ウクライナ情勢が悪化して、原油などの商品(コモディティ)の価格が上昇する動きが見られています。
こうなるとインフレ率が高まる心配が出てきて、「インフレを抑え込むためにアメリカは政策金利の引き上げ(利上げ)がますます必要になる。利上げの悪影響で米国株はさらに下がるのでは」という考えも浮かびますが、現実は(今のところは)少し違います。
確かに商品価格は上がりましたが、それでもウクライナ戦争の前後でアメリカの利上げ予想は大きく変わっていません。
まだ確かなことは言える段階ではないですが、ひょっとすると既に米国株は今回の利上げをかなり織り込んだのかなと考えてしまいます。
この記事のポイント
- 2021年後半から、2022年の利上げ予想が強まって米国株は下落をしているが、既にかなり利上げ予想は一段落した可能性がある。
- ウクライナとロシアの戦争が起こったことでインフレの予想は上昇したが、市場の利上げ予想は強まっていない。
- しだいにアメリカの景気が弱くなってくれば、それ以上利上げができくなると投資家が考えているようにも見える。
米国株が下げていた背景
2022年の米国株の低迷ですが、アメリカの利上げ(利上げ予想の加速)が原因だと私は思っています。
S&P500は2022年1月3日まで最高値をつけるまで上昇していましたが、異変は10月から始まっていました。
10月以前は2022年の利上げはせいぜい年末に1回あるかどうかだと投資家に予想されていたのですが、それからわずか3ヶ月後の1月には2022年の利上げ予想は6回にまで増えました。
こうした中で、まっさきに利上げの悪影響を受けたのは割高だった銘柄です。将来の利益に期待が集まって割高になっている銘柄ほど、利上げの悪影響を受けやすいからです。
こうして今まで割高だった銘柄は、2021年11月以降に大きく下げることになります。
上のグラフはアドビとエヌビディアの株価ですが、どちらも最高値から40%近く株価を下げています。
S&P500もしばらくは耐えていたのですが、2022年1月に最高値をつけたあとは下落をしてしまったようです。
利上げ予想の加速は落ち着いた
ここまでで2021年後半から始まった利上げ予想の加速が、米国株に悪影響を与えていたという話をしました。
それでは最近の利上げ予想はどのようになっているかというと、もはや1月からあまり変わっていません。
1月末の時点で2022年の利上げ予想は6回でしたが、現時点では7回と1回増えただけです。
ロシアがウクライナに侵攻してから原油などの商品価格が上昇して、インフレを抑えるためには利上げ予想も強まるかと思われたのですが、そうはなりませんでした。
ひょっとすると市場は既に今回の利上げをかなり織り込んだ可能性があります。
すでにアドビやエヌビディアの株価の例で見たように、割高だった成長株は利上げ予想の影響を受けて、株価は既にだいぶ下落しました。
また、以下の記事でも見たようにS&P500の割高感もだいぶ解消されつつあると思います。まだ、いくらか割高ではありますが、かなり妥当な価格に近づいている印象です。
以下の昨日の記事でも書きましたが既にアメリカが景気後退に突入していないなら、年始から続いた株の下落は一旦落ち着いても良い頃かも知れません。