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リーマンショック経験者が語る、これからの米国株デビューをお勧めしない理由。それでも投資をしたい人へのアドバイス。

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2019年の現時点で米国株に興味があるものの、まだ手を出していない友人から「これから米国株投資を始めたほうが良いか」と相談されたら、なんと答えたら良いでしょうか。

私は少し考えた上で、やっぱり第一声は「お勧めしません」と応えると思います。

いえ、より正確には「『今は』お勧めしません」と言ったほうがいいですね。自分の資産を増やしたいなら、預金のまま銀行に預けておくよりも、株を長期的に保有するほうが打ち手として筋がいいことは賛成です。しかし、今は米国株を始めるタイミングとしては、難しい局面だと思っています。

投資を始めるには難しい局面

2017年から2018年前半までの米国株の相場であれば、正直どんな銘柄を持っていたとしても株価は上がっていて米国株デビューには何ら問題はなかったです。

しかし、2019年に入ってからというもの、米中の関税引き上げなどの貿易戦争に起因する景気減速のリスクが高まっている上、景気後退局面に突入する1-2年前に現れる「逆イールド」と呼ばれる現象も発生するなど、次の不況の影が忍び寄っています。今の時期は、これから投資を始めるには、少々難しい市場環境です。

【解説】12年ぶり発生した景気後退シグナル、逆イールドとは何か。

2019年2回目の逆イールド発生。今後の投資戦略をリスクと資金から見直す。

私の苦い投資デビュー経験

また、こうした難しい局面からの投資デビューをお勧めしない理由は、ひょっとすると私自身の苦い経験から来ているかもしれません。

私自身、生まれて初めて投資を始めたのは2006年後半から2007年にかけてだったと思います。詳しい人は、この年がどういう年かピンと来ると思いますが、100年の一度の金融危機のきっかけとなるサブプライムローン問題が発生した年です。

投資を初めて半年と絶たずに、100年に一度の危機に巡り会う強運を引き当ててしまったわけですが、自分は本当に神に愛されし投資家だと思います。唯一問題があるとすれば、愛された神が、悪い方の神だったことに尽きます。

新米の投資家が、100年に1度の不況で儲けを出せるわけがなく、なけなしの投資資金と貴重な時間を市場の荒波にさらわれて、市場からやむなく撤退しました。

こうした経験のおかげで、ちょっとやそっとの株価の下落では何も動じない精神的なタフさを手に入れることができましたが、その授業料は小さくなかったです。次来る不況が100年に1度のレベルだとは思いませんが、これから投資をする方が、このような経験をせずに済むなら、してほしくないのが本音です。

だから、どうしても今の先が読みづらい今の米国株市場の状況で「米国株がおすすめです」とは言い難いです。確かに、過去私が書いた記事にも米国株の魅力を紹介する記事が多数ありますが、今後は可能な限り慎重な表現に変えていきたいと思います。

投資を学ぶには最適な局面

ただし、物事には何にでもデメリットの裏には、メリットが隠れているものです。

そして、この不透明な相場にあえて参入することのメリットも、少なからず存在します。先にお話した精神的なタフさが磨かれることに加え、10年に1度程度しか訪れない景気拡大期から不況への転換期の一部始終を経験できるのは、大変貴重な体験です。

例えば、今40歳の方が70歳まで投資をする場合は、その投資生活の30年間には何度も不況が訪れますが、その度に、資産を大きく減らすような投資をしているようでは、いつまで経っても資産は築き上げられません。

長期的に資産を築くためには、不況時にも耐えられる投資プランが必要になりますが、不況を経験することは「自分の投資プランが不況にたえられるものなのか」を検証する絶好の機会になります。不況の経験から得られることは数多くありますが、一番の大きな検証ポイントは次の2つかと思います。

  • 【生き残れるか】:今の投資プランで、不況の下落に耐えられるか
  • 【チャンスを活かせるか】:大きな株価の下落の後にくる、バーゲンセール状態の株を買うためにどのように資金を確保すればいいか

