象もあり、一連の米中貿易戦争の影響を受けて、Amazonが何らかの対応をしているものと見られます。
この段落でこの記事は最後になりますが、おそらくこの最後の段落までたどり着かずに「もういいよ」と途中で離脱する人も多いと思います。しかし、しつこいくらいのファーウェイとの取引中止のニュースはたった1週間で各社が打ち出しているということに、今回の米中貿易戦争の異常さが伺えます。