2020年3-5月の決算で、ナイキが赤字に沈みました。収益も利益も予想に届かない、悪い内容の決算でした。
ナイキはアパレル業界では世界的トップクラスのブランド力と評価されていて、投資家目線では市場平均(S&P500)のリターンを長年軽く超えてきた優良銘柄としても有名です。
ただし、そのナイキでも新型コロナウイルスの影響で売上が急減した模様です。
オンラインストアでは売上は前年比75%で成長しているもののまだ全体売上の30%で実店舗の閉店の影響を補えず、配送や返品などのコストも増えて利益を圧迫したため、残念ながら3-5月期は赤字となってしまいました。
この記事のポイント
- 新型コロナウイルスで世界的な都市封鎖の影響を受けた20年3-5月のナイキの決算は収益・利益とも予想に届かず、赤字に転落した。
- オンラインショップの売上は前年比75%で上昇したが、売上規模は全体の30%にとどまる。
- 都市封鎖からの復帰が早かった中国では売上が-3%だったが、他の地域では軒並み-40%となった。
- おそらく、今後もアメリカで新型コロナウイルスの再拡大が猛威を振るう。もしも再度都市封鎖が行われれば、ナイキにとっては苦しい時期が再び訪れるかも知れない。
赤字に沈んだナイキ
知名度が高いわりに投資している人をあまり多く見かけないのですが、ナイキ株はS&P500のリターンを長年上回ってきた優良銘柄です。
ただし、新型コロナウイルスが猛威を奮った20年3-5月の決算はナイキにとって苦しいものになりました。
2020年3-5月期結果
- 一株利益:マイナス0.51ドルで、予想を0.54ドル下回る。
- 収益:63.1億ドルで、予想を9.51億ドル下回る(前年比-38%)。
- 利益率(粗利):37.3%で、予想の43.4%を下回る。(前年は45.7%)
売上も利益もアナリスト予想に届かず、赤字に転落しています。
「あれ?」と目を疑うのは、利益率(粗利)が悪くなっていることです。予想に比べて6%低く、前年同期と比較しても8%ほど低い利益率です。
オンラインショップの配送や返品でコストがかかったこと、卸売店への値引き、積み上がった在庫を管理するコストが増えたこと、工場への生産停止費用など、複数の要因で利益が圧迫されたようです。
店舗封鎖した地域で40%の売上低迷
地域別の売上を見ても、どの地域も一様に40%以上の減少しています。
例外は新型コロナウイルスを早期に収束させた中国です。店舗閉鎖の影響から開放されて、売上の減少はわずかにマイナス3%に抑え込めています。
地域 | 売上(10億ドル) | 前年成長率 |
---|---|---|
北米 | 2.2 | -46% |
欧州・中東・アフリカ | 1.3 | -46% |
中国 | 1.6 | -3% |
アジア・ラテンアメリカ | 0.8 | -42% |
店舗封鎖をしたか否かが業績に直結する結果となりました。
甚大だった新型コロナウイルスの影響
3-5月期は中国以外の幅広い地域で新型コロナウイルスが流行したため、決算のプレスリリースでも新型コロナウイルスの影響に関する説明が多く聞かれました。
ナイキが受けた新型コロナウイルスの影響をまとめておきます。
新型コロナウイルスのナイキへの影響
- 12週のうち約8週間で、新型コロナウイルス感染拡大防止のために北米、欧州、アジア・ラテンアメリカの90%の直営店舗を閉鎖した。
- 他社の卸売店でも同様の傾向が見られ、卸売販売の業績は50%落ち込んだ。
- この状況を踏まえて、オンライン販売を加速させた。売上は75%上昇し、全体売上の30%の規模にまで成長した。
- 現時点では多くの実店舗で営業を再開しはじめている。決算発表時(6月25日)では、中国でほぼ100%、北米は85%、欧州は90%、アジア太平洋・ラテンアメリカでは65%の直営店が開店もしくは時短営業でも店を開けられている。
ナイキ株購入のタイミングはまだ
株を安く買うためには、最悪期を脱したタイミングで株を買うのが理想ですが、まだナイキにはまだこのタイミングが訪れていない恐れがあります。
ナイキが2020年3-5月期の決算を発表した同じ日、アメリカの新型コロナウイルスの新規感染者は過去最高を記録しました。
多くの投資家も政府も「3-4月のような大規模な都市封鎖は必要ない」と思っているようですが、テキサス州では集中治療室がまもなく新型コロナウイルスの患者で溢れる見通しで、再び街の人々に行動制限がかかる可能性が高いです。
こうした州が今後増えてくれば、3-4月ほどの全米の都市封鎖ではないにしろ、再びナイキの店舗が封鎖されることは想定しておいたほうが良さそうです。
実際に、アップルではフロリダ、アリゾナ、サウスカロライナ、ノースカロライナ、テキサスの一部の店舗を閉鎖しています。
つまり、まだナイキは回復に時間がかかる恐れがあり、しばらくは動向を見守るほうが良さそうです。