検証ポイント1:不況で生き残れるか

投資経験が非常に浅かった昔の私の場合は、「買ってから5%下落した場合は売ってそれ以上の損を抑え、下落がおさまったタイミングで再度買う」という安易な投資プランを立てた時期がありました。

しかし、サブプライムローンとリーマンショックが到来する中で何度も少し上げては大きく下げるジェットコースターのような相場を前にした時に、この投資プランでは、ただただ何度も投資資金を溶かして損が膨らむだけだということが痛いほどわかりました。

そして、今後不況の局面が来たときでも、まずは不況の下落に耐えて生き残れるように、株の売買で儲ける投資のスタンスを根本から見直し、「優れた業績の株を買ったら基本的に売らない」という投資スタンスを確立することになりました。

ちなみに当時は、数倍のレバレッジ*もかけていましたが、それも止めました。(*レバレッジとは、実際の株価の変動を2倍・3倍に大きくする商品です。2倍のレバレッジの時、40%の下落は80%の下落になります。)

検証ポイント2:不況のチャンスを活かせるか

投資を通じて資産を形成したいと思うなら、重要なのは不況が去った後の相場で、安い状態の株を購入できるかどうかです。

毎月の投資資金が潤沢にあれば、一切保有株を売ることなく下落相場で買い増すだけでも良いと思います。しかし、そうでない場合は、不況が近づくタイミングで「不況時向けて投資資金を毎月貯め」たり、「保有株を売却」したりして、資金を確保する必要があります。

また、資金を確保できていても、購入するタイミングがまだまだ不況への入り口だった場合には、株を買ってからさらに大きく下げる展開になってしまいます。

「資金をどの程度確保するか」「どのタイミングから買い増しを始めるのか」自分の投資ルールを検証して修正できる貴重な機会になります。

ちなみに私も大雑把ながら、次の不況に備えた資金の確保について大きな方針を立て、次の記事まとめています。
2019年2回目の逆イールド発生。今後の投資戦略をリスクと資金から見直す。

買い増しのタイミングについては、実際に不況が来たタイミングでどの程度資金が確保できているかにも寄ると思いますが、何かしら方針を立てて後々に検証できるようにしたいと思います。

話が長くなりましたが、不況に耐え忍び、下落した相場で株を買うためのプランが機能するかを実際に検証する経験を積むこと出来る点は、市場にいないと経験できない大きな財産になると思います。

2019年、それでもこれから投資をしたい人へのアドバイス

さて、ここまで説明した上で、この記事冒頭のはじめの質問に戻りたいと思います。

「これから米国株投資をやりたい」と相談を受けた場合には、私はやっぱり第一声としては「お勧めしません」と応えると思います。

この段階で、もし「色んなサイトを見る限り、米国株はどうも儲けている人が多いらしい」という程度の興味で相談に来ているのであれば、これから1-2年以内に訪れる不況からその人の資産を守ることができます。

それでもどうしても、世界中にサービスを展開する企業に将来の希望を感じて投資したいと考えているなら、これから訪れる可能性がある不況で市場にいることのメリット・デメリットを伝えた上で、出来る限り応援はしたいと思います。

その際のアドバイスとしては、くれぐれも株を買う面白さにハマって、全ての投資資金を不況前に使い切らないことです。

不況時のポイントは先程も上げましたが「第一に生き残ること」、「第二にチャンスを掴む準備をすること」です。第一は比較的容易にできるはずなので、本当の勝負は、第二の株価が下落した時にどれだけ勝負できる余剰資金を残しておけるかにかかっています。

いつだったか、遠い昔に読んだ本に「チャンスの扉はほんの一瞬しか開かない」という言葉を聞いたことがあります。いつチャンスが訪れるのかわからないところに、このゲームの難しさがあります。私自身も、その時に備えて資金の配分に細心の注意を払いたいと思います。


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